Run to the Another Worldプロローグ


2014年9月12日。日本の東京都。

ここに日本各地からやって来た26人と、世界各国からやって来た9人が居た。一部は東京に

旅行に来たのだが、それ以外はこの東京で働いている者達ばかりだ。東京に旅行でやって来たのは

その内、ヨーロッパ各国からやって来たEU圏の人間5人。そして東京で働いているのは残りの30人である。

その35人が不思議な巡り合わせの末に、不思議でエキサイティングな体験をする事になろうとは、この時誰も知る由が無かった。



この日、30人のグループは都内の東京タワーの近くにある深夜まで営業中のとある小料理店にやって来ていた。

久々に30人全員が集まる事が出来たので、こうして料理パーティーをしているのである。

「こうして全員で集まる事が出来たのって、何年ぶりですかね?」

「そうだなぁ……もう4年ぶり位じゃないか?」

「皆ばらばらになってたしな。俺のチームも含めて」

東京都の主要高速道路である首都高速が、新しく出来る新首都高速の

開通によって、政府の主導により都内在住を始めとした走り屋達が

安全に速さを競う事が出来るサーキットとして旧首都高が生まれ変わってから

そこでは色々な走り屋達のドラマが生まれて来たのである。


その首都高サーキットで伝説となったチームとして有名なのが、総勢14人で

始まった「サーティンデビルズ」と、1年間の活動しかしていないながらも

それより前から走っていた有名な走り屋達が集まって出来た「ゾディアック」。

そして、そのサーティンデビルズとゾディアックのメンバーの一部を集めて

2006年に新しく結成された「Be Legend」の3チームだ。



そうしてこの小料理店で30人がパーティーをしていると、入り口の戸がガラガラと開いて5人の外国人が入って来た。

「何だ、今日は混んでるな」

5人組の内金髪の男が店内を見渡し思わず呟いたが、空いている席はあったのでその5人は30人の隣に座る事になった。

「隣、何なの?」

「さぁ? 何かのパーティじゃねぇか?」

「俺等には関係無いだろ。で、何頼む?」

取り合えず隣は気にしない事にして、5人は料理を注文し始める。

と言ってもこの中で日本語を喋る事が出来るのは金髪の男だけなので

英語でそれぞれ注文した物を訳して金髪の男が注文する流れであった。


そうして来た料理を5人が食べていると、段々見慣れない料理に金髪の男以外のテンションが上がる。

「これ美味いな。ハリド、何だこれは?」

「それは天ぷらだ」

「じゃあこれは?」

「寿司だよ。日本じゃ良く食べる」

だが金髪の男であるハリド以外の箸が上手く使えない4人は食べ物を掴むのにも悪戦苦闘してしまう。

そして運悪く力を入れ過ぎて、茶髪の男の手から箸が弾き飛ばされてしまった。その箸の行方は……。


「うおっ!?」

そう、隣の30人のテーブルにスポーンと飛んで行ってしまったのである。

「な、何だぁ?」

「ああ、すみません!」

ハリドが申し訳無さそうに頭を下げるが、隣のテーブルが外国人ばかりだと気が付いた30人の内1人の女が話し掛けて来た。

「いや、平気よ。……旅行?」

「ええ、まぁ。俺以外は日本は初めてだ」


なかなか流暢な日本語で応対するハリドと、その女……百瀬和美は次第に話が盛り上がって来た。

「何処から来たの?」

「俺達全員ヨーロッパから」

するとその返答に今度は黄緑の髪の男が食いついて来た。

「へぇ〜、ヨーロッパから? ドイツとか?」

「そう。俺はドイツ人だ」

「懐かしいな。俺、ドイツに居たよ!」

「私もフランスやイタリアに住んでた事あるわね」

「お、そうなのか?」

「へー、フランス来た事あるんだ?」


ドンドン話が盛り上がってきたので、テーブルをくっつけて合計でパーティは35人になった。

ヨーロッパチームのメンバーからは、30人のグループに同じ白人が居たり

英語を話せる人間が多いと言う事もあって、翌日仕事が休みの何人かに

付き添ってもらって東京観光の案内をしてもらう事になった。

しかしこの計画は料理屋がクローズしてすぐに崩れ去ってしまう事になる。



真夜中まで盛り上がった30人は現地解散と言う事で、料理屋から少し離れた所で

解散する事になった。

「それじゃ俺達はここでだな」

「明日の観光案内楽しみにしてるよ」

「ええ、それじゃ……」

そう和美が言って別れようとした、その時。


『助けてくれ……』

「え?」

「おい、誰か何か言ったか?」

突然その場に響いた声に、35人全員が辺りを見渡す。

『異世界の人間よ、余に……力を!!』

そんな叫び声が聞こえて来たかと思うと、突然強い光が35人の身体を飲み込み始める。

「わぁ、何だ!?」

「何だよこれ!!」

「うおおっ!?」

「え、え!?」

「うっわああ!」

「きゃあああ!!」

「ま、まぶしぃ!」

そうして光が収まった時には35人の姿はその場から消え去り、後に残ったのは

全く人気の無い路地裏だけであった。


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