Run to the Another World第13話
「セヴィストだ。開けてくれ」
「へ、陛下?」
まさかの皇帝の登場に若干動揺しながらも令次はドアを開ける。
「入るぞ」
セヴィストの後ろにはカルソンとルザロ、そしてシャラードも居た。
「どうなさったんですか?」
和美がそうセヴィストに問いかけるが、セヴィストの目つきがその瞬間変わった。
「独自に御前達は行動しているらしいが、それについて話があるのでな。長くなるから全員座れ。……御前達もだ」
と言う訳でこの部屋の中に居る全員が床に座り、中心にはハリドと令次と和美、
そしてセヴィストとカルソンが向かい合う形になった。
「単刀直入に言おう。御前達はそこ迄してドラゴンの事を調べるつもりか?」
「そこ迄……?」
「しらばっくれても無駄だ。禁書庫から盗み出された文献の事は知っているのでな」
「……」
「そこ迄すると言う事は、御前達は必死なのだな」
「……」
「何とか言ったらどうだ」
無言のメンバー達に若干いらいらし始めるセヴィスト。
そしてハリドが口を開く。
「ドラゴンの事はどうも教えてくれないみたいだったし、だったら俺達で調べるしか無い。もしあの声が言っている事が
本当だったら、俺達が元の世界に帰るきっかけになりますよね。だから、俺達は独自にドラゴンの事を調べています」
更に和美もハリドに続く。
「それに……私達が帰る為には、ドラゴンに会わなければなりません。ですから勝手な行動でしたけど調べたいと思ったんです」
最後に令次が土下座をしてセヴィストに頼み込む。
「……御願いします。俺達が元の世界に帰る為には、まだ調べたい事が山程あるんです。
どうか俺達にこれ等の事を調べさせて下さい」
その言葉にセヴィストが出した結論は……。
「駄目だ。御前達にこれ以上首を突っ込ませる事はさせない」
「え!?」
「そんな!!」
11人からそれぞれ驚愕の声が上がる。この皇帝陛下の言葉の意味が全く飲み込めない。
「な、何で……」
「俺は御前達がこれ以上ドラゴンの事について調査をするのを認めない、と言ったんだ」
セヴィストはすっくと立ち上がり、声高に宣言する。
「これ以上首を突っ込むな。良いか、痛い目に遭いたくなかったら勝手な真似はするんじゃないぞ」
「陛下、ちょ、待って……お待ち下さいっ!」
しかし、その悲痛な叫びに答えたのは宰相であった。
「私も陛下とは同意見です。これは国の問題ですから。良く考えてみたんですが、やはり部外者が
勝手に動かれると私達が困るんです。宜しくお願いします」
更にルザロとシャラードが文献を回収する。
「この文献は返して貰うぞ。しかし、どうやってあの禁書庫に入ったんだ?」
「全く、姑息な真似してくれるじゃねぇか」
残された11人は一同に悔しそうな表情をする。
「もう駄目だ……あいつ等に期待出来ない」
「確かに俺達が勝手な行動をしたのは事実だけど……」
何でそこまでドラゴンの事を調べられるのが嫌なんだと、訳が分からない表情をする事件捜査のメンバーの岸と連。
「これで文献もパァ。まぁメモは回収されなかったけど」
そう言ってポケットに仕舞ったメモを取り出す洋子。
「国のメンツに関わる事なのかもしれないけど、俺達が当事者じゃないってのは完全に間違いだと思う」
「それは確かにそうだ」
「私達はあの盾を持って、そしてドラゴンに会う為にここ迄来た。これは私達には大いに関係があるわ」
永治のセリフに流斗と和美も同意する。これから先、自分達がどうやって行動すれば良いのか皆目見当もつかなくなってしまった。