Run to the Another World第138話


「私は現ラーフィティア王国騎士団長のローエンだ。私達ラーフィティア王国騎士団に

バーレン皇国から伝書鳩が飛んで来たのでな、その為に調査に動いていたと言う訳だ。

……今の御前達の様に、人間の言葉を喋るドラゴンと魔力を持っていない人間が

この世界に居ると言う内容がそれに書いてあったからな!」

「はっ、バーレン皇国!?」

「バーレンってまさか、あの若い君主が収めていた俺達が居た国の……」

つい先日までその国に居た孝司と兼山は驚きの声を上げる。


その2人のリアクションを見て、ローエンと名乗った騎士団長は確信した様に頷いた。

「そうだ。そもそも飛竜を操る人間達が現れたと言う報告も受けていた私達は、

もしかしたらその飛竜を操る人間達がこちらにも来るのでは無いかと警戒してこうして

見回りを行う様に王が命令を下された。そうして見回っていた所、人間を乗せたドラゴンを

こうして発見する事が出来たのだ。御前達には色々と聞きたい事があるからな。私達と

一緒に城まで来て貰うとしよう」

「後にしてくれねぇかな、それ」

ローエンのセリフに間髪入れずにグレイルが口を出して来た。

「何?」

まさか間髪入れずにそう言われると思っていなかったローエンは目を丸くする。


そしてその後にセリフを続けて来たのはグレイルでは無く一同のリーダーである孝司だった。

「俺達にはまだやるべき事があるし、それよりも火山に向かってみればもっと凄い状況に

なっているんだが」

「……火山?」

きょとんとした声を上げたのはローエンでは無く、そのローエンの斜め後ろに控えている白い

髪の毛の男だった。この男も他の騎士団員達とは服装がローエンと同じく微妙に違う為、

恐らくローエンの副官的なポジションなのだろうとレーシングプロジェクトの5人は推測する。

そしてそんな白髪の男の問いに答えたのはエスティナだ。

「ケブザード火山よ。そこに居る妙な人間達がいきなり襲いかかって来たわ。しかも私達の他に何人も人間を

殺していたわね。今も火口に行けばその人間達の死体がまだある筈よ」


だがこの発言が、更に6人とドラゴンを窮地に追い込んで行く事になってしまう。

「犯罪の自白か? それとも出まかせか?」

「えっ……」

絶句したエスティナに、更に白髪の男は続ける。

「いきなりそんな事を言われてそうですか、と信じられると思うのか? それに何故御前達は

そんな場所に居たんだ? まさかそこがかつて伝説のドラゴンが居たとされる遺跡だと知っての

行動か? そうだとしたらますます怪しさが増すだろう?」

「…………あーあ」

完全に裏目に出てしまった様だ。ここで捕まってしまえばかなりのタイムロスになってしまう事は避けられない。


「さて、話は終わりだ。抵抗する様なら実力行使も止むを得ないが?」

ローエンが腰のロングソードに手をかけながらそう言うが、当然ここで捕まる訳には行かない

一同はそのローエンの言葉に耳を貸そうとはしなかった。

「嫌だね」

「そうか。なら遠慮する必要は無さそうだ!!」

ローエンが一旦ロングソードから手を離して右腕をまるで野球のキャッチボールの様に後ろから

前へと振り被る。それが合図となり、いっせいに王国騎士団員達が襲いかかって来た……が。

「タリヴァル、頼む!」

『任せておけ』


さっきのケブザード火山での様に、今も同じく光の魔導で目くらましをして貰う。そしてその光で

相手が怯んでいる間にここから逃げ出す作戦だったのだが……。

『ぬあっ!?』

「え?」

光を出す為に準備をして、いざ光を出そうとしたタリヴァルの顔目掛けて幾つもの炎と水、

それから岩に突風が飛んで来る。

「先にドラゴンを狙え!! 魔導を使われたら厄介だ!!」

どうやら驚異的な存在から排除する事にしたらしいラーフィティア王国騎士団は、ローエンの号令で

タリヴァルを集中攻撃しにかかる。そしてローエンを含めて約15人程が人間の6人に向かって来た。

「こんな展開が……っ!!」

「こうなったらもうやるっきゃねぇ!! エスティナ、戦えるか!?」

「え、私は全然駄目……!!」

「なら遠くに逃げろ、良いな!!」

孝司の指示でエスティナを出来るだけ遠くに逃がし、ラーフィティア王国騎士団とのバトルが始まった。


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