Run to the Another World第112話
「それで最初に1つ質問だが、やるとしてどんな格闘技を習いたいんだ?」
そのアレイレルの言葉に、アサドールはちょっと考えてから答えた。
『御前達が知っている物を全部』
「時間が無いからそれは無理だな」
サエリクスが間髪入れずに返答をする。時間的な余裕が無い為に流石に全部は無理がある。
と言う訳で、まずは基本的な知識をこれから出来るだけ蓄えて貰う事にして、アサドールに
格闘技の事を教え始める事にした。まずは基本的な事、安全面に配慮して受け身の練習をさせる事にした。
ある程度の知識をまず教え、それから実践も交えて身体でも覚えさせる。
「安全に配慮していなければ、大技に挑戦すんだは無謀だ。それに技に失敗した時や投げられた時も
きちんと受け身を取る事が出来れば、身体へのダメージも少ないからな」
基本的な前回り受け身や、両手を横に広げての受け身。横向きに倒れこんだ時の受け身の仕方。
こう言うのは合気道を習っている和人の得意分野である。
勿論それぞれの受け身の取り方は違って来るのだが、こう言った受け身を取れなければ死ぬ事も十分にあるのだ。
和人の教えに従いアサドールと共に復習の意味も込めて、他の一同も受け身の練習。
受け身は一見関係が無さそうな格闘技でも、倒れこんだ時に役に立つ事に変わりは無い。
アサドールは余り身体が柔らかく無さそうな分、受け身をきちんと取れればその分ダメージも軽減できる。
受け身の練習を一通り終え、身体を温めた所で本格的に格闘技の講座へ。
「それじゃあ次はどんな格闘技を習いたいかって事なんだけど、どうする?」
『全部は無理なら……どんな格闘技があるのだ?』
「大きく分けると関節技と手技と足技だな」
6人はそれぞれ別の格闘技を習得しているので、教えるならなるべく実用性がある物に絞り込みたい。
サエリクスはバーリトゥード系なので臨機応変に対応できるが、それはまた別の話だ。
そうして考えてアサドールが出した答えとは……。
「まずはボクシングが良い」
と言う訳でボクシング講座がアサドールやそれ以外のボクシング未経験の連中に向けて始まった。
講師はサエリクスに教わる事が出来るとアサドールは紹介された。
「それじゃ、俺はアサドールとハールと組むから他の4人は適当にそっちで組んでくれ」
「ああ」
サエリクスはアサドールと向かい合って、両手を広げて前に出す。
「良し、まずはパンチからだ。一応どれ位の力があるんだかチェックしておかないと。
今できる最高のパンチを俺の両手に向けて打ってみろ、アサドール」
『分かった……ふんっ!』
バシバシと音が響くが、まだまだスピードも遅いし威力も足りない。
それにワキがしまっていないし、少し後ろに身体が倒れがちなのでフォームも悪い。
何度かパンチを打ってもらって、サエリクスは基本から教え始める事にした。
「あー、そんなんじゃダメだな。色々直して行かなきゃあ……」
そう言うと、今度はハールの方に向き直る。
「今から俺がハールに向けて今と全く同じ事をする。それを見てから何処が悪かったのかを解説するぞ」
『ああ』
それを聞き、サエリクスはハールの用意が出来たのを確認するとパンチを打ち込み始めた。
一通りサエリクスがハールにパンチを打ち込み、それを踏まえて解説を始めるハール。
「サエリクスのパンチはフォームがしっかりしており、スピードも出ている。
「アサドール。まずはパンチを出す時にワキをしっかり閉めるんだ」
『こ、こうか?』
ギュッと力強く閉めるが、ハールは彼の肩を握って修正。
「ああ、そんな力まなくて良いぜ。閉めるのを意識するだけで良い。力は入れようとするな」
肩の力を抜き、ワキを閉めた所で次はフォームの修正に入る。
「次だ。横から見てると身体が後ろに仰け反ってる。それだと力があっても威力が半減する。
少し前屈みになって、前に、前に突き出すんだ」
前に拳を突き出して、しっかりと相手に当てようとする様になるだけでもだいぶ違う物だ。
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