Run to the Another World第148話


その後、哲と和美の話も終了したので改めてアクセサリーの肩章を和美が受け取る。

何故肩章なのかはエルヴェダーが2つ目のアクセサリーを回収した時に説明してくれるらしい。

すると、ここでそのエルヴェダーが意外な事を言い出した。

『俺様の事は聞かないのか?』

「えっ? 貴方の事?」

きょとんとする和美だが、良く良く考えてみれば自分達もドラゴンの生態には興味があるし、

元々ドラゴンで人間の姿になる事も出来る上に人間の言葉を喋る事が出来るこの

エルヴェダーの事を聞けると言うのであれば断る理由が無かった。

特にRPGが好きな藤尾はもう目をらんらんと輝かせている。

「聞きたいな、ぜひ聞かせてくれ!」


その藤尾の一言で、今度はエルヴェダーのより詳しい自己紹介が始まった。

『じゃあ改めて……。俺様はこのヘルヴァナールの伝説の存在となっている七竜の内の

1匹、エルヴェダー様だ。人間の姿になっている時は貿易商をして過ごしている。

ちなみに緑のドラゴンが居ただろ? あいつは普段学者をしているんだが、たまに俺様の

助手として貿易の手伝いをしてくれているんだぜ。

年齢は3322歳。人間で言えば33歳過ぎ位と思って貰って良いだろう。これでも他の

ドラゴン達と比べた中では結構歳行ってるんだがな。まぁそれは良いとして、普段はさっきも

言った通り俺様はシュア王国を拠点に活動している。と言っても俺様はグラルバルトの

おっさんに呼び出されて御前達に直接会った事はあの王都に向かうまで無かった訳だ』


そこで椅子から立ち上がったエルヴェダーは、でんぐり返しの要領で前に1回転してそのまま

机の前の端の部分に腰掛けて話を続ける。

『属性としては火属性。今の人間のままじゃあ口から火は吐けないが、こうやって魔導と魔力で

火を熾(おこ)す事は出来る』

人差し指の腹を上向きにして6人の異世界人の目の前に突き出し、ライター位の小さな火を

ボッと一瞬で出して見せた。

「おおー、流石魔法だな」

感心した様に藤尾がうんうんと頷くが、エルヴェダーはまだまだこれからだと言う口ぶりだ。

『こんなのは序の口だ。一旦外に出よう』


そう言ってエルヴェダー先頭で屋敷の外に出ようと内部を歩いて行くが、その時ふとエルヴェダーは

何かを思い出してここに来た時とは別方向に歩いて行く。

「何処へ行く?」

『ちょいと持って行きたいもんがあるんでねぇ』

哲の問いかけにどこか飄々とした口調で答えた屋敷の主は、倉庫代わりになっていたと言う1つの

部屋の中からホコリまみれの1つの物体を取り出して来た。

「それは……槍?」

『ああそうだ。俺様が人間の姿の時に使っていた槍だ。と言ってもこれは予備。本来使っている物は

シュア王国の屋敷にある。シュアにある物もこれも全く同じ物を作って貰ったからまぁ、大丈夫か』


「大丈夫って?」

由佳が尋ねると、エルヴェダーは腰に片手を当てて自信満々の表情で6人に宣言する。

『貿易商をやっていると色々とトラブルに巻き込まれる事も多いんだぜ? だからこそ、護身術として

槍の特訓を人間達に混じって世界中を貿易商として回りながらして来た訳さ』

その愛用の槍のスペアを6人の目の前に横向きに両手で突き出し、自信満々な顔つきをするエルヴェダーに

6人は何と反応して良いか分からなかった。

「もしかして、他の魔法以外にその槍のテクニックも屋敷の外で見せてくれるって事?」

『そう言う事だ、なかなか鋭いな』

今から自分がしようとしている事をズバッと言い当てたデストラクションパフォーマーズのリーダーの和美に、

エルヴェダーは若干驚いた顔つきをした後すぐに屈託の無い笑みを浮かべながら答えた。


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