Despair and hope第3話


とりあえず家にばかりいてもつまらないので、まずカリフォンはロオンと

手合わせをして貰う事にした。勿論使うのは訓練用に刃を潰した物である。

「たまには身体を動かさないとな。うっしゃー、行くぜ!」

「なるべく全力で行きましょう。後、魔法はどうします?」

「別に使っても良いぜ」

「分かりました。でもそれだけは手合わせですから軽い物にします」

「りょーかいりょーかい。じゃあ、行くぜ!!」


先に突っ込んだのはカリフォンだった。低い体勢からまるで獲物を狙う獣の如く

素早く突っ込んで行く。しかしロオンもそのまま立ちつくしている程無能では無い。

しっかりとカリフォンの突っ込みを避けつつ反撃に転じるが、カリフォンもまたそれを

ブロックしてキックを繰り出す。

旅人として活動している中では我流仕込みの剣術を使っていたので、その時の

経験が今になっても存分に生きている。


対するロオンは騎士団で仕込まれた正統派のスタイルでの戦い方であり、非常に

洗練されたテクニックを持っている。プラス、カリフォンには使う事の出来ない魔法を

使う事が出来るのでそう言った面でカリフォンと差をつける事が出来るし、

回復魔法も使う事が出来るので前衛でも後衛でも活躍できるオールラウンドタイプだ。

それでもカリフォンの若手ならではの勢いのある攻撃に若干押され気味なのは年齢

増加による体力の低下や動体視力の低下もあるだろうが、それでも長年培ってきた

その経験がカリフォンにチャンスを与えようとはしなかった。


そうして打ち合いを続ける事約5分。お互いに動きが鈍って来た。特にロオンは

かなり疲れて来ている様子だ。全力での手合わせである為に5分も打ち合えば

なかなか疲れてしまう。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「ふー、ふー、ふぅ……流石にやりますね」

「なぁに、まだまだこれからだぜっ!!」

そうして再び突っ込んで来るカリフォンを見て、ロオンはそのまま魔法を詠唱しながら迎撃

態勢に入って迎え撃つ。


「おりゃああああっ!!」

カリフォンはそうとは知らずに突っ込んで行く。

そこで突っ込んで来たカリフォンの腹目掛けて風のパワーを手に纏わせて彼を吹き飛ばそうと

したが、ここでカリフォンは意外な行動に出た。

「ふんぐ!」

「な!?」

突き出されたそのロオンの手をカリフォンはロングソードを捨てて両手でがっちり掴み、

突き出されたその勢いすらも利用してカリフォンを力任せに投げ飛ばした。

「くっ!!」

投げ飛ばされたロオンはそれでも上手く地面を転がってカリフォンの方に向き直ったが、

その時にはもう喉元にロングソードの先端が突きつけられていた。


「完敗です」

残念そうに頭を振るロオンだったが、カリフォンは健闘を称えあう。

「いいや、俺も体力的な面でまだまだだな。だってロオン隊長と同じ位

打ち合って同じ位疲れてるんだ。もっと体力つけなきゃな」

「それは私の体力が落ちてると言う事ですか?」

「かもな」

くくくと笑うカリフォンと、思わず苦笑を漏らすロオンだった。


その後は夕食の準備をしようとしたが、ここでロオンが1つ気が付いた事があった。

「あ……しまった、調味料が無いですね」

「調味料?」

「ええ、塩と砂糖を切らしてしまいまして。ちょっと買出しに行ってきますよ」

「ああ、それなら俺も一緒に行って良いか? 俺も買いたい物があるんだ」

「良いですよ。なら準備を」

と言う訳で調味料の他に、カリフォンは目をつけていたアクセサリーが欲しいとの事だったので

一緒に買出しに出かける事にした。行き先は勿論町の中にある雑貨店。それからアクセサリーショップだ。

皇都ネルディアにもアクセサリーショップはあるがここは勿論皇都では無いのでそこで

アクセサリーを買うと決め、カリフォンは準備が出来たので出発する事に。

しかしこの買出しに出かける事で、彼等が大きな事件に巻き込まれる事になってしまうのであった……。


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