Run to the Another World第134話
だがその孝司の答えに口を横から挟んで来たのは、インドでの修行経験がある兼山だった。
「その前に、ある程度は今のこの国の事についても知っておきたい。再建国されてまだ間も無い
この新生ラーフィティア王国について……」
そう言いつつ、兼山は隣に立つエスティナに早速疑問をぶつけた。
「今の国王ってどんな奴なのか分かる?」
「国王はそこそこ若い人間よ。確かカルヴァルとか言う名前で、元々は隣のイディリーク帝国で王宮騎士団の
団長であり帝国の将軍を務めていたって人ね。で、そのカルヴァルはイディリークの皇帝がまだまだ若いと言う事で
不満を持って反乱を起こしたんだけど帝国の兵士部隊や近衛騎士団の活躍で阻止されてしまったわ。
でも、その皇帝がまた御人好しな人間でね。見逃す代わりにこのラーフィティア王国を再建する事を約束させて
イディリークから追放したんだって。今じゃカルヴァルはこの国を見事再建して国王に収まってるって話よ」
前に彼女が自分で言っていた通り、この国には近付かない様にエスティナは心がけているので人づてに聞いた
話であると言う事だが、一言でその話を纏めるのであれば元々イディリークの将軍だった男が今の国王に
なったと言う事になる。
「だからまだ再建国されて間も無いのか」
「そう言う事ね。それじゃあ合流ポイントに向けて出発よ!」
納得した兼山の返事にエスティナもうなずき、一同は合流ポイントに向けて火山から出発しようとした……その時だった。
「……何か聞こえる」
「ん?」
「どうした周二?」
周二がそう呟いたのをグレイルと橋本は聞き逃していなかったが、彼の次に気がついたのが
今まで黙っていたエスティナだった。
「かなり多くの人達がここに来る足音が聞こえるわ。噂をしていたから……?」
「噂をすれば影、って言う言葉が俺等の国にはあるんだ」
兼山がそう言いつつ、どんな奴等が来るのかをここで待ち構える事になったがそれが6人を
窮地に追い込んで行く事になってしまう!!
「ドラゴンが飛んで行ったからこうやって来てみたんだが、どうやら見当違いだった様だな」
山を登って来た大勢の人間達。ざっと見積もっても100人は居るだろう。
その先頭に居る緑色の髪の毛を長く伸ばした男が、残念そうに頭を振って
今の状況を平然と見渡していた。
「何だ、御前達は」
「この状況を見ても驚かないって事は、これは御前等がやったのか?」
周二と孝司がそう男に問い掛けると、同じく平然とした態度であっさり返事をする。
「そうだ。俺達の邪魔をしようとしたから殺した。そしてこれからここにやって来るであろうドラゴンを見つけに来た」
「ドラゴンねぇ……そうそう簡単に会える存在なのか?」
何だかこの集団にタリヴァルの事を話したらまずいと感じた橋本は、知らない振りをしてそう疑問を呈する。
「それは分からないが……会えないと言う根拠も無い」
「だからここに来て待っているって訳か」
それは兼山も同じ考えだった様で、あえて知らない振りをして通す事に決めた。
しかしその横からエスティナがこんな疑問を口に出して来る。
「もし、そのドラゴンとここで会う事が出来たらどうするつもり? まさか戦うの?」
その問いかけに男は頷く。
「ああそうだ。ドラゴンと戦って力を示し、そのままドラゴンを手なずける」
「手なずける?」
グレイルが男の言葉の真意を確かめようとすると、男はまた頷いた。
「ああ。俺達は色々と必要な物があるんでね。そのドラゴンの力もその1つだ」
が、次の瞬間男の口から出て来た疑問に一同は追い込まれて行く事になってしまう!!
「そう言えば御前達は何故こんな所に居るんだ? そっちの方が俺には気になるんだが」
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