Run to the Another Worldプロローグ2
35人が目を覚ましたのは日が差し込むどこかの部屋であった。
それぞれが床で寝ており、メンバーの位置もバラバラである。
部屋の広さは35人がギリギリ入る位だ。
最初に目を覚ましたのは令次。
「ん……はっ!?」
夢でも見てたのか? と一瞬思ったが、冷静になって辺りを見渡すと
全く見覚えの無い部屋に居る事に気がついた。
(何だここ? と、とにかく皆さんを起こさなきゃな)
1人ずつ胸を叩いたり、声をかけたりして起こして行く令次。
「ちょっとちょっと皆さん、起きて下さい! 岸さん、連さん、明さん、兼山さん、和人さん、藤尾さん、ほら皆起きて!!」
令次の呼びかけに次々とメンバー達が目を覚まして行く。
「んあ〜?」
「あれ、ん、どうなったんだ……?」
「ふあ……寝てたかな」
「あれ? あ、朝だわ!!」
夜が明けている事に気がついた洋子が声を上げる。
「あれ、俺達確か……東京タワー近くの料理屋に居たんじゃなかったっけ?」
「そ、そうだ! で、変な声が聞こえて光に……」
孝司と淳がそれぞれ前の状況を思い出して行く。
とにかくここに居ても始まらないので、入口と思わしき1枚のドアからぞろぞろと外に出る。
そのドアを出ると、地面が砂利になっている庭らしき所に出るのであった。
外は快晴の空だったが、何だか空気が違う様に感じる。
「何だよ、ここ……」
橋本が呆然とした表情で辺りを見渡す。
「あの声の奴が原因だと思うがな……どう考えても」
そんな橋本に岩村がそう漏らした。
「だ、だったらさ、そいつ探そうぜ?」
「どうやって?」
グレイルの提案に恵が冷静に問い返す。確かに誰に呼ばれていたのか、誰が
こんな事をしたのかが皆目見当もつかない以上、どうするかと言う事がまず先決だ。
そして、この状況に対して何となく想像がついているメンバーが6人。
最初にその口を開いたのは藤尾であった。
「異世界トリップ……」
「まさかとは思うけど、こんな怪奇現象なんてそれ位しか思い浮かばないんだよなぁ……」
藤尾の言葉に続く様に岸もそう漏らした。
その2人の言葉に、他のメンバー全員が目を向けた。
耐え切れなくなった周二がその2人に声をかける。
「おい、どう言う事だ?」
「余り現実味の無い事は言いたく無いけど、でも、こう言う展開って良くあるんだよ、
ファンタジー物のゲームとか小説とかでは。こうして現実に起こるとは考え難いけど」
答えたのは藤尾でも岸でも無く、1つの結論に達していた6人の内の兼山だった。
「何だよそれ!? 説明してくれよ!」
「俺等に言われたって困る。少なくとも、この状況を引き起こした張本人が居ないと」
声を荒げた弘樹に、6人の内の連が冷静に切り返した。
「その異世界トリップって奴だとしたら、俺達はとんでもない事になってるって事か?」
「ああ。俺達もまさかとは思うんだけどな。空気が何だか変な気がするし。何かピリッと
してる様な気がするんだ」
流斗の疑問に、彼と確執のある和人も深刻な表情で答える。今は争っている場合では無い。
「それに……嫌な気配がする。とてつもなく強大な力と言うか」
「それは感じるわね」
明の恐怖を含んだ声に和美も肯定の言葉を吐き出した。
そして次の瞬間、その嫌な気配の主が現われた。またもや声だけだったが。
『突然の事で驚いただろうが、御前達に任務を課したい』
「だ、誰だ!」
突然聞こえて来た声に哲が驚きの声を上げるが、声の主は構わず続ける。
『まずはこの3つの物を、それぞれの指定した場所へ届けてくれ』
その言葉と共に小さな光が3つ現われ、その光が収まった後に残された物は
黒の盾、同じく黒の剣、そして黒に染まっている甲冑だった。
「な、何よこれ……私達に届けろって?」
由佳がそれを見て思わず疑問の声を漏らす。
『そうだ。この3つの武具は今狙われているのでな。次の指示はそれから出す』
「ちょ、ちょっと待てよ。余りにも突発的だな!」
声の一方的な提案に博人が動揺を隠し切れない。
『これ等はとても重要な物なのでな。恐らく狙われる可能性が高い。
だがその狙っている奴等を上手くかわして、それぞれのドラゴン達の元へ届けて欲しい』
「はっ? ど、ドラゴンだ?」
栗山の疑問に声の主は当たり前の様に答える。
『そう。今から行って貰う大陸にはそれぞれの方面に2体のドラゴンが居る。
そのドラゴン達の元へこの武具を届けるのだ。届けるのは各方面とも2体の内の
どっちでも良い。どっちかに届ければ協力してくれる筈だ』
「……筈だ、と言われてもな……」
心底納得出来ない表情でディールがポツリと呟いた。
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