Run to the Another World第145話
白井永治、茨城県つくば市出身の今年で44歳。首都高速サーキットにおいては裏四天王の1人、
湾岸線を取り仕切るゾーンボス、そして後のチームゾディアックの一員として非常に有名な存在だった。
それは彼の走りのテクニックもあるのだが、何より特徴的なのは彼はコスプレをして
自慢の愛車で首都高速サーキットを駆け抜けて行く事で悪い意味でも目立っていたからだ。
そのコスプレと言うのが、某ロボットアニメに出てくる通称『赤い彗星』と呼ばれる人物の
コスプレであり、サーキットとして生まれ変わった首都高速でヘルメットを着用する時も
そのキャラのヘルメットをわざわざオーダーメイドで制作して貰い、目の部分にマスクまで
着用すると言うこだわりで彼の衣装を着て首都高サーキットを車で走り回っていた。
1970年12月4日生まれの彼は丁度子供の頃にその某ロボットアニメにはまる事になり、
再放送を何度も見て来たしその後のシリーズもリアルタイムで見て来ている。
その憧れているキャラの様に強くなれれば良いなと思って始めたのが、近所で開かれていた
柔道教室であった。護身用としても親に習う事を許された彼は9歳の3月から道場に
通い始め、それからずっと柔道に打ち込んで来た。今まで柔道を続けて来た事もあり、
異世界トリップして来たメンバーの中でもかなり大柄の部類に入る永治は地元茨城
だけでは無く関東全域でも名の知れる柔道家として成長して行く。
数々の大会で実績を残し、地元の柔道強豪で知られる高校を卒業した後は推薦も
あって東京の大学へと進学し、大学生時代に先輩の誘いで車と出会う事になる。
大学卒業後は結構大手のメーカーに就職し、そこで新卒就職祝いにR32スカイライン
GT−Rを柔道の後輩達からサプライズプレゼントとして貰ったのである。
永治が何時も眺めていた車雑誌にR32GT−Rの記事が載っており、その部分に印を
つけて置いてあるのを知っていた後輩達は、永治が高校柔道のインターハイや1990年の
世界学生柔道選手権大会に出場していたと言う事も知っていた。だから彼が引退すると
言う事で何かびっくりするプレゼントを考えた結果が、ワインレッドのR32GT−Rのプレゼントだったのだ。
そのR32GT−Rを貰った永治は、せっかく東京に来たのだから首都高速をドライブしたいと思った事と
車の道を教えてくれた一般人の先輩が首都高の走り屋でもあったので自分も首都高を走り始める。
最初は全然へたくそだったが、ちょこちょこGT−Rをチューニングしながら環状線、湾岸線等を走りこんで
いた事でテクニックも向上。柔道で鍛えたスタミナと持久力は群を抜いており、結果として走りこめる量も
時間も増えていった。
だがそんな彼に悲劇が訪れる。バブル崩壊の影響もあって、何と就職先の大手メーカーが倒産して
しまうと言う状況になったのだ。一気に無職になってしまった永治はどうしようと考えた末、歌舞伎町の
ホストクラブのアルバイト募集のチラシを見つけてそこに飛び込んだ。
首都高速を走っていた事もあって夜型の生活に慣れていた永治はすっかり夜型の生活になってしまったが、
そのホストクラブで働きながらも柔道の鍛錬だけはやめていなかった。
何時かは昼間の仕事に戻ろうと最初は考えていたが、気がつけばアルバイトから正社員登用の話が
持ち上がる。更にR32GT−Rが首都高を走っていた時に強引に割り込みをして来たトラックとクラッシュ
してしまい廃車になってしまい、それまで貯めていた貯金を使って1999年に新車で出たばかりのR34GT−Rを
現金一括で購入した。R33GT−Rを買わなかった理由を以前連に聞かれた事があるのだが、彼曰く
「R32が壊れたら買おうと思ったけど、丁度R34が出たから買った。R33も好きだけどやっぱり新車の方が良かったから」
と言う事らしい。
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