Despair and hope第10話


近衛騎士団長と言う役職に就いているティレフ・レルトインは槍を己の

武器として使いこなす為に槍隊の隊長でもある。その槍隊と近衛騎士団の

両方の団長を務めているので大忙しだ。近衛騎士団長と言う役職の為に

プライドが高く、自らのこの地位に並々ならぬ誇りを持っており日々の努力は

今でも絶対に怠っていない。だからこそ、その実力も騎士団の主力と呼ばれる

魔法剣士隊のロオンとジェクトよりも上と言われており、実際にロオンを模擬戦で

打ち負かした事もあるのだ。


だが以前、ファルス帝国騎士団のシャラードが休暇中にバーレン皇国に

旅行に来た時にひょんな事からティレフと戦った事があり、その時にティレフは

打ち負かされてしまった。それからと言うもの、他の人間が迂闊に近づく事が

出来ない位のオーラをかもし出しながら槍の鍛錬に打ち込むティレフの姿が

何回も鍛錬場において目撃されている。何としても、自分もシャラードも

どちらも得意な槍の腕前でシャラードに勝ちたいと意気込んでいるからだ。

しかし今のご時勢と言うか、お互いの立場を考えるとそうそう自国を離れられる

立場では無いのでリターンマッチが実現するのにはまだまだ先になりそうである。


ネルディアの由緒正しい家に生まれ、父は元より母親、それから叔父も

皇国騎士団に所属しているまさに生粋の軍人の家系に生まれ育った

彼もまた、皇国騎士団に入団する事になったのはある意味必然とも

言えるだろう。そんな名門の家に生まれ、騎士団に入る為に彼は3歳から

武器に触れ、魔導の勉強もして自分の技術を磨き上げる事だけに専念していた。

そうした生い立ちの中で彼に芽生えた1つの目標は、皇国騎士団の歴史の中で

最年少でトップに立つと言う果てしなくレベルの高い物であった。


その為に、ティレフは日々他の騎士団員とは比べ物にならない時間を自身の

戦闘能力を上げる為に費やして来た。朝起きれば必ず毎日の走り込みを1時間、

それから走り込みが出来ない雨の日であれば代わりに早朝から武器の素振りを

1000回、もしくは弓の特訓や馬術の特訓を自分で猛烈極まりないメニューを

決めて、それだけで朝の時間を過ごした。

勿論毎日の訓練には絶対に休む事無く参加していたし、分からない所があれば

分かるまで教官に聞きに行き、部屋に戻ってイメージトレーニング。そうして夜、皆が

寝静まった頃にひっそり鍛錬場へ出向いてその分からなかったポイントを分かる様になるまで

身体の隅々まで染み込ませるかの如く気迫に満ちた特訓をして来た。


それとは別に、騎士団員に求められるのは確かに体力も重要だが未来の指揮官として

活動する為には戦術や天候を読む力等の勉強もしなければいけなかったし、

バーレン皇国だけでは無くて何処の国でもこれは同じ事だが騎士団員は国民の模範と

なるべき人間として過ごさなければならない。となれば儀礼も身につけておかなければ

模範的な騎士団員として、そして指揮官としても失格である。

儀礼の面に関しては由緒正しい家柄で生まれ育った為にさほど苦労はしなかったが、

戦略や戦術の面では敵軍の動きを見越して作戦を立てなければいけなかったり、その時

その場所において利用出来る地形や条件、人員の有無等と言う様々な条件を考えて

作戦を立てなければいけなかったのでティレフはなかなか苦戦していた方だった。


しかし騎士団で最年少でトップになると言う目標を持って入団したからには、そんな所で

つまずいている訳には行かない。なので彼が考えた練習スケジュールとしては、「頭を使って

疲れたら身体を動かし、身体を使って疲れたら頭を動かす」と言う物であった。その交互に

勉学と武術に励む事で効率良く目標に一歩ずつ近づいて行く事が出来、限界までどちらとも

疲れたら寝ると言う生活を繰り返していた。

そんな生活を15歳の入団から続ける事10年。すでに17歳で特例で正騎士に昇格を

していたティレフは槍隊の隊長に就任していたが、当時の近衛騎士団長が引退する時に

彼を後継者に指名した事で2足のわらじを履く史上最年少の近衛騎士団長への就任が

弱冠25歳で決まったのであった。


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