Run to the Another World第119話
目が覚めた6人の異世界人はアサドールを起こし、集会場のある
あの島へと向かう為に別荘から出ようとする。しかしここでアサドールが
また魔力による数多くの人間の生体反応を肌で感じる。
「えっ、この上の平原に多くの人間が?」
『ああ。それも先程の連中とは比べ物にならない数だ。およそ……1000人は
居るんじゃないのか?』
「ええっ、何だよそれぇ!?」
1000人と言えば途方も無い数だ。そんな人数の人間がここに来ると言う事は
何かが絶対おかしい。
そして思い当たる節が恵に1つ浮かんだ。
「……まさか、それって王国騎士団だったりしないわよね……?」
『可能性はあるな』
何だか達観した様な口調でさらりと恵に返答するアサドールだったが、とにもかくにも
外に出て見ないと分からないので一同は階段を上ってドアを開けて外へと出る。
するとそこには、赤い制服を着込んだ武装している連中がそこかしこに居るではないか。
どうやら恵の悪い予感がぴったり的中したらしい。
「うげぇ……これは……」
「ああ、相当まずいな」
そう呟く和人と流斗の目の前で、1人の男が一同に気がついた。
「……!! お、おい全員武器を構えろ!!」
その金髪の若い男の指示により、彼の部下であろう人間達が色々な武器を構えて殺気を
みなぎらせる。
「お……おいおい待て待て!! 一体何なんだ!?」
「そ、そうだ。俺達は別に武器を向けられる様な事をした覚えは無い」
ハールとアレイレルが金髪の男に対して自分の思いをぶつけるが、その金髪の男の横から
出て来たハルバードを武器としているピンクの髪の毛の男が口を開く。
「そちらには無くてもこちらにはある。あの木の広場で傭兵集団に傷害事件を起こしたと
伝書鳩でこちらに連絡があった。御前達の行き先も容姿もぴったり一致している」
「伝書鳩……あいつか!!」
苦々しい口調でサエリクスが歯軋りをする。あの黒髪の男達が伝書鳩を使って騎士団に連絡をしたのだろう。
そのピンクの髪の毛の男と金髪の男が言うには、自分達は王国騎士団の下に位置している王国警備隊の
隊員達だとの事。今ここに居るのは騎士団と共に遠征にやって来た帰りで、伝書鳩が自分達の元に
飛んで来たと言う事。そしてドラゴンの姿のアサドールをバッチリと目撃され、追いかけてここに辿り着いた事。
しかし入り口はロックを再びかけていたので開ける事が出来ず、仕方無いのでこの平原でずっと待っていた事を
事細かに話してくれた。
「でも、それとこれとは話が別だ。人間の言葉を話すドラゴンと魔力を持たない異世界人の話は
遠征中だった我々にも同じく伝書鳩で王都から情報が届いている。シュア王国からの情報がこちらの
陛下にもたらされたらしいからな。今度はこれだけの人数が相手だ。大人しくして貰おうか?」
「うっわ、すげーデジャヴ」
顔を両手で覆いながらうんざりした口調でサエリクスが呟く。
「嫌だって言ったら実力行使なのか?」
「良く分かっているじゃないか」
また別の男……水色の髪の毛をしている短剣と長剣の二刀流の男が感心した口調で返答。
彼は騎士団のメンバーらしい。
「……どうする?」
「今まで寝てたから疲れは無いだろう?」
『ああ、もう大丈夫だ。だったらここもさっきと同じ要領で切り抜けるとしよう』
恵とハールの問いかけにアサドールがそう答え、ヴィーンラディ王国での2度目のバトルが幕を開けた。
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