Run to the Another World第120話
平原で異世界人達とアサドールが奮戦している中で、恵の目の前に現れたのは
水色の髪の毛をしたさっきの男だった。
「うがぁ!?」
「逃がすかよ」
男の元へと引っ張られた挙句、細身に見えるがしっかり筋肉の付いたがっしりとした
左腕で首を羽交い絞めにされる。
「ぐっ……!!」
「大人しくしていれば危害は加えない。逆らうなら分かるな?」
男は短剣を空いている右手で腰から引き抜き、恵の首に突き付けた。
だが恵もこれで黙っている訳も無い。
「にゃあーあっ!!」
猫の様な甲高い掛け声と共に短剣を持つ右手を自分の右手で上に押し上げて振り払い、
そのまま左手で短剣を男の手から叩き落してすかさず後ろにある男の顔面に左の肘を入れる。
「ぐお!?」
そのまま振り返りつつ今度は右の肘を男の顔面に入れ、男が倒れ込んだ所で男の左足を
右足で踏みつける。
「ぐうう!」
男が起き上がって来ようとする所に右足で顔面に蹴りを入れる。
「ぐは!」
それでも男も打たれ慣れているのか、今度は右の前回し蹴りを繰り出すが恵はしゃがんで避け、
続いて左の回し蹴りを繰り出して来た。だがこれも恵は屈んで避け、避けた所で男の足を支えている
右足の太ももに自分の右足で蹴りを入れた。
「あが!」
恵は油断無く構えを取りながら、自分の攻撃によって地面に倒れる男を見下ろす。
「くっ……!! 女だからって俺は手加減しねぇ!」
さっき落としてしまった短剣を拾い上げて左手に持ち替えつつ、空いた右手でロングソードを腰から抜いて
二刀流となって恵に向かって来る男だが、冷静に恵は対処する。左、右、左、左、右、左、右、左、
右、右と連続して合計10発のローキックとミドルキックで男の短剣とロングソードをガードし、最後の右は
ローキックで男の左足を蹴りつけて地面に倒れさせた。
「おがぁ! ぐうううう!!」
それでも尚も立ち上がって来た男はロングソードを突き出し、それを恵が避けた所で右のハイキックを
繰り出したが、恵はそのハイキックを繰り出した右足を両手でキャッチして足首を捻り上げた。
「うおあああっ!?」
その足を捻って、自分の方に思いっ切り引っ張ると男が自分の方に向かって飛ぶので、素早く両手を
離して飛んでいる男に目掛けて腹にジャンプしながら膝蹴りを入れる。
「ぐふぉ……」
丁度みぞおちにその膝蹴りが入る事になってしまった男は上手く息が出来ずに悶え苦しむ。
(早くここから逃げなきゃ!!)
何も殺す事が目的では無いので、恵はさっさとその男から離れて他のメンバーの加勢に向かうのであった。
サエリクスはあの金髪の槍を持った男に行く手を阻まれてしまった。
「御前達の所為でこの騒ぎが起きて居るんだ。城に来い!」
「くっ!!」
「来ないのなら連れて行く!」
そう言って男は槍を振りかざしてサエリクスに向かって来る。仕方が無いのでサエリクスも応戦し、
足と手で槍をブロックしたりかわしたりして行くがリーチの差は不利だ。
後ろに下がりつつサエリクスは応戦していたが、それも限界が来て大きな木に背中が当たる。
「ちっ!!」
咄嗟にサエリクスは突き出された槍を手で弾きつつくるりと横にクイックターンし、そこから踏み込んで
接近戦に持ち込み、男の顔面に思いっ切りストレートパンチを入れる。
「ぐはっ!」
そこからサエリクスは一気に反撃を開始。よろけた男に近付いて再び右のパンチを顔面に入れ、更に
両方の拳をいっぺんに顔面に入れてから左のパンチを喉に突っ込み、そのまま軽く回転して右の肘を
ムエタイの如く男の胸に入れる。
それから攻撃を止めずに右の裏拳を肘を入れた直後に入れ、左、左、右、右とパンチをそれぞれ
1発ずつ胸と顔面に入れて最後におまけで右の裏拳を男の胸へと入れた後に、テコンドーみたいな
右回し蹴りを男の側頭部へ繰り出した。
「ぐほっは!!」
男が倒れ込んで気絶したのを見てサエリクスはそこで攻撃を止め、逃走を再開する。
「アサドール、退散するぞ!!」
『分かった!!』
ピンクの髪の男も和人とアレイレルに2人掛かりで倒されたらしく、6人の異世界人達はこうして
何とかアクセサリーを回収して、ヴィーンラディ王国からあの島に向かって脱出する事に成功したのである。
Run to the Another World ヴィーンラディ王国編 完
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