Run to the Another World第111話
『良く分かった。それぞれ色々な人生が人間にもあるのだな。非常に興味深かった。
しかも今回異世界から来たあんた等の内、その茶髪の男と他の5人はそもそも関係が
無かったと言う訳なんだな。色々とご苦労な事だ』
アレイレルとハールの話も聞き終えたアサドールはうんうんと感心した様に頷いた。
「それじゃあ約束だ、アクセサリーを俺達に渡して貰おう」
最後に話し終えたサエリクスがそう要求するが、ここでアサドールはまた意外な事を言い出した。
『まぁ待て、慌てるな。我輩の事についても聞きたく無いか?』
「いや全然……」
「俺は聞きたい」
サエリクスが全然興味無い、と言おうとした所に和人が割り込んで来た。RPGが大好きな和人は
当然このドラゴンの話を聞けると言う事で興味しんしんだった。
「……せっかくだから僕達も聞いておこうよ。ただし手短にね」
ハールがリーダーらしく上手く纏め、アサドールの事についても話して貰う事になった。
『あい分かった。我輩の名前はアサドール。伝説のドラゴン等と呼ばれてはいるがそれは
我輩にとってはどうでも良い事だ。他に居たドラゴンを含めた中では1番若いんだ。
と言っても御前達人間とは違ってもう2603年生きているけどもな』
そこで一旦言葉を切り、いきなり先程現れたこの後ろの大きな木についての説明も交える。
『これが我輩のアクセサリーの隠し場所だ。何も無い広場に見せかけてこうした隠し場所を
作っておけば人間がアクセサリーを取り出す事は出来ない。我輩の属性は森属性だから
木を操ってツタを出したり、建物に木を生やしたり出来るのだ。この隠し場所もその属性を
利用して作った』
「へーえ凄いじゃん。それから人間の時は学者だったよな、確か」
何時の間にかサエリクスの表情も興味津々と言ったものになっている。
『そうだ。我輩は人間の姿の時は学者をしている。主にバーレン皇国で活動しているから
こっちに来る事は余り無いんだ。それから……人間の姿の我輩はこれで戦う』
隠し場所となっている木の枝の間からガサゴソと取り出して、前足で器用に掴んで地面に
下ろした物は緑色を基調とした丈夫そうな弓だった。
「弓って事はスナイパーの類?」
恵がそう聞くとアサドールは1つ頷く。
『良く知っているな。アーチャーと言うよりもスナイパーと言う方が正しいか。この世界ではアーチャーよりも
優れた弓の技術を持っている者はスナイパーと呼ばれる。国ごとに認定試験もあるんだ。
そもそも御前達に出会った6匹のドラゴン達の中で、最初に戦い始めたのは我輩だ。最年長の
ドラゴン故にグラルバルトが最初だと思われがちだが、我輩が最初だと覚えておいてくれ』
しかしここで1つの疑問が流斗に浮かぶ。
「遠距離が得意なのは分かったけど、逆に格闘戦とかの接近戦はどうなんだ?」
その疑問に対し、アサドールは遠い目をしながら答える。
『大の苦手だ。グラルバルトが1番その分野が得意なら、我輩はもう目も当てられない位に
お粗末だと他のドラゴンから言われた。人間の時もそうだし、この元の姿でも同じだ。御前達は
格闘戦が得意らしいからな、羨ましいよ』
そのアサドールの嘆く様な回答に、サエリクスが1つの提案をする。
「じゃあ、今から俺達にどれだけ苦手なのかを見せてみろよ」
『……え? それは我輩に恥をかかせるつもりか? ふざけた事を抜かすなぁっ!!』
いきなり切れ始めたアサドールだったが、そこにハールが割って入る。
「まぁまぁ落ち着いて。そう言う意味じゃないよ。格闘戦が苦手ならその実力をまず
僕達が見て、悪い所を改善しようって意味だよ」
『……それなら良いが』
「結構気が短いタイプなんだな……あんたは」
すぐ切れる様な奴は面倒だなと異世界人6人は思うが、それは兎も角として一旦
人間の姿に戻ったアサドールに格闘戦のレッスンとして格闘技を教える事で話が纏まった。
Run to the Another World第112話へ