Run to the Another World第3部プロローグ3


(うあ……腹が痛い……)

空がもう少しで明るくなり切る頃、寝静まっていた筈の周二が腹痛を感じて起きて来た。

目前に迫っている未踏の地への緊張感からこの腹痛は来ているのであろうか、と

考えながらトイレへと向かう。だが、そのトイレの位置が分からず集会場の中をフラフラしていた。

(地下にトイレは無かったから……1階か、2階か……?)

しかし1階はエントランスと応接室と休憩所と小さな鍛錬場しか無かったので、だとすれば2階かなと

周二は階段を上がって2階を今こうして歩き回っているのだ。だけどトイレが見つかりそうに無いので

どうしようと思っていた時だった。

(俺達ここ来るの初めてだからな……しかし広いな……あれ?)

目の前の通路の先のドアから、うっすらと光が漏れているのに気がつく。

(誰か居るのか?)

少し緊張感が増すが、誰か居るのであれば正体を突き止めて置くべきだろうと思いつつ

その方向へ足を進める周二。しかし足音をなるべく殺しながら近づいた、その瞬間だった!!


ガチャ、とその部屋のドアが開いて中から1人の男が姿を現した。

「……」

「……」

「……え?」

「……ま、まさか貴方は!!」

その男に周二は見覚えは無かったが、どうやら自分達のこの世界での体質で正体がばれてしまった様だ。

「な、何だよあんた……」

しかし周二の問いかけに答える前に、ティレフは部屋の中に向かって叫ぶ。

「い、異世界人です!! 異世界人がここに!!」


その叫び声と同時に部屋の中が騒がしくなるのを見て、周二は腹の痛みが即座に頭から吹き飛びつつ

駆け出す。目指すは地下の他の皆が寝ている大部屋だ。そこに行ってこの場所に居たら捕まってしまうと

言う事を伝えに行かなければならない。その為にも周二は後ろを振り返らずに走る。

しかし、大柄な身体を持つ周二は浩夜や陽介と比べるとどうしても走るスピードだけは置いて行かれ気味だ。

だがそれも、後ろから追いかけて来る連中と比べれば若干自分の方が速い。何故なら後ろの連中はその

殆んどが武器を持っている為にスピードを落とす原因になるし、ティレフが中の連中を呼んでいる時には

もう既に周二は走り出していたので40メートル位のアドバンテージがある。


なので周二は追いつかれる事無くまずエントランスの階段の所迄来て、そこで階段を丁寧に下りずに一気に

2階から1階へジャンプしてショートカット。流石に地下に行くには階段をしっかり下りなければ行けなかったが、

それでもそのショートカットでまたアドバンテージを稼ぐ事が出来て地下の大部屋に辿り着く事が出来た。

「おい!! 皆起きろ!! 早くっ!!」

「うー……ん、何だぁ?」

「おい……まだ朝早いだろうよ……」

眠い目をこすったり、あくびをしながら35人と人間の姿のドラゴンがタイムラグはあれど次々に目を覚まして行く。

「周二……? 何だよぉ〜?」

「やばいぞ、それぞれの国の奴等がここに居る!」

「……え?」

眠さで頭がボーっとして、その周二の言っている事がなかなか理解出来ない淳。

「誰だっけ……それ……」

「良いから起きろ!! ここに奴等が……」


周二がそこ迄言い掛けた時、大部屋の入り口のドアが大きな音を立ててバンッと荒々しく開かれた。

「何だ、御前達はこんな所に居たのか。探す手間が省けたぜ」

「……はっ!?」

シェリスの発言に頭が覚醒したのは真由美だった。

「まさかこの地下に居るとはね。気がつきませんでしたよ」

少し溜め息をつきながらレフナスも言う。

「そのままそこで全員動くな!! 御前達を全員逮捕する!!」

そう大声でセヴィストが宣言し、その声で他のメンバーも一気に頭が冴える。


「えっ、何で貴方達がここに居るのよ!?」

「あれ、そう言えばここって集会場って話だった様な……」

「て事は、今日ここで集会があったって事かよ!?」

驚く洋子の横でバラリーが思い出した様にそう呟くと、それを聞いた大塚がまさか……と言う顔で叫んだ。

「残念だったな、そのまさかだ。そして余達にとってはとても都合が良い。御前達の中の5人には余の国で

たっぷりと暴れて貰ったからな。覚悟しろ!!」

リルザがふんと鼻を鳴らして声高に宣言する。


だが、その声に答えたのはサエリクスだった。

「おっと、何か忘れてないか? 俺達の人数の方が圧倒的に多いんだ。つまり俺達が逃げられる可能性もまだ……」

しかしそこまで言い掛けたその声をエルシュリーが遮った。

「御前達こそ勘違いしている様だから教えてやろう。この集会場には各国の王城に転送装置が直通で

通っているんだ。つまり御前達に逃げ場は無い」

「あっ……」

そう真顔で言われ、サエリクスは愕然とした表情になる。

「さぁ全員立て。少しでも抵抗しようとすれば手荒な真似をしてでも連れて行ってやる。それが嫌ならば抵抗しない事だな。

それに今各国に応援部隊を呼びに行っている所だから、もう御前達にはこの場で逃走劇を終えるしか選択肢が無いんだぞ?」

勝ち誇った表情で言うカルヴァルだったが、この後に意外な出来事が巻き起こる事になるのであった!!


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