Despair and hope第5話


「あ……れ? 全員お仲間?」

「だったらどうだってんだ? おいらもそうだし……なぁ?」

今度は黄緑頭の人間が客達に同意を求める様に振り返りながら言うと、

ほとんどの客がうんうんと頷いた。

「大体、あんたあの場所に居て兵隊に指示を出してたろ。うちはそれも見てたんだぜ?

騎士団の人間にこんな場所を見られちまったら、ただでうち等も帰す程御人好しじゃないんでね」

そう言いながら武器に水色髪の男が手をかけた……その瞬間だった。


「では、こちらも私が加勢するとしましょうか」

突然入り口のドアが開き、そこからは今この場に居る筈が無い男が姿を現した。

「あっ、あれ!? ロオン!?」

「兵士から伝言を頂きましてね。少し気になる情報も手に入りましたので……。その情報に

従ってここに辿り着きました。詳しい話はそのお2人に詰め所で聞くとしましょうか」

ロオンは目が笑っていない笑みを浮かべながら武器を手に取った……が、その時武器を構えている

客の中に気になる顔を見つけた。

(ん? あれ、確かあの方は……)


しかしその客の顔を見続けていられる状況では無かった様だ。

「あ、そう。だったらおいら達も遠慮はしないんでね!!」

そう言っていきなりその2人の男を筆頭にして一気に襲い掛かって来た客達だったが、即座に

カリフォンとロオンも反撃に出る。

まず向かって来た2人の筆頭の男を武器を持っていない方の素手で殴り飛ばし、それから

向かって来る客達にそれぞれ対処して行く。

だがカリフォンはその中でも我流の戦い方を存分に発揮して行く。

ロングソードだけを使うのでは無く、例えば椅子を持ち上げて客に向かってブン投げて

けん制したり、テーブルごと反対側の客に体当たりして客が怯んだ所でテーブルの上を転がってキックを

テーブルを挟んだ反対側に居るその客にキックを食らわせたりする。


それを見ていたロオンも下段回し蹴りで1人の客を転ばせ、次に後ろから向かって来た客にミドル

キックで対処。プラスして小さなファイヤーボールを手に生み出してそのまま客を殴りつけたりと

結構荒っぽい手段も取っている。

「ロオン、後ろだぁ!!」

カリフォンの言葉に後ろを振り向けば、目の前に自分の武器であるハルバードを振りかぶる水色髪の

男の姿を捉える事が出来た。

「くっ!」

間一髪で屈んでそれを回避し、お返しに剣の切っ先で男の足を突き刺す。

「ぐわ!」

怯んだ男はそれでもハルバードを突き刺そうとして来るので、ロオンは全力でそのハルバードを横に

薙ぎ払いながら男の身体も一太刀で薙ぎ払って絶命させた。


カリフォンはカリフォンで残りの客達と黄緑髪の男を相手に戦う。

残りの客の1人のみぞおちにキックを入れるとその客がうずくまるので、うずくまったその客の背中を

踏み台にしてジャンプしてそこから思いっ切り別の客にドロップキックを浴びせて壁に叩きつける。

すぐに跳ね起きて身体を反転させ、後ろから襲い掛かって来た黄緑髪の男の双剣を受け止めつつ

男の股間に強烈な振り上げキック。

「うぐぅ!!」

急所を思いっきり蹴られて前のめりに悶絶する男の無防備な背中に、カリフォンがロングソードを

突き立てて絶命させてようやく戦いが終了するのであった。


増援を呼びに行く様に配下の騎士達に指示していたロオンのおかげで、戦いの後に

駆けつけて来たこの町のその騎士団達によって経営者である絶命した2人とこの

違法賭博場の客全てが全員逮捕一掃された。

そして何故あの爆発事件の現場から水色髪の男が不自然な冷静な態度で立ち去ったのかと

言う事についてだが、その後の調査で2人が町の住人や賭博場の逮捕された客から聞き出した

事を纏めるとこうだった。

その爆発があった場所はこの町で最も大きな屋敷らしく、周りの人間や居合わせた兵士達によればこの辺りの

一帯を収める領主の屋敷だったらしい。


「しかし、その領主とやらはあの賭博場でイカサマをして勝ちまくっていて、凄く恨まれていたと言う事か……」

「そうですね。そしてその領主に恨みを持っていたのはあのハルバードのエサシェルと言う方、

それからあなたと戦っていた双剣のノースフェンと言う方もそうでした。あの2人はあそこの

経営者だったそうですが、その領主様は偽の宝石を売りさばいて資金を得ていた様でして」

「……え?」

「どうもこの事件にはもっとややこしい問題がある様ですね……」

まさかのロオンからの発言に目を丸くするカリフォンに対して、更にロオンは続けてこんな事を話し始めるのであった。


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