FCOバトル・イン・ジャパン!! 3


中華街の中は、少し進んだだけで異常な事態になっていることに気がついた三人。

なぜなら、明らかにこの中華街で働いているであろう料理人姿の人間たちや、観光で来ていると思わしき大きな荷物を持っている人間たちが、うつろな目をしながらそこら中を徘徊している光景が目に入ったからだ。

それを見て、エレスが思わずポツリと一言呟く。


「バイオハザードとか、ハウスオブザデッドの世界じゃねーんだから……悪夢だぜこんなの!!」

「同感だな」


隣で真治が同調するのを横目で見ながら、クレイグは視線を中華街の奥に向かって戻した。


「ここは路地が入り組んでいて狭いから、接近戦は避けられそうにないな。となればエレスの雷で敵を一掃したいところだが……」


そう、今回の相手は能力犯罪者たちではなくて一般人なのが非常にタチの悪い話である。

これが能力犯罪者相手であれば、狭い場所に誘い込んでの接近戦で潰していくか、密集しているところに殺さない程度の雷を当てて一気に仕留めるかのシミュレーションが容易だ。

だが一般人相手に能力を使うことはなかなか許されないことなので、どうしたものかとクレイグは頭を悩ませる。

それに対して、この三人の中で唯一接近戦が苦手なエレスがこんなアイディアを出す。


「うだうだ考えたって始まんねーだろ。とにかく敵を倒すけど殺さないようにするしかねえんじゃねえの?」

「それしかないか……」


そう、相手が一般人だとはいえ今は明確に自分たちに向かってくる敵なのだから、本来であれば遠慮する必要はないはずなのだ。

そうして三人で話し合った結果、真治とクレイグで敵たちを拘束していきながら、多数の敵が出てきたら感電死しないぐらいの電撃をエレスが浴びせる。

「殲滅」ではなく「制圧」が目的となると力加減が難しいが、そこはクレイグも能力を封印し、真治は軍隊格闘術の中で投げ技と関節技を中心に戦うことにする。


「この横浜中華街は狭いから、囲まれないように常に周囲には気を配って進むぞ」

「わかった」


数々の店が立ち並び、普段は観光客や地元の人間たちでごった返しているこの場所が戦場になった今、三人はその元の姿を取り戻すべく進み出した。

その進んでくる部外者たちに気がついた「元」一般人たちは、その手に角材だの肉切り包丁だのといった、その辺りで調達できそうな物を武器として構えながら襲いかかってくる。


(まるでファイナルファイトみたいだな……)


かつてベルトスクロールアクションというゲームの概念をメジャーにした作品のことを思い出しながら、クレイグは得意の足技で一人また一人と敵を倒していく。

一方、クレイグに負けず劣らずの屈強な体格を持つ真治も今までの戦場での経験を活かして、常に周囲を警戒して自分の立ち位置を考えながら戦いを繰り広げていく。


「よっ、おっとっと……」


そして接近戦が苦手なエレスは、その二人以上に周囲を警戒しつつ最弱の電撃で敵を痺れさせ、行動不能にさせていく。

雷も使いようによっては、こうして有効な足止め用の武器になることを今までの経験で身をもって知っている上に、自分たちFCOとこれまた関わりの深い組織のことを思い出すエレス。


(バーチャコップたちから、自分たちが使っている『スタン弾』って銃弾みたいだって言われたことがあるけど、そんなもんなのかな……)


実際に敵を痺れさせて行動不能にさせているのだから、まあそうなのだろうと自分を納得させつつ進んでいくエレスだが、他の二人よりも一歩引いた位置から戦場の状況を見ているだけあってあることに気がついた。


「おい二人とも、何だか敵の数が少なくなってきてねえか?」

「そういえばそうだな」


クレイグと真治も、そう言われれば……とエレスの分析に納得する。

それもそのはずで、この狭くて入り組んでいる横浜中華街を少しずつ制圧してきているのだから敵も当然減ってきている。

だがその一方で、クレイグは妙な胸騒ぎを覚えていた。


「おかしい……」

「何がだ?」

「何だか、この中華街の広さにしては敵が少ないような気がしないか?」

「……言われてみればそうだな」


疑問を呈するクレイグに同調する真治だが、とにかく今は進むしかない。

敵が多かろうが少なかろうが、自分たちは進むことしかできないのだが、クレイグのその不安がやがて現実のものになろうとしている。

それはこの中華街の中で唯一の広場として知られている、山下町公園にたどり着いた時だった。


「……げえっ!?」

「まずい、一旦退くぞ!!」

「くっ!!」


山下町公園は春節パレードではスタートおよびゴール地点として使用される。

その広場にありとあらゆる物を集めてバリケードを組み上げ、その影や上から待ち伏せていた一般人たちが三人に向かって一斉に色々な物を投げてきた。

遠距離攻撃となるこういう攻撃には、接近戦専門ともいうべきクレイグは非常に部が悪い。

真治もそれは同じであり、となると残るは唯一遠距離にも対応できる攻撃方法を持っているエレスだけだった。


「エレス、あいつらは雷でどうにかできないか!?」

「無茶言うな!! 下手にぶちかましたら物と一緒に全員黒焦げだぜ!!」


可燃性の物も多く積まれているバリケードだけあって、雷を落としたらどうなるかはイメージがつきやすい。

それでもどうにかしてあのバリケードを崩さなければ……と考えていた時、真治がある物を見つけた。


To be continued...


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