FCOバトル・イン・ジャパン!! 8


まさかの場所からまさかの敵が現れた。

これが戦場で飛んでくるドローンだったり、的が大きな戦闘機だったりするのであればまた話が変わってくるのだが、相手は今の所これといった攻撃手段を持っていないセスナである。


「くっそー、何であんなのが!?」

「参ったな……あんなのが相手では私は手も足も出ないぞ」


高度を上げて空へと舞い上がるセスナを見て、程度の差はあれどFCOの二人は苦虫を噛み潰したような表情になる。

特にクレイグは相手が相手だけに、接近戦を挑むのは文字通りの自殺行為だし、かといってあれにしがみつくわけにもいかないので尚更であった。

真治はこういう時に銃火器があれば何とかなるかもしれないが、この日本では民間人が銃を持つことは許されていないので、クレイグ以上にどうしようもできない存在であった。

となればこの中で唯一、中距離や近距離以外での攻撃方法を持っているエレスが大活躍することになる。


「エレス、お前さんだけが頼りだ」

「頼りだって……俺任せかよぉ!?」

「俺もクレイグも何かしらの形で援護するから、あいつに雷で攻撃してくれ!!」

「くっそー、中華街の時から俺にばっかり無茶言いやがってお前らはよぉ!!」


お好み焼き屋に続いて無茶振りをされたエレスだが、確かにこの状況で自分しか遠距離攻撃の手段を持っていないので、他の二人にはサポートをしっかりしてもらうことを約束してもらってから動く。

腕を一振りすることによって、遠くに向かって雷を撃ち出すことができるのだがそのタイミングが重要なのだ。


(あんな突っ込んでくる奴に真正面とかぜってえ無理だぜ。だったら奇襲作戦っきゃねーだろーよ!!)


そこでまずは真治とクレイグの身体能力を活かして囮になってもらい、セスナを引きつけてもらう。

その囮になっている二人は、高速回転するプロペラを武器に突っ込んでくるセスナに生身で立ち向かわなければならないのは相当にキツいものがあるが、こうでもしなければセスナに勝てないのだ。


「来るぞ、伏せろ!!」

「くっ!!」


真治の合図でクレイグとともに受け身を取りつつ、セスナを避けて何とか生き延びる二人。

一方のエレスは慎重にタイミングを図りながら、その両腕に電気を溜めてチャンスをうかがう。


(あいつはただ突っ込んでくることしかできない奴だ。もし武器があったら俺はさらに厳しかったが、武器もないんじゃ俺にだって勝つチャンスがあるぜ!!)


できれば一撃必殺を狙って仕留めたいエレスは、二人の仲間たちが頑張ってくれているので行ける時に行くべきだと、倉庫の壁に張りついてチャンスをうかがっていた。

大空を舞う鉄の鳥が大きく旋回し、この赤レンガ倉庫の広場の広さを利用した突進攻撃を仕掛けるべく再び高度を下げてくる。

それを見て、エレスは一気に飛び出した!!


「お前らどけっ!! やってやるよぉ!!」

「頼むぞ!!」


二人の大男がセスナの突進ルートから早めに退避するのを横目で見ながら、エレスは顔の前で両腕をバッテン印にクロスさせてセスナを迎え撃つ。

段々とセスナの姿が大きくなってくるとともに、エレスの恐怖心も大きくなってくるが、そこを気合いと意地でねじ伏せる。


(まだだ……まだまだ……我慢……!!)


成功すればお慰み。

失敗すれば自分が肉片になってしまうこの状況で、タイミングが合った!!


「う……おらあああああっ!!」


クロスしていた腕を一気に外へと薙ぎ払ったその瞬間、雷光と天が裂ける大音量が鼓膜の捉える音という音を掻き消した。


「うおっ!?」

「くっ……!!」


眩い光が三人の視界を覆う。

その中で、エレスは視界を奪われながらも足に力を込めて全力の横っ飛びでセスナの直撃を回避する。

炎の熱さと金属が焼け焦げる臭いを感じながら目を開けてみれば、完全にコントロールを失ったセスナが操縦席からパイロットを吐き出しながら、ヨロヨロと水面に向かって落ちていく場面が見えた。


「は、はぁ……はあ……や、やったぜ……!!」

「さすがだエレス!!」

「これが能力者の力か……」


相棒として感心するクレイグ、ただの人間として感心する真治とそれぞれリアクションは違えど、自分のやり遂げたことに対して段々と実感が湧いてくるエレスに対して感謝の気持ちを抱かずにはいられなかった。

しかし、まだ事件そのものは終わっていない。


「おい、あいつ助けるぞ!!」

「お、おう!!」


投げ出されたパイロットにはまだ息があるので、三人は治療と事情聴取のためにそのパイロットの元へと駆け寄った。


To be continued...


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