Run to the Another World第142話


そのエルヴェダーの別荘となっている大きな屋敷の中は朽ち果てているが、

屋敷と言うだけあり色々と手直しすればそれなりに雰囲気が戻って来るだろうと

言う事は容易に異世界の人間6人にも想像出来た。

その中でも、電気設備や水道設備等の設備会社の社長をしているアイトエルは

6人の中でも1番この屋敷に興味を示していた。

「俺達の世界とはやはり違うが、きちんと照明もあるし扉等もなかなか材質が良さそうだ。

朽ち果てているのが本当に勿体無いな」

何処かしんみりとした口調でそう言いながら屋敷の内部をチェックして行くアイトエルを

横目にして、エルヴェダーは異世界人達を先導して大きな部屋の前に辿り着いた。


その部屋の中には、やはりこれもホコリだらけではあるが余りボロボロにはなっていない

状態の高級そうな材質の椅子と大きな机が大きな窓をバックにして存在していた。

その椅子の座面のホコリを払い除け、どっかりと荒々しくエルヴェダーは座って

机越しに改めて異世界人達を出迎えた。

『ようこそ我が家へ。俺様がここの主のエルヴェダーだ、よろしく』

「とりあえずお客を迎える時には、部屋綺麗にした方が良いと思うけどね」

率直な感想を平然と口に出す由佳のその反応にエルヴェダーは苦笑いを漏らす。

『確かにそれはそうだな。だが、それよりも今はアクセサリーを渡そうと思う』


そう言って彼が机の引き出しから取り出した物、それは……。

「この指輪が?」

『ああそうだ、これは俺様がここに保管してあった物だ』

どうやらこれがエルヴェダーの持っているアクセサリーの1つらしい。和美はそれを受け取ろうと

エルヴェダーに手を差し出そうとするが、和美にそれを渡す前にエルヴェダーは手を引っ込める。

「えっ、ちょっと……」

いきなりの屋敷の主の行動に二の句が告げない和美に対し、エルヴェダーはこんな事を言い出した。

『まぁ待て。俺様もここに来るのは久々なんだ。少し御前達の事について色々聞かせて

貰いたいもんだな。そうすればこれを渡してやるよ』

それに反応したのは永治だった。

「まぁ……俺達の話もそれ程面白い物でも無いと思うけど、それでも良いなら聞くか?」

『ああ、だから聞かせてくれよ』

とにもかくにもそうしなければ、この旅の目的であるアクセサリーの指輪は手に入らないので6人は

それぞれの生い立ちをまずは藤尾から話す事にした。


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