Run to the Another World第136話


「ちっ!!」

舌打ちをして孝司達一同はそんな男女達を迎え撃とうと思ったのだが、次の瞬間

向かって来た男女達が突然物凄い悲鳴を上げてその場で悶え苦しみ始めた。

「な、何だぁ!?」

グレイルも驚きの声をあげる。

「突然顔を押さえ始めた……」

橋本も訳が分からないと言った顔で呆然と呟いた。


「きゃあああっ!!」

そんな一同の横でエスティナも同じく顔を押さえて苦しみ始める。

「お、おいどうした……!?」

兼山がそんな彼女に駆け寄るが、タリヴァルは次の瞬間自分の身体から光を出しつつ

元のドラゴンの姿に戻る。

『逃げるぞ!! エスティナも乗せるんだ!!』

「あ、ああ……」

訳が分からないまま、1番6人の中でパワーがある周二がエスティナを担ぎ上げて

そのままタリヴァルの背中に乗り込み、上手く火山から脱出する事に成功した。


「光の魔導?」

『そうだ。しかし魔力を持たない御前達には我の魔導の効果は出ない様だな』

タリヴァルが合流ポイントに向かう為に空を飛んでいる間、あの時一体タリヴァルが

何をしたのかを自身の口から聞く事が出来た。

『前も話した通り我は光属性のドラゴンだ。だから光の魔導を扱う事が可能でな。

目くらましの為に太陽の光と同じ位の眩しさの光をあいつ等に向けて放ったと言う訳だ。

そしてその隙に御前達を助け出すつもりだった。だが御前達に目をつぶれと言うのを忘れていて

思わずしまった、と後悔した。だがまさか効果が無いとは思わなかったので我も驚いている。

逆に言えば効果が出なかったのが功を奏したらしいな。御前達が迅速に我の背中に乗ってくれたから

助かった。エスティナはもう大丈夫か?』

「え……ええ、何とかね」


若干まだ目がチカチカするけど、と付け加えた彼女だったがもう心配は無いらしい。

「それにしてもまさか魔導が通じないとはねー。私は魔導の勉強は簡単な物しかした事無いけど、

仮に国一番の魔導師が戦っても貴方達には勝てないでしょうね」

「魔導が使えないから?」

「そうそう」

彼女によれば、例えば物理的に生み出した火と火の魔導による火は似て非なる物らしい。

物理的に生み出した火であれば地球人達も熱いと感じるのだが、魔導によって生み出された

火は体内の魔力のエネルギーを火に変換するらしく、それが生物の魔力と反応して熱いと感じさせると言う話だった。


「だったら、その魔力が体内に無い俺達には熱いと感じる事も無ければ火傷をする事も無いって言うのか」

「そうね。だからさっきのこのドラゴンの光も貴方達には見えなかった様だし」

RPGに詳しい兼山の予想に、エスティナがその予想は正解だとの判定を下した。しかしこんな一例も出す。

「けど、例えば風の魔導で何か……そうね、岩を風に乗せて飛ばして来た場合には貴方達はその岩を避けないと怪我するわ」

岩は物体だからそのまま魔力があろうが無かろうが当てる事が出来る。だから避けないと当然ダメージを

食らってしまうのでそう言う場合は避けなければならないとの事だ。

「だったらその国一番の魔導師はそう言う戦い方をしないと俺達には勝てないって訳だな」

「そうね」

橋本の予想にもエスティナは正解の反応を下した。

だけどその事はもう余り考えなくて良いんじゃないか、とグレイルが呟く。

「でもこの国でのアクセサリーの回収はもう終わった訳だし、後は島へと向かうだけだ」

合流ポイントはファルス、バーレン、シュアからそれぞれ合流したあの集会場のある島。しかしそこに向かう

途中でこの6人がとてつもなく危機的な状況に陥ってしまう事になる。


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