Shutoukou Express and Kaido Runners vs Stomers 2nd Stage第2話
ホープとディアナがワインディングセクションの頂上に向けてC4を走らせている丁度その頃。
このキャロラインシティにやって来た4人の来訪者がその頂上でとんでもない事態に
遭遇していたのである。
「おい……マジかよ、あれ」
「警察には連絡したのか?」
「したけど全然来やしない。まだここで様子を見るか?」
「それしか無いだろう。迂闊に動いたら俺達見つかってしまうぜ」
日本からやって来た……と言っても1人は元々このアメリカの人間なのだが、旅行者である事に変わりは無い。
1人は長めの赤い髪の毛を跳ねさせている中年の男。日本の警備会社に勤務している。
1人は茶色い短髪に鼻の下の髭が特徴的な中年の男。これがテキサス州出身のアメリカ人で在日米陸軍の将校である。
1人は同じく茶髪だが色が少し薄い感じで、割りとガタイの良いアメリカ人よりも更にもう少しだけガタイが良さげなのが
服の上からでも分かる位に鍛え上げられた肉体の、普段は傭兵として世界で戦う男。
アメリカ人とはかつて戦場で共に戦った事もある古くからの友人である。
最後の1人は髪の毛を緑とオレンジと黒の3色に染め上げており、細マッチョをもう少しだけ体格良くした肉体を持つ男。
この4人は日本の首都高速サーキットと呼ばれる、東京都の元々公道だった首都高速を新たなバイパスの開通に伴って
合法的なサーキットとして生まれ変わらせた場所でそれなりに有名な人物達である。
中でも3色の髪の男は首都高サーキットで15年以上走り続けているまさに伝説と言っても過言では無い存在であり、
今でこそプロレーサーとして活動しているもののかつては首都高サーキットの裏四天王の1人として活動していた。
そんな彼等4人は今回、久々に休みのスケジュールが一致したのでアメリカ旅行に来たのであるが、
もう1人の知り合いで同じく首都高サーキットで有名人でもある男からオススメされた結果がこのキャロラインシティだった。
だがそれは、トラブルに巻き込まれる可能性が高いと言う意味でのオススメだったのでは無いかと4人全員が
思ってしまう程に今の状況は緊迫していた。
そもそも何故こうなったかと言えば、キャロラインシティに向かう途中で色々と観光スポットを調べたらこの銅像が
インターネットで紹介されていたからだ。
「良し、だったらそこに行ってみるか」
3色の髪の男……この旅行の言い出しっぺでもあるプロレーサーの渡辺亮が提案した事でここに来て、
銅像の前で写真撮影をしている時に何か怪しげな雰囲気を醸し出している連中がやって来たのだった。
思わず銅像の陰に隠れて息を潜める4人は、観光スポットなのに堂々と何かの取り引きをし始めた連中を怪しく思い始める。
その取り引き内容に1番最初に気がついてしまったのが、傭兵として活動する黒羽真治だった。
「……おい、こんな場所で堂々と武器の取り引きだと?」
「武器……って、拳銃とかアサルトライフルとか?」
真治は口数の少ない寡黙な性格だが、そんな彼が驚きの声をあげた事で隣で見張っていた赤い髪の警備員の
谷本仁史も取り引きの内容にもはや興味津々だった。
「そんな所だろうな。何れにせよ、これを見てしまった以上このままと言う訳にもいかない」
だから警察に通報してくれ、と真治は渡辺に頼んだのだが、渡辺は絶望的な一言を吐き出した。
「ダメだ、アンテナがこの辺りには立っていないみたいだ」
「通じないのか?」
「ああそうだよ。観光スポットなら余計通じる様にするべきだろうに!」
若干イライラした口調で渡辺はそう呟くが、イライラしても仕方が無いのでとにかく目の前の光景を映像として
証拠に残せば良いだろうと判断。他の3人の電話も通じないらしいので、証拠は複数あった方が無難だと思いつつ
4人でいっぺんに録画をして行く。
「何でこんな事に巻き込まれるんだ、俺達……」
録画をしながら仁史が思わずぼやいてしまったその時、この場所に通じる1本道のワインディングセクションの
下からパトカーのサイレンが複数台分聞こえて来た。
「えっ、警察!?」
「良し、これで俺達助かるかも知れねえな!」
「ああ、全く一時はどうなる事かと……」
安心感に胸を撫で下ろす渡辺、仁史、アメリカ軍人スティーブの3人だったが、真治だけはまだ終わっていないと確信した。
「待て、あいつ等警察に気がついて応戦準備を始めたみたいだぞ!」
「なっ!?」
「ちっ、この場所なら流れ弾が飛んで来てもおかしく無いな。巻き込まれる前に退散するぞ!!」
「分かった、急ごう!」
真治の予想にそう続けたスティーブの分析を受けて仁史が返事をし、4人はあの連中の意識が下からやって来る
警察に向いている今がチャンスと判断して近くの駐車場まで一気にダッシュする。
せっかくのアメリカ観光と言う事で自由にキャロラインシティを見回る為、4人は事前に船で車をアメリカに送って
自分達は飛行機で現地入りしたのだ。
休みを1週間と長めに取った事もあって非常に楽しみにしていた旅行の筈だったのに、初日からこんな事に巻き込まれるなんて
どうかしてると思わざるにはいられないままそれぞれの車に乗り込む。
渡辺の黒いC5コルベットを先頭に仁史の黄緑のS14シルビア、スティーブの白いSW20MR2、
最後尾にベージュ色の真治のV35スカイラインクーペと続く。
そのまま駐車場からあの連中が居る場所とは逆の出口を使って脱出する事に成功したのであったが、
これが新たなトラブルの引き金になろうとはこの時点で4人の誰もが予想出来なかった。
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