Run to the Another World第117話
ハールが黒髪の男に勝利し、何とか傭兵集団を退けた一同はアサドールの
背中に乗って別荘から脱出し、もう1つの別荘へと向かう。
「あー、危なかったな……」
「全くだぜ。もう1つの別荘に行ったらすぐに脱出しよう。あそこで時間を掛け過ぎた」
「そうね」
あの場所で自分達の事を話したり、ボクシングのレッスンをしたりと言う事で時間を
潰していたのがどうやら裏目に出てしまったらしい。それにさっきの傭兵集団がもし
この王国と繋がりがあるのだったら自分達の事が噂になるのも時間の問題だろう。
だったらもう1つの別荘に向かって、さっさとアクセサリーを回収してこの王国から脱出するだけだ。
ちなみにあの木の広場でゲットしたアクセサリーと言うのは、緑色に輝くアンクレットだった。
足首に取り付けるアクセサリーであるそれを今ではアレイレルが持っている。
そのアレイレルが次の目的地について聞いてみた。
「ところで、もう1つの別荘って何処にあるんだ? そこは遺跡なのか?」
『ああ……遺跡って言う程大層な場所では無いが、8年位帰ってないから荒れてはいるだろうな』
アサドールによれば、もう1つの別荘は世界地図で言う所のヴィーンラディの中央部分にある
大きな平原に存在しているとの事であった。
結構な時間が掛かるし、先程の戦いで疲れているのでドラゴンもスローペースになる。
「遺跡についたら少し休むとしようか。アサドール、どれ位時間が掛かる?」
『そうだな、このペースで行くとなれば大体……3時間位?』
「うえっ、そんなにかかるの?」
サエリクスの疑問に答えたアサドールに、明らかにげんなりした様子で流斗が声を上げた。
「仕方が無いわよ。出来れば何処かで休みたいけど……」
このままノンストップで行きましょう、と恵が提案して3時間もの間ドラゴンの背中で6人は
疲れと眠気と闘いながら別荘に向かって飛んで貰った。
そうして3時間が経ち、日が暮れかけて来た頃になってようやく6人の異世界人達は
もう1つの別荘がある平原に辿り着いた。
その平原では元々大きな木が立っているのだが、その中心部には大きな空洞ができている。
その中に進んで行くと何と1枚の木のドアが現れた。
『良し、封印は破られていない様だな』
「封印?」
RPGに詳しい和人が聞いた所ではアサドール曰くこの先にアクセサリーを保管しているらしく、
木のドアには特殊な封印をかけてロックしてあると言うのだ。
8年もの間、こうしてロックをかけっ放しにしていたそのドアがついに開放されると、今度は
その先に地下へと続く階段が現れた。
その階段を下りて行くと、どうやら魔導の力で光が差し込む様になっているらしく
外と変わらぬ明るいままの部屋が現れた。広さとしてはおよそ20畳位だ。
部屋と言っても地面は土で、壁は木の模様がむき出しになっている。アサドールが自分で
言っていた様に荒れている訳では無いのだが、これでも前よりは汚くなっているらしい。
そしてその部屋の中にある木のテーブルの上に、1つの茶色いベルトが置かれていた。
『これがもう1つの我輩のアクセサリーだ』
「緑色のアクセントがまた独特だなぁ」
流斗の言う通りそのベルトには緑色の模様が入っている。やはり緑のドラゴンだからであろうか。
ともかくこれでこのヴィーンラディでのミッションは終わりを告げたらしい。
「それじゃあ帰るとしようか、あの集会場のある島に」
「そうだな、とっとと帰りたい……けど、やっぱ眠いや」
ハールの提案にサエリクスも同調したのだが、6人はあの戦いで疲れた事、そしてここまで
時間が掛かった事で恐ろしく眠い事を思い出した。幸いこの部屋はスペースが広いので、
6人は雑魚寝で寝る事にした。
『流石に我輩も疲れたな。寝るとしようか』
この別荘に入る為に今は人間の姿になっているドラゴンのアサドールでも、やはり生物で
あるが為に睡眠が必要なのでアサドールもその人間の姿のまま眠る体勢に入る。しかし6人と
ドラゴンが次に目覚めた時には、予想だにしなかったとんでもない事態に陥っているのであった。
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