Despair and hope第20話(最終話)


カリフォンはロオンと別れた後に波止場を探し回っていると、丁度ジェイルザートが

小船に乗り込んでここから逃げ去ろうとしている所だった。

「待ておらぁ!!」

「ちっ、役立たずな奴等だ!!」

今から小船を漕いでの逃走は無理だと思い、ジェイルザートは小船には乗らずに

やって来たカリフォンに対して鉄球の付いた鎖を取り出した。

しかし、それを振るう前にまずはウィンドカッターと呼ばれる上級魔法をカリフォンに

お見舞いして彼を苦しめる。


「ちいっ!!」

ウィンドカッターはその名前の通り、魔力を纏わせて刃物の様に切れ味を鋭くした風を

相手に向かって吹き付けると言う魔法である。

その風をまともに食らってしまえばカリフォンはひとたまりも無いので、横っ飛びで風から

逃れつつロングソードを引き抜いて迎撃態勢に入る。

そのままジェイルザートは今度は変則的な動きの鎖を振り回してカリフォンを

仕留めに掛かって来る。

しかし戦場で培った反射神経と経験でカリフォンもギリギリでかわしたりガードしたりする。

「てゃあ!」

一気に攻撃の隙を突いて間合いを詰めたカリフォンの放つ左回し蹴りをジェイルザートは

屈んで避け、空ぶったカリフォンの足はその先にあった木箱に直撃して穴を開ける。

お返しに飛んで来たジェイルザートの右ローキックを今度はカリフォンが左足で受け止め、そのまま

続けて飛んで来た左のキックを精一杯屈んでかわすが、左のキックの勢いで身体を半回転させた

ジェイルザートはそのまま前に出た右足でカリフォンを思いっ切り腹から蹴り飛ばす。

「ぐおぅ!」


一旦距離を取り、右のハイキックを繰り出したカリフォンにカウンター気味でジェイルザートの

左の蹴りが飛ぶが、それを身体を仰け反らせて避けてお返しに右のパンチ。続けて左のハイキックを

繰り出すが、それを逆に屈んで避けたジェイルザートは右のパンチをカリフォンの腹へ。

「うぐ!」

膝をついたカリフォンの顔面を左足で蹴り飛ばすがカリフォンもへこたれず、まだ襲い掛かって来る

ジェイルザートに今度はさっき自分が穴を開けた木箱を投げつけ、それによって彼が一瞬怯んだ所に

ドロップキックをぶちかます。

「ぐえ!」

床に背中から倒れ込んだがすぐに起き上がるジェイルザートに、間髪入れずに左ハイキックから

連続でロングソードで斬りかかって行くカリフォンだが一瞬の隙を突かれて首を羽交い締めにされる。

「ぐっ……うぅぅう、らあああ!」

ロングソードから左手を離して、そんなジェイルザートに容赦せずカリフォンは肘打ちを何発も

連続で叩き込むとその脇腹の痛みに耐え切れずにカリフォンの拘束を緩めてしまった。


「ぐ!」

若干前屈みになって彼から離れたジェイルザートの背中に左の回し蹴り、そこから連続して

右の回し蹴りで、最初の左の回し蹴りで飛んで行く筈だったジェイルザートの身体が

今度は逆方向に飛ぶ。その身体目掛け、カリフォンは左のミドルキックを彼の腹へ。

「ぐあ!」

地面に叩き付けられた彼にカリフォンは追撃の手を緩めず、起きあがりかけたジェイルザートの

胸に右のキック。それでも持ち堪えるジェイルザートに今度は左ハイキック、続けて右の回し蹴り、

そして屈んで避けて体勢を立て直した彼の顔面に全力の左ストレートが炸裂。

「ぐうぇあ!」


ジェイルザートはそのまま後ろによろけ、それを見たカリフォンは思いっ切りロングソードを

振り被って彼の腹を横一文字に切り裂いた。

「ぐぶっ……」

その切り裂きでジェイルザートはうめきながら倒れ込み、止めを刺そうとしたカリフォンだったが……。

「カリフォン隊長、待って下さい!!」

「えっ、え!?」

突然後ろから聞こえて来たのはまさかのロオンの声だった。

「ロオン!? 一体どうしたんだよ?」

「その方にはまだ聞かなければいけない事があるんです!!」


そうしてロオンはジェイルザートの傍へと駆け寄り、あのジャレティから落ちたメモを見せる。

「この事なんですが、心当たりがありますね?」

「……ああ、それ、か……」

だが、もう止血しても間に合わない程大量出血しているジェイルザートは息も絶え絶えに

カリフォンとロオンにただ一言だけ告げた。

「計画は失敗、だ。俺が死ん、だらもう……計画は進まない……から、なぁ……っ!!」

そのままゆっくりと目を閉じ、ジェイルザートは息絶えていった。


「……成る程、伝説のドラゴンの秘密を暴こうとして資金を集め、それから他の国へと

行ってみるつもりだったのか」

「危ない所でした。このドラゴンの事は王族と一部の貴族以外他言無用の事項でしたからね。

もしこのドラゴンの事が他国に漏れでもしたら大変な事になる所でした。やっと手掛かりを

掴んだ所だったのに……」

ジャレティのあのメモに書かれていた計画が阻止され、ほっと胸を撫で下ろすシェリスとロナ。

あのメモに何が書かれていたのかと言うと、かつてこの世界に存在していたとされている伝説の

7匹のドラゴンの内、国内でその遺跡の1つが発見された。伝説のドラゴンは世界中で

その力を欲している対象になっており、バーレン皇国も例外では無かった。


なのでそのドラゴンの遺跡に関しては王族と一部の貴族以外機密事項だったのだが、

その貴族の1人としてそれを知っていたジェイルザートはあろう事かその情報を他国に売り渡して

大金を手に入れようとも画策していたらしい。

「まさに金に振り回された奴の末路って訳か、哀れだな」

「何だか後味の悪い事件でしたね。結局屋敷も自分の手で燃やしてしまったんですから」

事件は解決し、ドラゴンの事が他国に漏れ出さなくてよかったと思うと同時にシェリスとロナから

再び休暇を取る事を許可された2人は、今度こそ何事も無く休暇が過ごせます様にと願いながら

今度は国内中の1ヶ月の旅行へと出かけて行くのであった。



Despair and hope 


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