Run to the Another World第103話
と、ここで今まで黙っていたサエリクスがアサドールにこんな事を言い出した。
「そう言えばさぁ、俺達はあんたにアクセサリーを貰いにここまで来たんだ。そろそろ
そのアクセサリーを渡して貰いたいんだが」
『ああ、そう言う約束だったな』
しかしアサドールはサエリクスとマスターズの5人を見て、先にこんな条件を出して来た。
『それは良いけど、我輩も異世界の事について興味がある。それにここまで来て羽を
伸ばせるのだから、せっかくだし御前達の世界の事を教えて貰いたい。それから
御前達の事についてももっと詳しく知りたい。その上でアクセサリーを渡すとしよう』
「それって交換条件……?」
恐る恐ると言った体(てい)でハールが聞くが、アサドールはひらひらと手の甲を6人に
向けて振る。
『それもある。だがそれよりも、やはり我輩はこの世界の事を調べている学者なのだ。
学者と言う物は何かを学ぶ者だからな。そこに異世界人がこの世界に現われ、今まさに
我輩と会話をする事が出来ている。となればこの世界と違う世界の事を知りたいと思うのは
当然の事だと我輩は思うのだが』
「学者らしく結構理屈っぽい性格なのね」
どちらかと言えば口数の少ない部類に入る恵が、口数の多いアサドールに向けて冷静な
口調で呟いた。
『それでどうするんだ? 話してくれるのか、くれないのか?』
しかしここまで来たらもう6人の答えは決まっていたので、サエリクスが若干呆れた口調で聞き返す。
「どうせ話さないって言ったらアクセサリーも渡してくれないんだろ? だったら話すぜ」
『物分りが良くて助かる」
「それで、僕達の知っている事であれば可能な限り話すけど……何から知りたいの?」
ハールも若干呆れ顔で質問するが、アサドールの答えはこうだった。
『だったらまずは6人それぞれの生い立ちから知りたい。勿論話したく無い事まで話す必要は無い。
後は年齢とか職業とかもそうだな』
「まぁ……僕は良いけど、他のみんなも大丈夫なのかな?」
ハールの問い掛けに、何処か曖昧ながらも他の5人も頷いたので多分大丈夫そうだ。
しかしいざ話し始めようと思ったのだが、それにアサドール自身がストップをかけた。
『あ……ちょっと待ってくれ』
「えっ?」
最初に話しはじめようとした和人がきょとんとした顔つきになる一方で、アサドールが一旦本来の
ドラゴンの姿に戻る。この状態になる事に何か意味があるのだろうか、と思っていると、アサドールは
6人にその場から絶対に動かないようにと念を押してから一旦空に飛んで行った。
「何あいつ?」
「さぁ?」
何をしようとしているのか全く意味不明な行動を取るアサドールに対して流斗とアレイレルが空を
見上げながら会話をするが、次の瞬間いきなり地面が揺れ出した。
「うおっ、何だぁ!?」
軍人のサエリクスですら唐突なその揺れにはびっくりする。
そしてその揺れと同時に、広場の中央部分の地面からニョキッと何かの先端が
突き出て来たかと思うと、まるで昔のおとぎ話の様にツタが空に上って行くかの如く大きな木が
6人の目の前に地面から凄いスピードで生えて来た。
「え……何これ……」
「すげー……」
「流石ファンタジーって奴だな」
冷静な恵も、6人のリーダー格であるハールもRPG好きの和人もあんぐりとした表情で
その生えて来る木を見る事しか出来なかった。
そうしてアサドールも空から降りて来て、緑色のドラゴンの姿のままで一言。
『この事の説明については、後で我輩も自分の事を話すからその時に存分にしてやる。
今はとにかく気にしないで、まずは御前達の事を聞かせて貰うとしよう』
「あー、わ、分かったよ……」
でもどうしても気になるわ!! と言う和人はそのツッコミをしない様にギリギリで踏ん張り、
まずは自分が最初だと言う事で自分の事について話し始めた。
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