Run to the Another World第3部プロローグ1
アクセサリーを回収したそれぞれのチームは時間差はあったものの、再びあの海の真ん中に
ある小さな島へと35人とドラゴン達がやって来た。ちなみに
飛竜達の姿は見当たらない。そしてエスティナと出会ったのも思い返してみればここだった。エスティナは
ラーフィティアであの戦いからレーシングプロジェクトのメンバーが逃がした訳だが。
「またここに戻って来たのね」
「そうだな……それよりも俺達は疲れたよ」
由佳に答えを返したハリドが、ふあーと眠そうにあくびをして伸びをする。
「集会場……と言う事はもしかして、ここにパッと来られる様に転送装置とかもあるかもしれないな」
「それはあるかもしれないわね」
橋本の予想に恵も同意する。
「とにかく、俺達が何故ここに呼ばれたのかが分からないからあの変な声の指示を待つか?」
「そうした方が良さそうだな」
明の意見に藤尾が同意し、35人とドラゴンは謎の声が聞こえて来るのを待つ事にした……その時であった。
『良くやってくれた、御前達の働きは予想以上だ』
「回収はし終わったぞ!」
ジェイノリーがそう言いつつアクセサリーのブローチを天に掲げ、他のメンバーもそれぞれバングルやベルト等を掲げて行く。
が、謎の声はまたとんでもない事を言い出した。
『うむ、確かに。だが御前達には最後の働きをして貰わねばならない』
「まだ何かあるのかよ!?」
心底驚いた声色でサエリクスが叫び、他のメンバー達にも動揺が走る。
『そうだ、これが余からの最後の願いだ。御前達にはこの集会場にある転送装置でとある場所に行って貰う。
その転送装置は地下の隠し部屋にあるから、それで余に会いに来て貰いたい』
「会いに行く……?」
まさかこの声の主に会いに行くと言う事なのか、とバラリーも戸惑い気味だ。
『そう言う事だ。しかし準備には時間が明日位まで掛かるし、御前達も疲れているだろうからな。
今日はこの場所にある集会場でたっぷりと身体を休めるんだ』
そこで一旦言葉を切り、謎の声はこう続ける。
『……先に言っておくが、御前達が明日向かう場所はとてつも無く危険な場所だ。
戦いは絶対に避けられない。御前達がもし、そのアクセサリーを狙う奴等にもう何処かで出会っているのなら尚更だ』
「それって、そいつ等が関係して来るって事か? その行く場所で」
淳の問い掛けに謎の声は迷い無くはっきりと肯定する。
『そうだ。余はその更に奥に捕らわれている。この声も魔力を使って話しているがもう余り時間が無い。今から残りの
魔力を使って転送装置の準備をする。余の所に来る為には、その場所にある大きな石碑の前にアクセサリーを置け。
それからあの武具も全てだ。そうすれば余に会いに来る事が出来る筈だ』
物凄い事を言われているが、ここで最終確認をハリドがする。
「それ等が全て終わって、あんたに会えたら俺達は地球に帰れるんだよな?」
『ああ。3度目の正直で御前達を地球に帰してやる。余も世話になりっ放しだったから
本当は何か礼をしたいのだが、あいにく今は無理だ。それでは余は転送装置の準備に入る。
御前達は集会場の地下にある大部屋に行くと良い。食べ物も用意しておいたし、寝る場所や寝具は
元から泊りがけになった時の為に人間達に用意されているみたいだ。余は少しだけだが透視能力もあるからな。
それでは宜しく頼むぞ異世界人達。そしてドラゴンとこの世界の人間よ……』
その言葉を最後に、声は全く聞こえなくなった。
「本当に帰れるのかな……俺達、また声に利用されるだけじゃ無いのか?」
シーンと場が静まり返る中、弘樹がポツリと呟く。
「俺達はとんでもない事に巻き込まれてしまった様だ。それがこの次の戦いで
終わるならば何としても勝ち抜いて、35人全員で地球に帰るだけだ」
岩村がクールにそう言うが、彼も内心で焦っているのは同じであった。
「とにかく、まずは身体を休めましょう。戦いなら私達もずぶの素人じゃないわ。
あの声の言う通り、今はしっかり休むべきだと思うわよ」
洋子の言い分ももっともだと思い、他の34人もドラゴンも今日は休む事にする。
地下室は確かに広かった。まるで旅館の宴会場の様である。違う所と言えば床が
畳では無い所か。そしてマットレスや枕が大量に用意されており、それを使って今日は眠る事にした。
「明日か……緊張するぜ」
率直な意見を兼山が出すと、それに藤尾も同意する。
「俺も。RPGで言えばいよいよクライマックスって感じだろう。でも俺等だけじゃない、他の奴等も
緊張しているのは同じ筈さ。そうだろう、連?」
話を振られた連もやはり同じだった。
「同感。今の俺は心臓の鼓動が凄く速いからな。空手の試合やレース以外で緊張する事なんて余り
無かったから、それだけの修羅場になりそうって言う事なんだろうよ」
この緊張感を残したまま、3人を始めとした一同は次々に食事の後に眠りについて行くのであった。
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