FCOバトル・イン・ジャパン!! 2


たどり着いた横浜中華街では、すでに何人かのFCO日本支部のエージェントたちが事件解決にあたって動いているとの連絡を、クレイグとエレスが受け取っている。

しかしその現状は芳しくないようだ。


「おい、しっかりしろ!」

「くそっ、こっちの奴もダメかよ!!」


どうやらすでに息絶えている支部のエージェントたち。

その身体が横浜中華街の出入り口付近に転がっているということは、確かに本部のエージェントたちを応援に呼ばなければならないというぐらいに敵が強いのだろう。


「一体どんな敵が相手なんだ?」

「それがよー、現場のエージェントたちからは変な情報しかないって来ねえんだよな」

「変?」


変っていうのはどう変なんだ? と真治がエレスに問うと、確かにその内容は変なものだった。


「んー……要領を得ていないというか、正確な情報が入ってきていないんだよ。敵がたくさんいるっていうことしかわからなくて、すぐ交戦状態に入ってしまうらしくてさ。だから俺たちが直接現場見るしかねえんだよ」

「それはまた恐ろしいな」


本来であればこうした事件現場に向かう時には、ある程度情報収集をしてから向かうのが鉄則である。

しかし、エレスがそう言っているとなれば敵の正体が不明ということになってしまう。

倒れているエージェントたちに話を聞こうにも全て絶命してしまっているためにそれも不可能なのだが、真治はこの絶命しているエージェントたちの負っている傷に注目してみる。


「気になる……」

「え、何がだよ?」

「クレイグならよくわかってくれると思うが、このエージェントたちは激しい暴行を受けて殺されたらしいな」


真治の分析にクレイグも頷く。


「そうだな。脳挫傷、内臓の破裂、その他もろもろの暴行による死亡ということだろうな」

「しかもこのエージェントたちは一人にやられたわけではなさそうだ。複数人によって能力を使うよりも先に暴行されて殺された可能性が高い」


数々の戦場を駆け巡って、人の死というものに何度も直面してきた真治はもうこういう光景は見慣れている。

しかも他のエージェントたちの傷も見てみると、暴行の傷以外にも切り傷や刺し傷などが所々に見られることから、真治には大体の予想がついた。


「……そういうことか」

「どういうことだ?」

「このエージェントたちを死なせた奴らの見当がついた。ここの連中だろう」


そう言いながら真治が指を差す先には、中華街のシンボルの一つである大きな門である。

それを見て、クレイグが先に神妙な顔つきになった。


「まさか……この中華街の連中にやられたというのか?」

「そうとしか考えられない。こっちの男の切り傷は普通のナイフにしては大きくてえぐり方も変だし、こっちの女エージェントの刺し傷は深い。そしてこれだけの暴行をエージェントたちに対してできるとなれば、それなりに人数がいなければ説明がつかない」


そしてこの中華街で食事をとるはずだった真治が、逃げ惑う人間たちが叫んでいる場面で聞いた能力犯罪者たちの情報を照らし合わせると、ここの中華街で何が起こっているのかの答えに自然とたどり着くのはまさに時間の問題だった。


「ここの中華街の住人たち、それから働いている人間たちが恐らく、その能力犯罪者たちに操られて敵として動いているんだろうな」

「くそっ、そんなのってありかよ!!」

「ありだろうな、エレス。だから私たちが本部から呼ばれて対処に当たるということだ」


要は、この中華街の全員が敵に回っている。

人質に取られてしまっているというよりかは、その様に普通に人質を取られてそれを助けに向かうよりも、遥かにタチが悪いといえる。


「一般人たちを操って敵として機能させているのであれば、むやみに攻撃はできないだろう。その油断と遠慮が敵にとっては付け入る隙となって、能力を使うか迷っているうちにエージェントたちは殺された……こう考えるのが自然だろうな」


私たちだって、一般人に対して能力を使えるのはよほどの事態でなければできないのだから。

悔しそうにそう呟くクレイグだが、だからと言ってここではいそうですかと引き返すわけにはいかない。

これが自分たちに与えられているミッションであり、わざわざアメリカから来たのだからそれなりの働きをしなければいけないのだ。


「とにかく中華街の中に入ろうぜ。何が起こってんのかこの目で確かめなきゃな」

「そうだな。じゃ……行くぞ」


三人は中華街の中に向かって歩き出したのだが、しょっぱなからなかなか一筋縄では探査させてくれなさそうな光景がその中に広がっていた。


To be continued...


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