Run to the Another World第3部プロローグ2


明け方、ヘルヴァナールの集会場においてはこのヘルヴァナールの各国の君主それぞれが

一同に集まって会議が開かれる事が決定していた。各国のスケジュールの関係上で

集まる事が出来るのはこうした明け方や夜遅くになる事が多い。出席するのは各国の

国王と宰相、また護衛として騎士団長と突発的な病気や怪我の為に魔導師が1名ずつ同行する。

「では、ヘルヴァナールの世界会議をこれより開始致します。今回の議題は異世界人の事に

ついての報告、そしてドラゴンと各国が関わっている遺跡の事についてです」

司会進行も勤めるバーレン皇国宰相のロナが、手元の紙の資料を見ながらテーブルについている

それぞれの国王に宣言する。ちなみに宰相と魔導師と騎士団長はそれぞれの国王の椅子のすぐ後ろに

控えており、何時でも武器や魔導を使える用意が出来ている。


「まずドラゴンの事についてだが、これは我がファルスにおいては白いドラゴンと灰色のドラゴンの

姿が確認されている。謎の集団に襲われたあの時に、白と灰色のドラゴンが異世界人達を乗せて

それぞれ飛び去って行くのが目撃されている」

ファルスのセヴィストが自信たっぷりにそう証言すると、今度はアーエリヴァのシークエルがドラゴンの事について話し出す。

「ドラゴンの事はこちらでも幾つか目撃証言が民から出ているのだが、行き先については不気味な程

目撃証言が出ていない。普段生息しているドラゴンとは一回り程サイズが大きいドラゴンを見たと言う事については

民が教えてくれているのだが、そのドラゴンの行き先を見た者が居ないのだ」


シークエルのその言葉でシーンと一同が静まり返る。

「異世界人達に直接出会った余の国からしてみれば、そのドラゴンは異世界人達に懐いていたみたいだと言う

報告を部下から受けている。そうだろう、エルガー?」

自分の背後にいるエルガーにヴィルトディンのリルザがそう問いかけてみると、明瞭な声でエルガーもそれに答える。

「はっ! 青いドラゴンは異世界人には全く手を出す様な事はせず、逆に私達には牙を剥いて異世界人と

共に飛び去って行きました!」

「ふぅむ、そうなればドラゴンは異世界人と繋がっていると言う可能性が強いと言う事になりそうだな」

ラーフィティアのカルヴァルが顎に手を当てて考える。

「俺の国でもドラゴンに関する文献が何とか生き残ってはいるが、その文献が示すに伝説のドラゴンは人語を

理解出来るらしいからな。異世界人と言うイレギュラーな者同士、会話が出来ると言う事も有り得なくは無さそうだ」


そのカルヴァルの意見に、今度はシュアのレフナスが答える。

「もし繋がりが出来たとして、あの人達は一体何をするつもりなのでしょう? 武具を届けろと言う事、

それからそれぞれがドラゴンに会いに行くと言う事以外にも何か目的がその異世界人達にあったと

言う事になる訳ですよね。そうで無ければこのヘルヴァナールの全ての国で異世界人達とドラゴンが目撃されている

理由が見つからない様な気がします」

レフナスがそう言うと、ウンウンとうなずいたイディリークのリュシュターが同意した。

「ですね。私のイディリークでも城に潜入されましたから、そこまですると言う事はそれだけの目的がその異世界人達に

あると言う推測は容易につきます。ローレン将軍、足取りは依然掴めてはいないと言う事ですね?」

「はっ、申し訳ございません。行き先については未だに……」

イディリーク皇帝の後ろに控えているローレンが申し訳無さそうに言葉を濁す。

「とにかく私達の国全てでこうして異世界人達に騒ぎを起こされている訳だから、何が何でもヘルヴァナールの全国家の

威信をかけて異世界人達を捕らえるぞ。この会議を私達がしている今、奴等が何処で何をしているのかも気になるからな」

ヴィーンラディのエルシュリーが苦々しげに呟きつつ、ぎりっと歯軋りをする。彼の国でも、遠征から帰還する途中の

騎士団員達が異世界人達に倒されると言う騒ぎを起こされたばかりであったから、面倒な事になった物だと言う

思いがエルシュリーの頭の中を駆け巡る。


だがその時、エスヴェテレスのディレーディの耳が何かをキャッチ。

「ん? 足音が聞こえないか?」

「え? ……あ、本当ですね」

後ろに控えているザドールも主君と同じく足音を聞いている。

「我達の他に誰かが居ると言う事になるのか?」

もしそうだとしたら不法侵入されたと言う事になるので、誰かがここは外の様子を窺って来る事にした。

「だったらティレフに行かせる。おい、頼むぞ」

「はっ!」

ディレーディと同じく出入り口から近い場所に座っていたシェリスが、ザドールと同じく出入り口に近い

場所に立っているティレフに命じて彼を足音の確認に行かせる事にした。

このまま足音の主を放って置くと言うのも何だか心の中にモヤモヤが残ってしまう形になり、不安

になってしまうのは一同皆が同じだ。しかしこの後、この命令がとんでもない事態を巻き起こしてしまう!!


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