FCOバトル・イン・ジャパン!! 7
「赤レンガ倉庫?」
「ああ、どうやらそこで奴らが目撃されたらしいんだが……ここから近いのか?」
「すぐそこだ」
山下埠頭と山下公園からは目と鼻の先の距離なのだが、歩いて向かうと少し距離があるのでCPV35で向かうことにする三人。
しかし、横浜の中でもかなりの有名スポットである赤レンガ倉庫を一体どうするつもりなのかと懸念する真治。
横浜赤レンガ倉庫は、横浜港にある文化・商業施設。新港埠頭建設の一環として、明治政府によって横浜税関新港埠頭(保税)倉庫として建設された。
そんな赤レンガ倉庫が今、敵の手の中に落ちてしまっていることを考えると正直言って何とも言えない気分になる真治。
だが、この任務に乗っかった以上は最後までクレイグとエレスに協力すると決めているので、自分はとにかく赤レンガ倉庫までCPV35を飛ばしてたどり着くだけだった。
「来たぞ……」
「しょーがねえなあ、やるっきゃねーよな!!」
「数で止めようという作戦かもしれんが、わざわざアメリカから私たちが来たからにはしっかりと事件を終わらせなければな」
構える三人の目の前には、またしても操られている人間たちの姿がある。
しかし、この赤レンガ倉庫では中華街や山下埠頭とは違って特に気をつけなければならないことがあった。
それはエレスだけではなく、クレイグも真治も同じく気に留めておかなければ相手にやられてしまうということでもある。
「ここは見ての通り、イベントも数多く開催されている大きな広場なんだ。それだけに遮蔽物が全くといっていいほど存在していない。だから囲まれたら俺たちアウトだ」
「そうだな……特にエレスは危ないかもな」
「わーってるよ。だったら俺だってもう少しなりふり構わずいかせてもらうぜ!!」
数多くの敵に囲まれてしまえば、それで一気に窮地に陥ってしまうのは目に見えている。
ならば囲まれない様に戦うだけだ。
なので、FCOの二人は一般人が相手とはいえここは能力を最大限まで解放して戦うしかないと決意する。
「さて。少しは痛い目を見てもらえばその目も覚めるだろう」
クレイグの能力は「肉体強化」。自らの筋力や五感などを強化するものであり、主に肉体の打撃力や防御力を高めるために使用する。
これによって数発程度の弾丸や、軽い刃物類であれば防具がなくても弾き返すほどの鋼の肉体を手に入れることができる。
また、クレイグの格闘技の流派はテコンドーやカポエイラなどの足技を主軸とし、形式より実用性を重視するため我流も混ざっているキッキング・ファイターだ。
ショートレンジならFCOで一、二位を争うほどの実力の持ち主であり、真治本人だったり、真治の所属しているチームのリーダーである渡辺亮ともなかなか良い戦いを繰り広げた経験がある。
ただし、そんな彼も多人数相手では限界があるためそこは上手く立ち回りを駆使して一人ずつ時間をかけずに撃破していく。
(クレイグは頑張ってんな。じゃあ俺は俺のやり方でやらせてもらうぜ!!)
接近戦は苦手なエレスの能力は「雷を操る」。
雷撃・落雷の発生、機械のクラッキング、金属物・電磁力の操作などが可能であり、中華街でも山下埠頭でも最弱の雷撃で敵たちを倒していたのが記憶に新しい。
身体能力は一般人よりも優れるが、かつてFCO本部で隼人と戦ったフェンケルと同じく接近戦は苦手であり、遠距離や中距離から援護するタイプのエージェントである。
だからこそ、なるべく赤レンガ倉庫の壁を背にして戦いながら周囲を見渡して、囲まれる前に雷撃で敵たちを痺れさせていく。
(この数の多さは尋常じゃないけど、一人一人は一般人だから大したことはない)
そう考えながら投げ技と関節技を駆使して切り抜けていく真治は、乱戦も混戦も遠距離も近距離も全て世界中の戦場を駆け抜けて身につけた、まさに生き抜くための戦闘術である。
その他にもメタルギアのスネークの様な潜入任務もこなしたことがあるし、敵地からの脱出経験もある。
しかし流石に、彼の闘ってきた時代ではこうした能力者たちと戦うのは滅多になかったので、襲いかかってくる人間たちの目に光がないことに恐怖感を覚えつつもこの戦場となった横浜を駆け抜ける。
そんな戦いを繰り広げながら、少しずつ赤レンガ倉庫を制圧していく三人の前に驚きの存在が現れたのはその時だった。
「……ん?」
どこかから、ブゥーン……と不思議な音が聞こえてくるのに気がついたエレス。
しかし周囲には、今し方自分が倒した一般人たちが地面でうめき声をあげている光景しか見当たらない。
能力者であっても人間なので、こういう時はなかなか上空に気が回らないもの。
そう……新たな敵は空からやってきた!!
「エレス、伏せろっ!!」
「う……おわああっ!?」
エレスの頭上に突然覆い被さる大きな影。
クレイグの叫び声に反応して咄嗟に身を屈めた彼の上スレスレを通過して行ったのは、赤い機体が特徴的な小型のセスナだった。
To be continued...