Run to the Another World第3部プロローグ5


「えーっと、どうします?」

淳が冷や汗をかきつつ周りの人間に問い掛けると、エスヴェテレスのヴァンイストがそれにこう答えた。

「まずは御前達の問題を解決するのが先らしいな。ただしその後に、ここでこちらの尋問に付き合って貰うのは決定事項だ」

そうなると、どうやらこの事件が終わった後に元の地球に帰る……と言う事はそうそう簡単に出来ないらしい。

「なら、まずはこちらも準備が必要ですね。私達は軍の準備を整えなければ行けません。貴方達には逃げない様に各国の

騎士団員達をこれから連れて来ますから、よろしくお願いします」

ファルスのカルソンがそう言って、見張りとしてシャラードに残る様に指示を出してからルザロやセヴィストと共に行動を開始する。

やはり軍を整えるとなれば時間が掛かる様だ。


「こちらでも準備が必要だ。だが時間が掛かる。何とか3時間で準備をさせる様にするからそれまで待って欲しい。

人選を進めなければいけないからな。それじゃあこちらも失礼させて貰う」

シュアのアルバスも同じく準備の為にグラカスを残し、レフナスと共に転送装置を使って自国へとまずは戻って行った。

出撃準備はかなり大掛かりな物になりそうである。

「バーレンも部隊の編成を致します。ここにはロオン隊長とティレフ団長を残して行きますので、何かあればこの2人にお申し付け下さい」

ロナも同じくシェリスと共にバーレンへと戻る。実際、彼の場合は宰相としてだけでは無く戦争の時には軍師として活動していた

実績もあるので、その立場に再び立つ時がやって来たと言う事になる。そうなれば彼が自国に戻るのは当たり前の事なのだ。


「結構大変な事になったな……」

「でも、俺達が元の世界に戻れるかどうかの瀬戸際だからな。だからこそ最後まで気を抜かずにそのゼッザオって所に

乗り込むしか無いだろうよ」

岸のぼやきに明も答えるが、和人がそれにこう続ける。

「逆に言えば俺達は来る所迄来たって事だろ。自分達の世界に戻る為のこの短い旅が、何時の間にか世界中を

巻き込む大きな騒動に迄発展していたと言う事になる訳だ。これってRPGだと良くある展開だからな。余り驚かない」


確かに、自分達が好きなRPGの世界であればこうして最初に旅に出た主人公が、段々と世界を又に欠ける

大きな陰謀に巻き込まれると言う事は珍しくも無いシナリオだ。自分達が経験して来たそう言うシナリオで違う所と言えば、

まずは最初から全てのメンバーが揃っており、一旦バラバラになる事。そして全てのメンバーの人数が30人以上と非常に

数が多い事の2つになるだろう。それぞれのドラゴンの波動によって、アクセサリーを回収した6カ国では5人ずつで各国に

分担した事もあった。だがここまでパーティメンバーの数が多いとなれば、必然的に誰が主人公なのかが全く分からない状況だ。

「主人公って……俺達の中に居るのか?」

「いや、居ないと思う」

「そうですね。群像劇とでも言いますか……誰が主人公と言うのが無い物語ですよね。本にするとかなら」

その事について考えていた淳、孝司、令次の3人の意見はそうして纏まった。主人公が居ないのなら、全員で平等に一致

団結してゼッザオに乗り込むだけだ。ここに居る全員が男、女、年の差、武術の経験年数等全てが関係無しで戦闘要員になるらしいからだ。


と言う訳でその最後の戦いに入る前に、この集会場にあると言う小さな鍛錬場を使用して身体をほぐしたり、スパーリングをさせて貰う事に。

何も準備運動無しに全力疾走をすれば怪我をしてしまう確率が高くなるのと同じ様に、時間があるのであれば身体をほぐしておいた方が

怪我をしたり勝負の時に身体が動かなくて殺されると言う可能性が低くなるのでそこは念入りにしておこうと言う事になった。

180度に足を開脚したり、軽くミット打ちの要領でパンチやキックを一方が繰り出しつつもう一方が防御をしたり、2対1の状況も

考えて同時に攻撃をして来た時の対処法等も考えておく。

更にはヘルヴァナール人達にも協力して貰って、武器による攻撃を避けたり防御したりと言う特訓も少しだけして貰った。

槍使いのシャラードや魔法剣士のロオン等が居るので練習相手には事欠かない。何よりも相手が本職の軍人ばかりなので、

気合の入った練習になると言うのが異世界人達にとっては嬉しい所である。

そうして3時間の時間を異世界人達と残ったヘルヴァナール人が潰しておき、軍の準備が整った所でいよいよゼッザオに向けて

出発する事になるのであった。ちなみに隠し部屋の転送装置と言うのは、今まで自分達が寝ていたあの大部屋の壁の一部にくぼみが

巧妙に隠されており、そのくぼみに手をかけて引っ張る事で現れた部屋にある巨大な転送装置だった。

「最初は誰から行く?」

「異世界人達が先に行くべきだと思うが、御前達はそれで良いか?」

カルヴァルの意見に誰も異を唱えないので、それでゼッザオに一同が乗り込む事に決定する。

いよいよ、この世界の旅のラストバトルの幕が上がろうとしていた。


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