Run to the Another World第149話


と言う訳で屋敷の外に出た6人とエルヴェダーは、その屋敷の前にある広いスペースで

一旦向かい合う。異世界人達はエルヴェダーの魔法をまずは見せて貰うのだ。

「どんなのがあるのかな?」

『じゃあまずはこいつから行くぜ』

哲の問い掛けにエルヴェダーは右腕を大きく振り被る。

するとその手の先に大きなファイヤーボールが現われ、それを延焼の危険性が無い

遠くの地面へと思いっ切り叩き付ける。その地面でファイヤーボールは破裂し、

直径1メートルセンチ位の小さな火の海となって燃え広がった。

『これが基礎の基礎、ファイヤーボールだ。元の姿の時は前足で投げる。次はこれだ』


今度はさっきと同じく右手にファイヤーボールを出す所までは同じだが、それを今度は

ボウリングのボールの様に逆手で地面スレスレに平行になる様に投げる。

するとそのファイヤーボールの形が変わって、一直線の火のラインになって滑って行った。

『見ての通りファイヤーラインだ。けん制に使える。欠点は曲げる事が出来ないから

使える場所が限られて来る事位だがな』

その他にもちょっと魔力を溜めてから地面に両手をついて大きな炎の壁を作り出す

ファイヤーウォール、同じく魔力を溜めてから地面に手をついて、その地面から間欠泉の様に

いきなり火柱を噴出させる事が出来るプロミネンス、更にはファイヤーボールの形を変えて

まるで投げナイフの様に使う事の出来るスローイングファイヤー等様々な魔法を見せてくれた。


しかしこれだけが魔法の使い道では無いらしい。だがその前に魔力も結構使ったので

今度は槍の演武に入る。

『俺様の槍使い、とくとご覧あれ!!』

御前はどこの大道芸人だと言うツッコミを入れたくなった哲だったがそれは置いておき、

その赤いドラゴンの槍使いを6人はしっかりと見届ける。

「おおー、速いな」

「かなりの熟練者ね」

「やっぱり長い間生きていると違うのねー」

「速いし、それで居てパワーもありそうだ」

「正確さも凄いな」

「一見むちゃくちゃに見えそうだが、戦ってみると強敵なのは違い無いだろう」


そんな評価が6人の口からそれぞれ出て来たが、驚くべきはここからであった。

エルヴェダーは一通りの槍の演武をした後、今度は左手に纏わせた炎を槍の先端に向かって投げつける。

すると槍の先端から大きな炎が立ち上った。

「おー、それが武器か」

「うわ、厄介だなー」

哲と藤尾は思ったままの感心した口調と苦々しい口調だった。

エルヴェダー曰く、こうして槍の先端に炎を纏わせる事によって簡単に相手を近づけさせないと言う効果もある。

「でもさー、それって槍が溶けたりしないの?」

『竜の死骸から取ったウロコ等を加工して作った特殊な材質だから問題は無い。

ただし、炎は10分位しか持たないからその都度点火しないといけないけど』

由佳の素朴な疑問に、エルヴェダーの解説があってここで演武は終了する事になった。


と言う訳で演武も終了したのだが、エルヴェダーから突然のお願いがあった。

『俺様の演武を見て貰った訳だけど、御前達もそれぞれ武術をやっているらしいじゃないか。

俺様はその中でもあんたの武術に興味がある』

「俺?」

エルヴェダーが指を指したのは藤尾精哉だった。藤尾が習っている武術と言えば……。

「プンチャックシラットの事?」

『それだ。そのプンチャックシラットって言う奴はどう言うものなのか非常に興味がある。

勿論永治の柔道とか、哲のシュートボクシングとか言うのも興味があるが、名前の響きからして

聞いた中では最も俺様の記憶に残っているんだ。だから演武を見せて欲しい』


だが、それに対する藤尾の答えは意外な物であった。

「やっても良いけど、そろそろもう1つのあんたの別荘に行ってアクセサリーを回収しないか?

ここであんまり時間を潰し過ぎるのも良くない気がするんだ」

その藤尾の言葉にエルヴェダーの顔つきがハッとなる。

『あー……そう言えばそうか。分かった。それじゃあ先にもう1つの別荘に向かおう』

と言う訳で、エルヴェダーに元の姿に戻って貰って6人はもう1つの彼の別荘へと向かう事にした。


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