Run to the Another World第139話
「っ!?」
またこの状況下で何処からか矢が飛んで来た。弓兵は何処にでも居そうだが、
自分がその弓兵に狙われているとなれば排除しなければいけない。
飛んで来る矢は1本だけでは無く何本も飛んで来たので、確実に
自分も狙われているのだと緊張感が更に橋本は高まる。
(リーチは俺が断然不利!)
だったらその矢を射って来ている奴を探し出してさっさと仕留めなければ
自分が穴だらけになってしまう。他に戦っている奴等も居るし騎士団も居るのだが、
その中できちんと自分を狙う事が出来ると言うのならばかなりの弓の使い手であると
言う事は橋本にもイメージが付き易かった。
(一旦下に下りるか。木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中!!)
そう考えて混戦状態の中に飛び込もうと後ろを振り向いたその時、いきなり身体に衝撃が走った。
「うぐっ!?」
思いっ切り体当たりされたのだと分かったのは、自分の身体と密着する様に目の前に誰かの
髪の毛が見えたからである。更にそのタックルして来た人間は紫色の頭をした……。
(……女?)
いや違う、女の様な童顔の男だ。髪は長いが胸が余りにも無さ過ぎるし、肉のつき方も良く良く
見れば男のそれだ。そしてその男の背中には弓が背負われている。
(弓兵……!)
弓兵は倒れた橋本に飛び掛かって床に押さえつけて来た。
「ぐお、むぅ!!」
「ドラゴンも貴方も逃げ足が速いですね。僕の矢をことごとくかわすとは」
「はっ!?」
その瞬間橋本は気がついた。さっきからドラゴン達と自分を頻繁に狙って来ていた
矢の持ち主はこの男だったのだと。それを知った橋本の怒りはピークに達しようとしていた。
「……っだらぁっ!!」
渾身の力で男を押し返す。どうやら着痩せ等では無く結構肉付きに関しては貧弱らしい。
押し返された男はやはり弓を構えはしなかったが、代わりに懐から1本のナイフを取り出した。
「抵抗しても無駄です、諦めなさい!」
「絶対に諦めないぞ、俺は!!」
その会話でバトルがスタートした。男はナイフを振りかざして向かって来たが、そのナイフのリーチを
含めても橋本の足の方が長いので攻撃を見切りつつ反対に男の腹にミドルキック。それからすかさず
顔面に左のパンチを叩き込んでやった。
「ぐほっ!!」
だが何とか踏ん張った男は次に繰り出された橋本の左回し蹴りを回避し、懐に飛び込んで橋本の脇腹に
ナイフを思いっ切り突き刺した。
「ぬぐぉ!?」
それでも刺されたまま終わる訳も無く、男を両手で突き飛ばしてからテコンドーばりの540度キックで男の
顔面を蹴り飛ばして地面に倒れ込ませた。
「ふぅ、ふぅ!」
突き飛ばした時に男はナイフを握ったままだったので、そのナイフを抜き取られた脇腹からは血が出て来ている。
早く勝負を決めないとまずいと感じた橋本は、起き上がろうとしている男目掛けて勢いを付けて身体を捻り、
空中から右足を男のみぞおちに落として気絶させた。
(これで一先ずは大丈夫か)
気絶した弓兵を見ながら、すぐに橋本は他のメンバーに加勢する為に動き出す。まだ何処かに
弓兵が居ないとも限らない以上、少しでも弓兵に限らず他の騎士団員達の数を減らして
おかなければいけないと考えるのは当たり前の事だった。
(俺達は絶対に元の世界に帰るんだ。だからこそ、こんな所でくたばる訳には行かない)
心の中でそう呟きつつ、素手での不利な状況を今まで培って来たボクシング、キックボクシング、ムエタイ、
カンフーのテクニックで何とか覆す為になるべく1対1の状況になる様に持ち込む橋本は必死でその後も戦いを続けるのであった。
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