Run to the Another World第114話


まだアサドールへのレッスンは終わらない。

「じゃー、まずは受け身の復習。最初は前回り受け身からだ」

『良し……!』

アサドールは最初に習った通り、思い出しながらゆっくりと受け身の姿勢を繰り返す。

和人から言わせればまだまだ甘い所もあるが。

「あー、後ろに受け身を取る時はもっと手を伸ばして、思いっきり地面を叩くんだ」

『分かった』

和人から手ほどきを受けるアサドールの傍らでは、同じ様に他のメンバーも受け身の練習に励む。


そしてもう1度ボクシングの復習。

「まずはワン・ツーから。その後にスウェーをやって、最後に俺と軽く試合だ」

『試合もやるのか……』

「軽くだがな。それじゃまず、ワン・ツー!!」

前とは比べ物にならない程の良いパンチで、しっかりとサエリクスの手の平めがけてパンチを繰り出すアサドール。

何度もパンチを繰り出すが、そのフォームもしっかりしているしワキも締まっている。

「良し、なかなか良いパンチだ。それじゃ次はスウェー!!」

続いてはサエリクスのパンチが飛んで来る。まずはゆっくりだが徐々にスピードアップ。


そして一定のスピードまで来た所で和人、ハールが乱入。

『ぐっ!!』

「おおっと、すまん」

ボディに思いっきり和人のボディブローがヒットしてアサドールは倒れたが、それでも負けずに立ち上がる。

『これ位平気だ。さぁもう1度やろう』

「……ああ」

何事も無かったかの様に向き直るアサドールに、伝説のドラゴンと言うだけの事はあるなと思いつつ3人は続行。


最後にはサエリクスとのスパーリングが待っている。

「スパーリングは模擬試合だ。3分間が一般的なルール。ハール、レフェリー頼む」

「良いよ」

サエリクスとアサドールが向き合って、広場に現れたこの大きな木をバックに試合をする事に。

「じゃあ……始めっ!!」

「よーし、打ち込んで来い!!」

サエリクスのその言葉に、アサドールは習った事を思い出しながらサエリクスに向かう。

ワン・ツーから軽快にステップを踏んで、サエリクスに打ち込む。しかしサエリクスは攻撃を出そうとせず、

しっかりとガードするか受け流すかスウェーで回避。

【くっ! 随分と余裕だな!】

サエリクスに全く攻撃が当たらず、だんだん焦りが出て来るアサドール。

それに伴って攻撃がだんだん大振りになって来る。


「そこだっ!」

大振りになれば当然隙も出て来るので、サエリクスはボディをアサドールの腹へ。

そのまま顔に右ナックルを入れてアサドールを倒す。

『ぐっ……』

「オイオイ、まだ1分も経ってないぞ?」

『まだまだ……これからだ!』

顔と腹の痛みに耐えながらもアサドールは立ち上がる。しかし焦りからか、その感情だけが

先行してだんだんスタミナも無くなって行く。

『このぉぉぉお!!』

思わず叫び声を上げるが、そんな彼女をあざ笑うかの様にサエリクスは攻撃を避けると

彼の顎にアッパーを入れる。人体の急所の1つでもある顎に攻撃を食らい、足に来た

アサドールはここでダウンした。


「まぁ、ここまで耐えられれば上出来だな」

『はぁ、はぁ、はぁ……悔しいな』

「焦りは禁物だ。冷静に自分のペースを崩さずに、相手の動きを良く見て行く。

焦って来ると攻撃が大振りになるし、体力も無くなるしそれによって隙も出来るからな」

『そう、だな……』

「後、急所は股間、みぞおち、胸、顎、鼻、眉間。共通するのは人体の中央部分だ。覚えておけ」

急所に攻撃が入ればそれで一撃で相手が死ぬ事もある。

人間の身体は丈夫なのでそうそうある事では無いのだが、当たり所が悪くて……と言う事だ。

それに的確に急所を狙う事は並大抵の事では出来ないので、オーソドックスに関節技で

首の骨を折ったりするのが手っ取り早い方法と言えるだろう。

「これで一通りの事は終わったかな」

「ああ、後はアサドールの成長と努力次第でまだまだ伸びる可能性はある」

「そうだな。まだ若いから時間もたっぷりあるんだし、これからも頑張って欲しい」

伝説のドラゴンの武術の師匠達は、若手である弟子のアサドールのこれからの成長を願うのであった。


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