Run to the Another World第135話


「俺達? 俺達はここに遺跡があるって言うから観光に来たんだよ」

男の問い掛けになるべく自然体でグレイルがそう答えるが、男は5人の

服装を見て更なる疑問の声を。

「それにしては軽装だな。その袋の中身は何が入ってるんだ?」

「これは食料だよ」

「そうか。しかしこんな険しい道をそんな格好で登って来られる様なものでも

無いだろう。それに加えて御前達の格好にはまだ不自然な所がある」

「な……何だよ?」


冷静な声色で分析を始めた男に対して、若干どもりながらも兼山が聞き返す。

その兼山に男はこう答えた。

「この山道は険しい登山ルートとして有名だ。俺達みたいに大人数で来るなら

荷物を分担させて持ち歩いて来る事も出来るが、そうでも無いのにそれだけの人数で

そんなの持ち物が少ないのはおかしい。それから御前達の服装は綺麗過ぎる。確かに

少し汚れている部分はあるにせよ、もっともっと汚れても良い筈だ。大体、足の部分が

余り汚れていないと言うのも不自然だな」

ズバズバと不自然なポイントを言い当てて行く男に対して、この状況は段々自分達が

劣勢になって来たんじゃないかと不安になる6人とドラゴン。


そんな一同を知ってか知らずか、更に驚愕の事実を男は言い当てた。

「それに、どうもその女と白髪の男以外の5人にはおかしい所がある」

「え?」

だがそこまで男は言って、1度頭を振って訂正した。

「いや……正確には白い髪の男もだな。白い髪の男から流れ出ている魔力。

これは普通の人間よりはるかに多いのが良く分かる。最初は余りに多くの魔力が

あふれ出していたから気がつかなかったけど、御前達全員からの魔力じゃ無かったと言う訳だ。

そして御前達5人から感じる事。それは……魔力が感じられない事だ」

「…………」


まさかそれを言い当てられてしまうと思っていなかった一同は何とか顔には出さない様に

していたが、あろう事かリーダーの孝司の顔に出ていてしまったらしい。

「その茶髪の男の顔つきが少し変わったのが分かる。これは図星だろう? まさか魔力が無い

人間と出会えるとは俺も正直驚いている。これだったらあの問題も解決出来るかもしれないな」

「……あの問題?」

意味深な事を言い出した男に対して周二が尋ねるが、男はそれに構わずに右手を上げた。

するとその瞬間、男の背後に居た部下の男女達がいっせいに色々な武器をそれぞれ構える。

「それは後で話してやる。俺達と一緒に来て貰おうか。……断る権利は無いが」


だが、その最後のセリフにリーダーの孝司が切れた。

「あん? 断る権利が無いってどう言う事だよ?」

「どう言う事も何も、そのままの意味だが」

「大体おめー等に何の権利があんだよ。まさか王国騎士団の人間か?」

「そんな所だ」

まさか王国騎士団の人間か……と思っていた孝司達だったが、その答えに待ったをかけたのは

今まで黙っていたタリヴァルだった。

『嘘をつくな』

「何?」


まさかの発言に緑の髪の男の顔つきも変わる。

「それはどう言う意味だ?」

『我は知っているのだぞ、御前達が正規の騎士団員じゃ無い事位は』

「何を根拠に?」

『そんな服装を騎士団員達はしないだろう。それにここの調査は済んだらしいし、

わざわざここに来てこんな殺人を犯す様な事を騎士団員達がする筈が無いと思うのだが。

どちらかと言えば、騎士団員はこんな所に居る様なこいつ等を捕まえて尋問しにかかると思う。

正規の騎士団員として活動する以上は、余りにも不自然な点がそちらにもある様だな?』

屁理屈とも取れる様な気がしないでも無いタリヴァルのその理由付けだったが、どうやら効果はあった様だ。

「……なかなか鋭い勘の持ち主だ。しかし、今俺達にこの場所で御前達を捕らえると言う目的が

出来た事に変わりは無い、かかれっ!!」

男の合図で、一斉に彼の部下達が襲い掛かって来た!!


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