Run to the Another World第3部プロローグ4


地下の大部屋から集会場のエントランスに連れて来られた35人とドラゴン達だったが、

そんな一同にあの謎の声が再び声を掛けて来るのであった。

『大変な事になっている様だな』

「な、何者だっ!?」

その突然聞こえて来た声に、ディレーディを始め思わず身構えるヘルヴァナールの各国の

メンバーであったが、そこにハリドの声が掛かる。

「この声が俺達が言っているその謎の声だ。俺達も詳しい事は分からないけど、この声のせいで

俺達はこの世界に来る事になったんだ」


そしてそのハリドの声に同調する様に声も続ける。

『そうだ。余が今ここに居るその異世界人達を呼んだのだ。その異世界人達で無ければ解決

出来ない事がこの世界にはあるのだからな』

「如何言う意味だ?」

問い掛けたシークエルにこう声は返す。

『異世界人の持つ特殊な体質、それがこの世界に取り巻いている闇の勢力を排除する為に必要な物だ』

「この方達が……ですか?」

リュシュターも困惑の色を隠す事が出来ない。


『そうだ。この世界の人間には絶対に出来ないが、この異世界人達の体質を利用すれば余を

救い出す事が出来る。だからこそ御前達の国の遺跡……ここに居るドラゴン達の別荘に保管されている

秘宝を集めて貰い、更にファルスとバーレンとシュアには武具を運んで貰ってその武具を狙う奴等をあぶり出したのだ。

そしてそいつ等が今、この異世界人達がこれから向かう場所のゼッザオに集結している』

「ゼッザオ?」

初めて聞く地名にアイトエルが疑問を投げかける。


それは異世界人だけでは無く、どうやらヘルヴァナール人も初耳の様だ。

「聞いた事の無い名前ですね」

ロナがそう呟くと、それに声は反応を見せた。

『そうだが、御前達は存在だけは知っている筈だ。あの世界地図の中の、シュアとファルスとアーエリヴァと

ヴィーンラディに面している海の中央に位置している、霧の掛かった大きな島。それがゼッザオと言う名前の『国』だ』

「国だって?」

アーエリヴァのエンデスがまさかと言う表情をして問いつめると、衝撃的な事を声は次の瞬間言い出すのであった。


『その国は……元々は我等竜族の国だったのだ』

「えっ?」

きょとんとするヴィーンラディのレラヴィンだったが、声は構わず続ける。

『その後ろに居るドラゴン達も、元々は全員がゼッザオの生まれでな。しかしゼッザオには大昔……具体的には

ヘルヴァナールの他の国が出来る前に霧が掛かってしまい、ゼッザオと言う国自体が認識される前にヘルヴァナールの中で

隔離された存在になって行った。そしてヘルヴァナールの他の国とはまた違った文明が確立されて行ったのだ』

「違う文明ですか? 凄く興味深いですねぇ〜!」

ラーフィティアのジェバーはいつものテンションでそう楽しそうに言うが、声はそのテンションに惑わされず冷静に言葉を続ける。

『ただ……その周りにある霧が魔導の防壁と凄く似ているのでな。御前達ヘルヴァナール人では魔力が仇となってその霧を

超える事は出来ない。だがそこに居る異世界人達であれば魔力が無いから魔導の類に効果は無い。だから、その霧を

超えてゼッザオに渡って来る事が出来る……と思っていたが、ここからゼッザオに行くだけならそれをしなくても良くなったのだ』

「は?」


話が変わってんじゃねーか? と思うサエリクスに、納得の行く答えが声から告げられる事になる。

『こちらに捕らわれている間に、余はひそかに魔力を溜めていた。余は地下の隠し部屋にある転送装置の準備を

すると言った筈だ。その転送装置を一時的にこちらに繋げるから、それなら霧を超える事も出来る』

「え? じゃあ後はこっちの国の人に任せて俺等は……」

が、そこまで言いかけた孝司に声が咎める。

『おい待て早とちりするな。まだ余の話は終わっていない。御前達異世界人の力が本当に必要なのはその先だ。

そのゼッザオには城がある。帰る時に転送装置が動いているかどうかが分からないから、もし転送装置が消えてしまった

場合は霧を晴らして帰らなければなるまい。その城の何処かにその霧の封印を解除する為のスイッチがある筈だ。

その時に魔力を持たない御前達なら霧を越えて戻る事が出来る。だからこそ、御前達にはまだ付き合って貰うぞ』


「結局俺達の力が必要になると言う事なんですね……」

はぁ、と息を吐いて令次が肩を落とす。

「だがこいつ等には私達の国で犯罪を犯された。その事についてはどうなる?」

ラーフィティアのカルヴァルが問いかけると、声は意外な事を言い出した。

『うむ、その後の事については任せるが……余も元の世界に帰すと約束をした訳だしな。その事については

また後で考える様にしよう』

既にもう諦めた表情で、今度はハールが声に向かって問い掛ける。

「じゃあとにかく、まずは僕達がそのゼッザオって国に行くって訳だね?」

『そうだ。さぁ、転送装置の準備が集会場の玄関前に出来ている。各国軍の準備が整ったらそれを使って

ゼッザオに来てくれ。それでは後は頼むぞ』

その言葉を最後に声は消えてしまい、集会場には混乱する一同だけが残された。


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