Run to the Another World100話


そうなるとクラデルは突きを外してしまい、勢い付いて令次に近づく事になる。令次の目の前には

ハルバードを握るクラデルの両手があったので、そのクラデルの両腕を掴んでさっきの足の時と同じ様にジャンプ。

そのまま背中から地面に落ちる格好になりつつ、クラデルの顔面目掛けて右足の甲を全力でヒットさせた。

「ごおあっ!!」

しかもそれだけでは終わらず、背中から地面に倒れた令次はブレイクダンスの様に身体を回転させて、

同じく地面に背中から倒れ込んで起き上がりかけたクラデルの顔面に向かって右足を続けてヒットさせる。

「うぐ!?」

この連続攻撃にはクラデルもたまらず倒れ込み悶え苦しむ。頭は人間の急所の1つでもあるので、

そこに何度も攻撃を入れられたらたまった物では無い。


続いて今度は軍服のエルガーへの対処だ。立ち直って来たエルガーはロングソードを振るうが、

それを令次は屈んで回避。そこから立ち上がって立ち向かわずに、体勢を低くしたまま足と腕だけで

カポエイラの低い体勢からのキックを繰り出す時の様に動き回ってエルガーを翻弄。

ロングソードを低い位置に対してなかなか振るえないエルガーの右足を蹴りつけ、

エルガーが怯んだ所を狙って足を使ってジャンプして胸に両足でキックを入れる。

「ぐあ!」

令次は背中から地面に受け身を取って着地し、エルガーは後ろによろける。受け身のおかげで

素早く体勢を立て直した令次は、よろけて体勢を立て直しきれていないエルガーの腰に抱きついて、

そこから身体を反転させつつ上に向かって足を思いっ切り振り上げる。その攻撃は先程のクラデルへの

攻撃と同じく、しかし足は逆の左足の甲をエルガーの顔面にヒットさせる形になった。

「ぐお!」


しかもその左足を当てた時に、右足の膝も一緒にエルガーの胸に当たってしまう結果となり

結果的にエルガーは後ろの壁に背中から叩きつけられて息が苦しくなる。

「うぐ……」

チャンスとばかりに一気に令次は立ち上がり、そこからバック宙しながらのキックを繰り出して

エルガーの頭目掛けて右の膝をぶち当てる。

「がっ……」

エルガーはうめき声を漏らして、地面にずるりと崩れて倒れ込んだ。


「ぐ、ぐぐ……」

もう1人の将軍であるクラデルが起き上がって来てハルバードを振るうが、令次はそれを避けつつ

開いているドアにぶら下がり、そこから足を突き出してクラデルの顔面に足をヒットさせる。

そこから着地して今度は令次がガンガン攻めるが、クラデルも将軍として戦場や鍛錬で鍛えて来た

反射神経を駆使して避けて行く。しかし令次はただ蹴り続けるだけでは勝ち目が無いと悟り、

今度は前方に回転してクラデルの両肩にそれぞれの足を乗せ、その足を使って自分の身体を捻って

クラデルの身体も捻って倒す。頭は人体で重いパーツの1つなので、頭から倒すのは割りと簡単なのだ。

そして地面に転がったクラデルはすぐに立ち直るが、それを令次は見越してジャンプし、今度は宙返りからの

左の膝をクラデルの頭に叩き落とした。

「あがっ……」

そのままクラデルは地面に倒れこみ気絶。令次は何とか双璧の将軍に勝つ事に成功したが、後はここから

どうやって脱出するかが問題であった。


このまま城の中に飛び込んで行くのもリスクが高いし、かと言って窓から飛び降りる事の出来る高さでは無い。

こうなったら騎士団員達と戦うのを覚悟で城の中に行くしか無い、と令次が気合いを入れて歩き出そうとした

その時、バサバサと何かが羽ばたく様な音が窓の外から聞こえて来た。

「ん?」

令次が窓の外を見てみると、視線の先にはさっきその背中から落とされてしまったシュヴィリスの姿があった。

「おーい、おおーい!! 俺はここですよーーー!!」

大声を振り絞って令次が叫ぶと、シュヴィリスはこちらに気が付いてやって来た。

背中には明と岸とハリドに加えて弘樹と真由美も乗っている。

「令次!」

「おい、飛び乗れ!!」

令次は真由美のその声に、窓枠を使ってジャンプしてドラゴンの背中へ飛び乗る。

「何があったんだ?」

「この国の将軍に危うく捕まりそうになりましたが、何とか倒しました。でもこの城にはもう居られません。早く逃げましょう!!」

「将軍に!? そりゃすげぇな!」


まさかの令次の大活躍に驚きを隠せない弘樹と真由美だが、ふと令次が重要な事を思い出す。

「そう言えば……シュヴィリスさんは俺達を裏切った訳じゃ無かったんですか?」

その問い掛けに、心底不思議そうにシュヴィリスが返事をする。

『へっ? 僕が裏切る? 何で君達を裏切る必要があるの? そもそも何でここに居たの?』

「いや……それが……」

令次達6人が今までの事を話すと、シュヴィリスはやっぱり困った様な態度だ。

『うーん、僕は本当に画材を買いに行ってただけだったし……その茶髪の男の事は知らないけど、

君達を探してこの城に僕が辿り着いた時はかなりの騒ぎになっていたよ。もしかするとその

黒い髪の男とその茶髪の男が騒ぎを引き起こしたのかも』

事情がまるで飲み込めないがこれでどうやら一件落着の様で、青いドラゴンは6人を乗せて大空へと

飛び立ってヴィルトディン王国に別れを告げるのであった。



Run to the Another World ヴィルトディン王国編 完


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