FCOバトル・イン・ジャパン!! 4
「エレス、あれだ!!」
「えっ?」
呼ばれたエレスが真治の声の方を振り向くと、そこには一般人集団の方に向かって駆け出す真治の姿が。
彼はそのまま一直線に駆け出し、敵の一人から「それ」を奪い取って攻撃を開始する。
それを見たクレイグが納得の表情を浮かべた。
「ほー、その手があったか」
「大胆なことやるねえ……」
真治は敵の一人から、どこかの消火栓に繋がっているのであろう消防団が使うようなホースを奪い取った。
物を投げてくる以外にもまさかのホースによる放水が行なわれてきていたのだが、それを見た真治はそれでやり返すことにしたのだ。
だがそれでも敵の数はなかなか減らないので、ここで真治はエレスにバトンタッチする。
「遠距離攻撃は頼むぞ!!」
「お前相当危ねえことよくできんな!? 俺は雷の使い手だぞ!! 下手すりゃ全員揃って感電だぜ!!」
「そうならないように頑張ってくれ!」
真治に相当の無茶振りをされながらも、結局エレスはそのホースを受け取って最大の水量にしてから操られている一般人に向かって放水を開始する。
ブシャーッと激しい水音を立てて、そのまま吐き出された水の太い線が敵に命中し、一人また一人とバリケードごと崩れていく。
ただし体力や筋力には他の二人と違って余り余裕も自信もないため、必死に踏ん張って攻撃しているのが実情だった。
それはクレイグも真治もわかっているので、エレスの援護射撃によって崩れた敵たちに横から回り込んで、放水を避けている敵たちを倒していく。
「よーし、これならいけるぜ二人とも!!」
「助かるぞ!!」
普段はなかなかとっつきにくい性格のエレスだが、そんな彼もこういう時には感情を表現する一面が見受けられる。
結果的にそこまでの時間をかけることもなく、山下町公園の中で待ち構えて操られた人間たちによる一斉攻撃は、三人の活躍で返り討ちにされて幕を下ろした。
「終わったか……」
「ああ。しかし私たちFCOの任務はまだ終わりではない。この人間たちを操った張本人を捜し出さなければならないんだからな」
一息ついた真治に対して、まだこれからだとクレイグは真剣な表情を崩さない。
その一方でホースの水を止めて戻ってきたエレスが、FCOの日本支部に対して報告をしていた。
だが……。
「二人とも、まずいぜ」
「どうしたんだ?」
「この事件の主犯格の行方がわからなくなっちまったらしい」
「えっ……それはアウトじゃないのか?」
まさかの報告。
その報告についてこの三人の中で最も驚きを隠せないのは真治である。
なぜなら、この三人の中で一番その能力犯罪者の近くにいたのだから、その驚きは大きくなるのは仕方がない。
「この中華街でその犯罪者は騒ぎを起こしていた。それは俺が目と耳でしっかりと知っている」
「でもさー、ここまで中華街をメチャクチャにしておいてそんなに上手く逃げおおせるもんなのかね?」
「それは容易だろうエレス。能力を使って混乱させている間にさっさと逃げてしまうのが、一番の得策だろうからな」
そう、クレイグの言う通り混乱に乗じて逃げてしまえばいい。
真治も実際に近くにはいたものの、その能力犯罪者の姿を見たわけではないし、犯人が複数なのか単体なのかもわからない状況だ。
「まずいな。そうなるとこの中華街のようなことがまた別の場所で起こる可能性があるぞ」
「ああ、この騒ぎを起こせるというのはそれだけ能力を使いこなしている……ということでもあるだろうからな」
エレスからの報告に頭を悩ませるクレイグと真治。
しかしここで悩んでも見つからないものは見つからない上に、この緊迫した空気をぶち壊す音がエレスから聞こえてきた。
「あ……」
ぐぅぅ?、と大きく腹の虫が鳴って、エレスは気まずそうな顔つきになる。
そこで真治は率直に話を振ってみる。
「腹減ったのか?」
「ああ……能力使うのは腹も減るんだよ。それに今は昼メシ時だからなおさらなんだよなあ」
能力者もメリットばかりではなく、デメリットももちろん存在している。
今はこの事件の進展もないようだし、ひとまず日本支部に連絡を取ってからこの後の行動を決める。
「腹が減っては戦はできぬ。どこかに食べに行くか」
「そーしてもらえると助かるぜ。オッサンもそれでいいか?」
「まあ……今は私たちも動きようがないからな。店選びはお前さんに任せるが、行列ができるような店は避けてくれると助かる」
もし能力犯罪者の情報が日本支部から入ってきたのに、行列に並んでいたせいで昼メシ抜きの捜査続行になってしまっては元も子もないからである。
しかし真治も真治で元々は中華料理を食べにきたので、ここはある程度クレイグとエレスの希望を聞くことにした。
To be continued...