Despair and hope第13話


そうして謁見と報告を終えたカリフォンとロオンは自分達の持ち場である

騎士団の本部へと向かう。

「良く戻ったな、カリフォン隊長」

「ロオン隊長も良くご無事で、色々大変だったそうですね」

2人を出向かえたのはそのジェクトとシュソンであり、ネルディアにおける

今の状況の説明を始めた。


「今の所、そのジャレティの行方は掴めておりません。部隊を派遣して捜索に

当たっておりますが……結果はまだ芳しくない様でして」

「そうですか。もしかしたらの話ですが、まだこのネルディアに辿り着いて

いないと言う可能性も否定出来ませんね」

「あー、成る程なぁ」

ロオンの見立てにカリフォンも腕を組んで納得する。確かにそのジャレティと

言う男がネルディアに向かったと言う情報と、現在そのジャレティがここネルディアに

居る、と言う事はイコールとはならない訳だ。


「だったらよ、そのジャレティって奴の特徴を教えてくれ。背格好とか良く身につけている物とか……」

カリフォンの申し出にシュソンがああ、と頷いて答える。

「それでしたら特に目立つ部分があります。彼は中年の男で、緑の髪の毛にあごひげを

生やしています」

「よっし分かった。ロオン隊長、行こうぜ!!」

「は、はい! それでは私達は見回りに行って来ます」

「ああ、気をつけて」


ジェクトにも送り出されて、ネルディアの城下町へと2人の隊長は繰り出して行く。

「とは言うものの……幾ら特徴があるとは言え、この人込みじゃあなー」

確かにカリフォンの言う事も最もだった。ネルディアはバーレンの都であり、ヘルヴァナール

鉄道の国内最大の駅もあるから人通りも自然と多くなる。

「私達2人だけでは結構かかりそうですね……ジャレティ様でしたか」

「ああそうだ。さーて、何処から探すかな?」


だがそんな2人の前に、見知った顔の人間達が姿を現した。

「あれ?カリフォン隊長じゃ無いですか」

「ロオンも。どーした御前等。休暇じゃ無かったのか?」

「確か2人一緒に帰って来るのはもっと先だって聞いてましたよ」

「あ……え、何でここに?」

「何でって、やだなぁ。見回りの最中に決まってるじゃないですか」

2人の目の前に現れたのは3人の見知った人物だった。


まずは紫色の髪の毛にあごひげを生やした中年のガタイが良い男が1人。

背中には弓を背負っている。

それから茶髪の眉毛が隠れる程で前髪が切り揃えられたパッツンヘアーの

女が1人。こちらも男と同じく弓を背負っている。

最後に青髪の斧を背負った目の大きい女が1人。彼女は斧を背負っていた。

3人はそれぞれ弓隊隊長のグラルダー、そのグラルダーの副官で弓隊副隊長の

アイリーナ、そしてシュソンの副官で斧隊副隊長のファルレナであった。


「ああ、そうか……。俺達は確かに休暇を取っていたけど、そっちには伝わって無いのか?

つい先日に起きた爆発事件の事」

「爆発事件?」

思わず聞き返すファルレナだったが、それにボソッと答えたのはアイリーナだった。

「……何か、領主の屋敷が狙われたって言う話でしたっけ」

「あーあー……そういやそんな事がこの前あったなぁ。確かそれに巻き込まれた

騎士団の人間って……」

「ええ、私達ですよ」

ロオンは心底うんざりした口調で苦笑しながらその続きを言った。


だが、そんなロオンの横でカリフォンがふと視界の先に驚愕の光景を捉える。

「おっ、おい、あれ!!」

「え?」

ロオンと他3人が一緒にそのカリフォンの指差す方向を見てみると、その先には

こそこそとなるべく人目につかない様に、辺りを警戒しながら裏路地へと入って行く緑髪の

中年男……まさに噂をすれば影との言葉通り、カリフォンとロオンが捜し求めていたその

裏社会の大物とされているジャレティが丁度目に入ったのであった。


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