Run to the Another World第141話
百瀬和美をリーダーとするデストラクションパフォーマーズの5人とアイトエル、
そして赤いドラゴンのエルヴェダーの一同はファルス帝国の上の部分へとやって来た。
そのファルス帝国とは隣国関係にある帝国エスヴェテレスと言う国について、まずは簡単にエルヴェダーが説明する。
『エスヴェテレスは小さい国だけど、近年急速に軍事力の増大が進んで来たんだ。それで他国への侵攻も
目論んでいたみたいだけど、最初に侵攻した隣国ヴィルトディンで早くも負け。今は体勢を立て直したから、
また何処かに戦争を仕掛けるつもりで居るのかもしれないと言う噂も立っているらしいぜ』
「物騒な国なんだな」
「でも自分で仕掛けておいて負けたの? だっさ」
「小さいもんね、この国」
率直な感想を漏らす哲と和美と由佳だったが、それは昔の日本にも当てはまる。
「だが俺達の国も、他国と組んで負けたんだよな……」
「ああ、そう言えばそうだな……しかも同じく自分で喧嘩売ってさ」
日本とドイツとイタリアで日独伊三国同盟を結んだが、結果はその後の敗北に繋がってしまった。
それを思い出した永治と哲が何処か遠い目をしながら呟いた。
その話を聞いていたエルヴェダーが藤尾に問い掛ける。
『御前達の世界でも戦争があったのか?』
「ああ。もう70年位前の話になるけども、全世界を巻き込んで世界大戦が勃発したんだ。
色々な国が同盟になったり敵対関係になったりしてもうややこしくなってさ。その辺りは岸とか陽介の方が
詳しいからそっちに聞ける時があったら聞いてくれ」
そう藤尾に言われて興味しんしんな目をするエルヴェダーを尻目に、これからの予定を如何するかを
他のメンバーは考える。
「んー、取りあえずはアクセサリーの回収が先決だろうな」
「だったらエルヴェダー、まずは君の別荘に案内してくれないかな?」
しかし、別荘の主である赤いドラゴンのエルヴェダーからは意外な答えが返って来た。
『それが……実は今現在近づけない状況なんだ……』
「へ?」
まさかのエルヴェダーの答えに素っ頓狂な声を上げる哲。
「どう言う事だ? 何かまずい事でもあるのか?」
永治も何時もの冷静な表情とは違ってびっくりしている。
『ああ……ここから遠い方の俺様の別荘に2週間前、この帝国騎士団の連中の調査が入ったらしくてな。
俺様が向かった時にはすで内部調査の部隊でごった返していた。恐らくアクセサリーも……』
「なら近い方に向かってみる価値はまだありそうね。まずはその近い方の別荘に向かうとしましょう」
「そうね」
デストラクションパフォーマーズのリーダーである和美に由佳も同意し、一行はまず
その遺跡になっているエルヴェダーの近い方の別荘に向かう事に決めた。
そうしてヘルヴァナールの地図上において、帝都の場所から北に向かって歩く事およそ30分。
比較的小高い丘の上に上って来た時に、一同の先頭を歩いていた人間の姿のエルヴェダーがふと足を止める。
『あれが俺様の別荘だ。長い事帰っていなかったから今は遺跡になっているが』
「あれが遺跡? 普通の廃墟になった屋敷にしか見えないんだけど」
「そうだなー、俺もあれが遺跡だとは余り思えないなぁ」
だが、そんな和美と哲のぼやきを打ち消したのがそのエルヴェダーだった。
『長い事あそこには帰ってなかったしな、俺様も。と言うかここに来たのも20年……いや、それ以上
楽に経っているか。こっち方面に来るのも滅多に無い事だからな、普段の俺様はシュア王国に居るから』
出来るだけこの帝国内で目立たない様に、人間の姿になってから遺跡の近くで
下りて貰ったエルヴェダーが自分の別荘になっている遺跡についてそう説明した。
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