Run to the Another World第123話


しかしその瞬間、エスティナの胸にあるペンダントが光り輝き始めた。

「えっ、えっ!?」

「うお、なんだそれ!?」

「わ、私にも分からないわ!」

光り輝いてはいるものの、異世界人達がトリップして来た時の様に光が大きくなって

呑み込まれる……と言う事は無くそのまま淡い光を発しながらペンダントは光り続けていた。


それには周二も驚きだ。

「な、何だ……!?」

「そのペンダント、あんたのじゃないのか?」

もっともな疑問をグレイルが口にするが、エスティナは何かを思い出したかの様に目を見開いた。

「あっ、思い出した!! この胸に下げているペンダントなんだけど、これ、実は2年前に神殿で

友達が見つけたのよ。この神殿でね」


「え、それって如何言う事だ?」

兼山が問うと、エスティナはペンダントの入手経緯を話し始める。

「この神殿で調査の為の発掘作業中に見つけたらしくて、価値も無さそうだし、国の方でも別に

いらないからあげるって言われて……」

「うん……で?」

「それでその神殿の事についてちょっと調べた事があったんだけど……ここで昔、魔導の研究が進められていたらしいのよ」


そんな話題にジェイノリーが食いついた。

「魔導の?」

「うん。それと関係あるのかどうかは知らないわ。でもさっきから言おうと思ってたんだけど、今光った時よりも前に

このペンダントが何だか光ってた様な気がするのよ」

「はい?」

「……何時から?」

そしてこの後、一同に驚愕の事実が伝えられる事になる。


「この神殿の前に来てからなの。少しだけどその時から光ってた」

「ここ……に?」

一同はそれぞれ驚きの表情を隠せ無い。

「何故だ? エスティナもここに来たのは初めてなんだよな?」

「だから不思議なのよ。もしかしたら、この神殿とペンダントは何か関係があるのかも。神殿に近づいたら

今みたいに光が強くなったしね」


「それって、その発掘された時は光っていなかったのか?」

そこを疑問点として突いて来たのは橋本だったが、エスティナは首をかしげてこう答えた。

「さぁ……? そこは私も聞いていないけど、派遣元のアーエリヴァのギルドが価値の無い物だって判断した、とは聞いたわよ」

「おいおい……何だよそれ。そこも何だか怪しいもんだな。発掘品をそんな簡単に要らないって言えるなんて。

普通は真っ先にそう言った物が研究対象になると思うんだがな……」

橋本はまさかの事実に、何とも言えない表情で答えた。


もっともな橋本のそんな疑問に、エスティナも複雑な表情でこう答える。

「うーん、そこは良く分からない。でも、価値の無い物だって判断されたって事だから、余り深く考えなくても良いかも」

そして孝司がエスティナの言いたい事を纏める。

「何だかいい加減なギルドだな。だが……そのペンダントととその神殿が関係あるのなら、この先に行って見る価値はあるって事か」

「そうね」

一同は神殿を見上げ、改めて中に入る為に歩き出した。


ローブリック神殿は薄暗いものの、エスティナがこの場所にやって来てペンダントを見つけた友人から聞いた話では、

そんなに内部は広くは無かったとの話だ。

「最深部には石碑があったって聞いた事があるけど、そこ迄行ってみる?」

「石碑……?」

「凄く怪しいな。行ってみる価値はありそうだぞ」

と言う訳で魔物こそ居ないものの、足元が非常に悪いのが特徴的なこのローブリック神殿。

壁は外壁も内部の壁も同じで、8:2で上が緑の下が青と言う配色。

目がチカチカしそうだが、それは人によって感じ方が違うので何とも言えない。


シーンと静まり返った神殿内を進んで行くと、ドアが立ち並ぶ長い通路に出た。奥には階段がある。

「下迄行くか」

「おう」

一同は通路をスタスタと歩いて行くが、後ろに何か通り過ぎる気配を感じて一斉に振り返った。

「……!?」

「な、何か今気配感じなかったか?」

「俺も……」

「私も。私達以外に誰かが居るって事?」

「分からない……今は進むしか無さそうだな」

なるべく早めに最深部の石碑を目指した方が良さそうだと思って、ペースを上げる一同。


そのまま階段を下りると、またさっきと同じ様に目の前には長い通路があった。

突き当たりには豪華な装飾がされているが、年月の経過を感じさせるボロボロの扉が。

そこの前迄一気に進み、孝司は後ろの一同に目配せする。

「……準備は良いな?」

「ああ」

「大丈夫」

「私も」

「……だあっ!」

声を上げて孝司が扉を前蹴りで開けると、そこにはエスティナの友人の情報通り

石碑がある大きな部屋が存在していた。


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