Run to the Another World第101話


ファルス、バーレン、シュアでそれぞれのバトルを終えて一旦あの島で合流し、今度は貰った

ヘルヴァナールの世界地図で言えばその地図の南東に位置しているヴィーンラディ王国へと

やって来たマスターズの5人とサエリクスの一同。しかし一同はここに向かっている途中、まずは

王国の何処に向かうかの打ち合わせをドラゴンのアサドールの背中の上でしていた。

その打ち合わせ通り、この王国の王都では無く更に南東の森林へ向かう。

「その森に着いたら1回寝たいぜ」

そうぼやいた流斗に和人が突っ掛かる。

「はっ、もう疲れたのかよ?」

「ああ、合気道で余り力を使う事の無い御前さんとは違ってな」

「あ? 何だと?」


その流斗の言い分に、和人はアサドールの背中の上で器用に近寄ってメンチを切る。

「合気道が力を余り使う事が無い? 冗談は顔だけにしとけよ、おい。そっちのカンフーだって、

ただ手足バタバタしてるだけにしか見えねーがな?」

「何言ってんだ? きちんとカンフーは型があるんだ。それに合気道と比べる迄も無い程

カンフーは流派があるんだ。中国3000年の歴史は伊達じゃ無い。合気道より余程強いんだよ」

「だったら勝負すっか、ああ!?」

「おー良いよ、なら掛かって来い。やってやるから」


しかし、そこに入って来たのがそのやり取りを見ていた恵とアレイレルだった。

「勝負は良いけど、後にしてよ」

「御前達の仲が悪いのをこんな時迄出さないでくれ。話が進まないし俺達も見てて気分が悪くなる」

「そうよ。それに今はいがみ合ってる状況じゃ無いわ。私達は先に進まなきゃ」

2人に咎められて、和人も流斗も渋々引き下がった。

「ちっ……」

「けっ……」

そんなメンバーを背中に乗せているアサドールは、1番頭の近くにいるハールに小声で訪ねる。

『その2人、いつもそうなの?』

「昔からだからね。もう10年以上だよ」

『そうなんだ、じゃあ修復は不可能そうだ』

あっさりアサドールはそう結論を出し、この暗闇の中でも結構なスピードでそのヴィーンラディの森へと向かう。


距離としてはイディリークからヴィルトディンへとやって来た時よりも更に長いので当然時間にしてももっと掛かる。

アサドールの上で寝るのは……正直に言うときつい。余り身体を揺らさない様にして欲しいと6人の

異世界人達はアサドールに頼んではいる物の、どうしても空は風が強くなりがちだし他の魔物や普通の鳥だって

飛んでいるから寝るのは結構無理がある。今度のヴィーンラディにおいては森の中にあると言うアサドールの

別荘となっている遺跡でそうするつもりである。地球では普通に昼に働いて夜眠る生活のメンバーも居るが、

令次や洋子の様に勤務時間が不規則だったり夜の仕事をしているメンバーも居るので今のメンバーの眠気は

バラバラであると言っても過言では無い。

そんなこんなで結構な時間は掛かったが、まずは王都を通り過ぎてそのまま森の中へと入る。

地図で言えばシュア王国に1番近い、左下の出っ張りになっている場所だった。

「自然の中にこの世界で降り立ったのって初めてかな?」

「そう……だな」

ハールの問い掛けにアレイレルが答えつつ、いよいよヴィーンラディの森の中にあると言うアサドールの別荘に行く事に。


だがここでアサドールから思いもよらない一言が6人にもたらされる。

『1つ頼みがある』

「何だい?」

『せっかく異世界人って言うあんた等の様な存在に出会う事が出来たんだ。ここから先は

徒歩になるから、良かったらあんた達の事を話して貰いながら進みたいんだけど良いかな』

「ええっ、俺達の事をか?」

普段冷静沈着なアレイレルも若干ビックリだ。

『駄目か?』

「いや別に駄目って事は無いけど……ここじゃなくて、疲れているから遺跡に行ってからにして

貰えないか? そこで休みながらであれば話しても良いぞ」

『あー……分かった』

流斗がそう言うとアサドールはそれもそうかと話す場所を変える事を承諾して、6人の異世界人を

まるで旅行の添乗員の様に先導しながら森の中を歩いて行くのであった。


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