Erudin Battle Quest第1話


登場人物

栗山 祐二(くりやま ゆうじ)

(年齢は2007年8月のもの)

35歳。福岡県大牟田市出身。通り名は「ハードウェポン」。職業警備会社勤務。

4歳の時に岐阜へ引っ越すが、両親が自殺。その後岐阜の孤児院で育った。

「墜落の刃」こと岩村僚一、 「ブラッドハウンド」こと鈴木流斗らとは、同じ孤児院で育ち、

実の兄弟のように親しい。出所してからは、傭兵として各国を転々と渡り歩いていたらしい。

そのため極度のミリタリーマニアで、ナイフやモデルガンを集めるのが趣味。他にも動物好きという

暖かい一面があるほか、バトルで稼いだ金を自分が育った孤児院に送ったりもしている面もある。

傭兵として生きる中でクラヴ・マガ、太極拳、カンフー、柔道、エスクリマ、シラット、ボクシング等

様々な近接格闘術を身につけて来た。

仲間内ランク付けバトルテスト、35人中第2位。

ラスタン・ドルダ

18歳。エールディンのミルディヴ出身。職業旅人。

身長170cm、体重60kg。

人間が暮らすミルディヴで生まれ育った。アルカボルド龍騎士副団長の

ザルド・ドルダの長男で、8歳の時に行方不明になったザルドの消息を

掴む為、旅に出る。魔法も使えずロングソードの扱いにしか慣れて

いないため、他の武器は一切使いこなせない。押しに弱く、若干背が

低い事を気にしている。



「・・・・何だよ、ここは・・・」

栗山は自分の目の前にある光景が信じられなかった。

自分は警備会社に勤務している警備員であり、先程まで夜勤をしていて仮眠の時間の為に同僚と当番を交代したばかりだった。

港湾警備の仕事と言う事もあり、乗ってきていたハイエースの中で相方の谷本仁史と交代して仮眠に入った筈だった。

それなのに・・・・・。

(何で辺りが真昼間なんだよ。・・・・ま、まさかこの展開って・・・・・!?)

ハイエースの中だったはずの空間は栗山の視界にはあらず、身を起こして見回せば一室のベッドに自分が寝転んでいた事に気付く。

恐る恐るベッドから抜け出し、栗山はとりあえず部屋から出ようと赤いカーペットの上を踏み歩きながらその先の扉のドアノブに手を伸ばそうとした。

まさにドアノブを握ろうした瞬間、手が触れてもいないのにドアノブが音を立てて回り、ゆっくりと扉が開いた。

驚いた栗山は後ずさり、扉を開けた主へ構えの体勢を取って待ち構える。

半開きになった扉の向こう側には驚いた目をした茶髪の青年が栗山と同じく、警戒して相手を見つめていた。


「・・・何だ、君は・・・?」

栗山が問いかけるものの、男は警戒を解かないままで栗山を見つめる。

男は推定18歳か19歳か・・・その辺りだろう。まだ少年から青年に変わったくらいの年代か。

しかし今の状況からして、どうやらこの男が自分がここに居る理由を知っているはずだ。

そう考えていた栗山に対し、やっと男が口を開いた。

「僕は・・・えっと、ここの宿を借りてる者ですけど・・・」

ドアは半開きのまま、青年は部屋に入らないで栗山を覗いたまま喋る。

「あなたは誰なんですか?ここ、僕の借りた部屋だと思うんですけど」

青年は若干腰を落として、腰辺りの鞘のようなものに両手を置いている。

それは栗山がいつ襲ってきてもいいように構えている様子だった。

「い、いや俺も何が何だか・・・・ここって一体何処なんだよ?」

部屋の中をぐるりと見渡して、再度男に栗山は問いかける。

しかし栗山の態度に強い不信感を覚えたのだろうか、男は腰にぶら下げている大き目のロングソードを油断無く何時でも抜ける様にしている。

「まさか、俺と戦うつもりなのか・・・・・?」

そういう気分じゃないんだがなぁ・・・と思いながらも、栗山は43年生きてきた自分の今までの戦いの経験を発揮出来るように若干身構えた。

「か、金目の物なら持ってませんよ・・・今金欠だから。」

身構えた栗山をみてびびったのか、青年が扉から半歩下がりロングソードを鞘から抜いて構える。

どうやら青年は栗山の事を宿荒らしだと思っているらしい。

「出来れば戦いたくないけど、あなたがそのつもりなら僕も戦う。」

茶色い瞳の目は一瞬で鋭くなり、震えてはいるが剣の柄を握る手に力が入る。


だがその男のセリフに栗山は目を丸くする。

「おいおい、待った待った。何だか勘違いしてるぞ、あんた」

俺は泥棒なんかじゃなくて、気がついたらここに居たんだ・・・と説明する栗山に対し、今度は男が訝しげな表情を崩さないまま問い掛ける。

「どう言う事ですか?」

「どう言う事も何も、事実を言ってるまでだ。とにかく勘違いしているようだから、一旦座って・・・な? 落ち着いて話そうぜ?」

困惑した青年は何回も瞬きをした後、大きく息を吐いて剣を鞘へ戻した。

悪い人ではなさそうだと思い直し、青年が扉の向こうから部屋の中へ足を踏み入れる。

「泥棒じゃないって事は、部屋を間違えたんですか?」

背負っていた大きなリュックを床に下ろし、青年はまじまじと栗山を見つめる。

自分よりも身長が高くてがっしりした体格をみれば警戒するのも無理はないと心の中で青年は思った。

「部屋を間違えた・・・・とか、そういうレベルの話じゃないんだ。何時の間にかここにいた」

栗山はとにかく自分の身に起こった出来事を信じてもらおうと、ありのままを話し始める。

自分は警備員をしていること、相棒と交代して仮眠に入ったこと、目を開けてみたら何時の間にかここで寝ていたこと。

それに男の服装は、自分が生きてきた世界では全く持って古めかしいものであること。

そこまで言うと、男は立ちくらみでもしたのか頭を抑えてブンブンと首を横に振る。

未来の世界から来た・・・いや、そうでもなく異次元から?

何にせよ栗山の口から聞いた内容は、青年に到底理解出来るものではなかった。

それでも青年は過去、自分の身に降りかかった想像を絶する出来事や人物を思い返し、落ち着きを取り戻す。

「僕はラスタンです、この世界を仲間と一緒に旅してるんですけど・・・仲間と喧嘩しちゃって、その子がちょっとした呪いを発動して今1人なんです。」

ラスタンは気まずそうに頬を人差し指で軽く掻いた。


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