Despair and hope第19話
カリフォンとロオンがそのまま走って行くと、辿り着いた先は船が沢山
停泊している波止場であった。
「くそっ、何処に行きやがった!!」
「私は向こうを探します。カリフォン隊長はあちらを!!」
「おっしゃあ、任せておけ!!」
ロオンはカリフォンと別れて、手分けして逃げた2人を探して波止場を探し回る。
この波止場は意外と広く、もし船に乗って逃げられてしまったら終わりだ。
その為、ロオンは内心凄く焦りながら逃げた2人を早く見つけなければと思う。
(まずいですね……何処に行ったかと言えばここ位しか思い浮かびませんから、
何とかして見つけなければ!!)
だが、そんなロオンの耳にヒュンと風を切る音が聞こえて来る。
咄嗟に危険を感じてロオンはそのまま横っ飛びをして地面に転がると、
その横っ飛びをする前に自分が立っていた場所に無数のトゲがついた黒い皮の
鞭が叩きつけられた。
「しつこい奴等だ、全く」
声のする方を振り向けば、次の一撃をジャレティが振りかぶっている所だったので
咄嗟にロオンはまた横っ飛びで転がりながら立ち上がり、その立ち上がる瞬間に
ロングソードを素早く引き抜いた。
「ふっ!」
それと同時に左手に魔力を終結させ、ライトニングボール……雷のボールを
作り出してジャレティに向かって投げる。それはジャレティの鞭に弾かれてしまうが、
それで隙を作り出す事には成功して一気に間合いを詰めるロオン。
ジャレティは乱暴で無茶な戦い方をして、パワーに物を言わせたバトルを展開。
そんな体当たりも辞さない様なバトルでは、相手の方がびびってしまい遅れを
取ってしまって彼に負ける事もしばしば。皮のムチを武器として振るい、広範囲の
攻撃を得意とするがその武器のムチが吹っ飛ばされても無茶な戦い方は変わらない。
「ここまでです、諦めなさい!」
「何を言ってるんだか」
「なら実力行使です……ね!」
最後の「ね」を言うと同時に右ハイキックから入るロオン。そのままもう1発右ハイキックを繰り出し、
続けて右のミドルキックを繰り出すがそれをジャレティは両手で受け止めてロオンの左足を蹴り付けて、
バランスを崩させようと画策する。
だがロオンも何とかギリギリで踏ん張り、このままではまずいと咄嗟に判断し一旦ジャレティと距離を取る。
距離を取って体勢を立て直したロオンはジャレティが繰り出して来るムチをギリギリでかわしつつ、
応戦してパンチを繰り出すが、パンチを空振ってしまいジャレティの左ミドルキックがロオンの腹に入る。
「ぐえ!」
そのハイキックは意外に重くロオンは仰向けに地面に倒れ、そこにジャレティが押さえ込もうと飛び掛かる。
けれどもロオンも転がってそれをしっかり回避。そして遅れて立ち上がって来たジャレティのロオンから見て
右肩から自分のロングソードを振り下ろす。それは的確にジャレティの胸元から下腹部までを切り裂いた。
「うぐああ!」
その勢いで今度は自分の身体をくるりと回し蹴りの時の様に回転させ、ジャレティに追撃で一撃。
そうして最後にジャレティの胸にまっすぐロングソードで突きを喰らわせれば、変な声を上げてジャレティが
絶命したのがロオンの目で確認出来た。
と、その時。
(……ん?)
合計3回もロングソードを突き立てたジャレティの死体の胸から、はらりと1枚の紙が落ちる。
小さく折り畳まれているそれを拾い上げて、広げて読み始めるロオン。
だがそこには驚愕の事実が記載されていた!!
「……ええっ、これは……?」
どうやら今回の事件はまだ続きがあったらしく、その計画を阻止する為には今現在まだ
逃げているであろうジェイルザートを絶対に探し出して捕まえる必要があった。
(カリフォン隊長、どうか……ご無事で!!)
その計画は、これからのバーレン皇国……いや、世界中の未来が変わるかもしれないと言う
重要な情報が彼等の手によって手に入れられ、そして実行されようとしている物だった……。