Run to the Another World第151話


今度はもう1つのエルヴェダーの別荘があると言う港に入る前に、一旦地上に降りて貰い

エルヴェダーは人間の姿に。その港は狭いと言うのでドラゴンの姿のままで言ったら大騒ぎに

なると言う事もあるがそれ以前に狭いので、ドラゴンのままの姿ではスペース的な問題で

着地出来ないからと言う理由からであった。

『この洞窟を通って行けば港に出る。その先に俺様の別荘があるんだ』

エルヴェダー曰く、元々はエスヴェテレスがヴィルトディンとの戦争の為に騎士団員を総動員して

ハイスピードで秘密裏にこの洞窟を掘って奇襲作戦を仕掛けたのだが、その奇襲作戦を

持ってしてもヴィルトディンの前に破れてしまったのだとか。そうしてその奇襲作戦に使われた

この洞窟の穴は、その戦争から1年が経った今では出口に港が建設されて物資や旅行者を

招き入れる国の玄関口の1つに利用されているらしい。


「転んでも只では起きないって奴ね」

率直な感想を由佳が漏らしつつ、一同は洞窟を抜けてその港へと辿り着いた。

洞窟は真っ直ぐ一直線に掘り進められていた為に迷う筈が無く、早速一同はエルヴェダーの別荘に行く。

「でも、調査部隊が入ったって話だからそのアクセサリーが見つからないかも知れないんだろ?」

『可能性の話だけどな。だけど俺様も簡単にそのアクセサリーを取られない様にする為の

仕掛け位はしてあるんだ』

アイトエルの問い掛けに、エルヴェダーは何処か自信を感じさせる口調で答える。

「へーっ、それって遺跡になっているからトラップ的な物を仕掛けたりとか?」

RPGに詳しい藤尾が興味しんしんな口調で尋ねるが、それにはエルヴェダーの声の

トーンが下がってしまう。

『いや……そうじゃねぇ。あのアクセサリーには重大な秘密を隠してあるから、そう易々と

人間達に取られない様にしているだけだ。別荘の奥に入るだけなら人間にも簡単に出来るが、

俺様はそれを見越した上で簡単に取られない様に封印を施している。

それにトラップを仕掛ける様な手間も時間も俺様には無い。何せ貿易の事で手一杯

だったからな。それは今でも変わっていない』


そう言いながら港の奥に行くと再び洞窟の入り口が出て来た。それを見たエルヴェダーがポツリと呟く。

『この入り口もそう易々と見つけられないと思ってはいたけど、洞窟を掘って来たから見つけられちまったみたいだな。

元々この周辺はあの洞窟の先から森になっていてな。俺様の様なドラゴンが身を隠すにはうってつけの場所だった。

だけどその場所もこうして人間達がどんどんやって来るようになったんだな』

何処か寂しげな口調をしながら、エルヴェダーはその入り口に入って行く。

「洞窟自体は余り長くないみたいだな」

『ああ、俺様はこの洞窟の最深部を根城にしていたからな』

哲の呟きにエルヴェダーが答えながら、そのエルヴェダー先頭で一行は洞窟の最深部へと進んで行く。


だが最深部と言えばどうしても下へ下へと進んで行くイメージが文字として強いのだが、この洞窟の場合は

奥に行くに連れて地面が緩やかに上り勾配になっているのが印象的だ。

「このまま行くと地上に出るだろう?」

『ああ。洞窟の中から戻るのも結構大変だから別に入り口をもう1つ造っている。そっちはあの島の方向に

通じているし海の方向だから人間達に姿を見られない様に飛び回るにはうってつけだ。でもこんな奥にまで

騎士団が入り込んだ形跡があるな』

地面についている比較的新しい足跡を見てエルヴェダーがそう漏らした。

「あ、あそこが出口かしら?」

『そうだ』

そんなエルヴェダーから視線をそらした由佳が光が漏れ出して来る方向を見つけて、この遺跡になっている

別荘の持ち主に聞いた所、どうやら出口でビンゴだった様である。


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