Run to the Another World第122話


「……前に城に侵入して殺しをしていた男が居たんだけど、その男が捕まった後、

手足を切り落とされて火口に投げ入れられて苦しみながら死んで行った、って国王から発表があったのよ」

「それだけの事を国王がしていたって事だな」

「でもそれも、天変地異によって終わりを告げたのか……王国の滅亡と言う形で」

何処かしんみりした口調で孝司が周二に続けた。

彼女の口振りによれば今のラーフィティアの事は知らないが、彼女が

生まれた時のラーフィティアの方だけで考えると国内の情勢は酷かったらしい。

民の困窮等は知らずに独裁体制で運営していたその国は、罪の無い国民を捕まえて

強制労働させていただけで無く、騎士団もその国王に全面的に味方して横暴が止まなかったらしいのだ。

だからこそ、彼女は両親を殺されたと言う事もあってこのラーフィティアには苦い思い出が大き過ぎるのも

また事実。だがその一方で、彼女はこの再建されたラーフィティアがどうなっているのかと言う事を見てみたいらしい。


「まだ出来て確か1年ちょっとだった筈だけど、恐ろしい勢いで再建しているからどうなっているのか興味はあるわ。

もっとも、その天変地異の被害が何処まで及んでいるのかは分からないけど……」

しかし、そこでふとこんな疑問が兼山からもたらされる。

「ん? と言う事はその天変地異の時にはもうエスティナはこのラーフィティアには居なかったって事なのか?」

「そうね。滅びたのが今から6年前。何でも大雨から始まってその次には台風が直撃して、王都を壊滅させる位の地割れが

地殻変動とか言う事で起こったらしいけど。その時私はアーエリヴァに居たから人づてに聞いただけなのよ」


「アーエリヴァって確か、この世界で1番面積の大きい国か?」

グレイルが尋ねると、またしてもエスティナは首を縦に振った。

「ええ。両親を殺されてからはお金を貯めて、早くこの国を出たかったからね。それで必死に働いて17歳の時に国を出て

各地を放浪しながら日雇いの仕事もしつつ色々な国を回ったわ。勿論貴方達が最初にそれぞれ分かれて飛ばされたって

言うその3カ国も行ったし、一応この世界の地図に載っている国には全て行ったわよ」

「ああそうだったんだ……」

「そしてあの島に向かう途中に、ラーフィティア再建の話を聞いたと? 俺達が君と出会ったのはあの島だっただろう」

橋本はそう尋ねるが、エスティナは今度は首を横に振る。

「いいえ。私はラーフィティアを通るのが嫌だったから1度ヴィルトディンに行って、そこから今度は船を使ってあの島に向かい、

そこからイディリークに入るつもりだったのよ。で、あの島を見ていた時にあの場所で異世界人の貴方達と出会ったって訳」

そう言った経緯で、ラーフィティアにエスティナが来るのは本当に久しぶりの事になるらしい。

「となれば、滅びてから今ここに来る迄ラーフィティアには1度も入っていないと言う事になるんだな」

「そうよ」

周二の呟きにエスティナも肯定で返した。


「あー、んじゃ早速で悪いんだがな、6年前と今とじゃ記憶もあやふやだろうが俺達はここの遺跡も探してる。エスティナの

情報も頼りになるかもしれないから、そう言った遺跡とかの情報を覚えていたら教えてくれないか」

孝司がそうエスティナに頼んだのだが、エスティナは首を横に振る。

「それが……遺跡の場所は良く分からないのよ。当時の私は

そう言った所に興味が無かったから」

「あ、そう、か……」


だが、その会話を横で聞いていた周二がこんな事を。

「このドラゴンなら知っているんじゃ無いのか? だって、あんたの別荘なんだろ?」

「あっ……」

そう言えばこのタリヴァルの事をすっかり忘れていた。

その発言をした張本人……もとい張本ドラゴンに視線が集まる。

『行くとするか……。今から行く所は遺跡では無く、神殿なのだがな』

「何か……すまん」

孝司の謝罪の後、6人はその別荘となっているローブリック神殿へと案内して貰う事になった。

とは言っても降り立った場所がローブリック神殿から程近い所だったので、15分も飛べば着いてしまった。

「ここか……」

「それじゃ中に入ってみましょう」

孝司とエスティナを先頭に、一同は神殿の中へ入って行った。


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