Shutoukou Express and Kaido Runners vs Stomers第4話


一方、スターレットで病院に当て逃げされた怪我人を運んでいた

拓也は拓也で大変な事になっていた。

「何だよこいつはぁ!!」

あの事故現場から怪我人を載せて運んでいた拓也の背後から、

オレンジ色のWRC仕様のシトロエンC4が追いかけて来ているからである。

(俺、何か間違えられてる?)

もしかして怪我人を連れ去った誘拐犯と思われているのだろうか、と考えつつも

一刻の猶予も無いのでさっさと病院まで送り届けたい所だった。


しかしこの土地の事に関して言えば全くの新参者であり、病院の場所までなら

ナビアプリを使っているので分かるのだがそれ以外にこのC4を振り切れそうな

道路があるかどうかと言う事についてはまるでさっぱりだ。

しかも後ろから追いかけて来ているC4はかなりのハイチューンらしく、コーナーでも

ストレートでも明らかにこっちのスターレットが負けている。唯一スターレットが

勝っていそうな所と言えば車重の軽さと小回りの利き易さ、そしてボディの小ささから

来るすり抜けのし易さと言った所であろうか。

それにプラスして、このスターレットはこれからパーツメーカーとの打ち合わせでテストの

為に使わなければいけない車であるし何より友人からの借り物であるのでキズや凹みは

避けたい所であった。


(何で俺こんなことに首突っ込んだんだよおおおおおおおおお!!)

自分の迂闊さと後先考えずに突っ走るその性格が災いして、今のこの状況を

選んでしまった事を激しく後悔している拓也だったが、もうこうなってしまった以上は

後ろのC4を何とかして振り切って病院まで行くしか無いと考える。

だけど下手に路地裏に入ったりして、そのまま行き止まり……なんて事になってしまったら

それで一巻の終わりなのだから今はナビアプリに従ってスターレットを走らせるしか無い。

(とにかくぶつけない事が先決だ!)


C4の動きをバックミラーとサイドミラーで確認し、市街地の交差点コーナーでは

FFの特性であるタックインと安定性を生かしたグリップ走法で駆け抜けて行く。今の時代、

基本的にレースの世界でもドリフトをする人間なんていないので拓也も同じだ。

普段はジムカーナの国内チャンピオンシップからF3まで幅広いジャンルに参戦している拓也は

この市街地コースでジムカーナや峠で培ったコーナリングテクニック、そして首都高サーキットの

他の参加者の車をパスする要領でスイスイとここでも他の車の間を縫って走る。

だけど後ろのC4もなかなかそう言う事には慣れているのか、スターレットにぴったりついて来る。

(くっそ、このままじゃ振り切れないぜ!!)

でも、これは考え方を変えてみるとそんなに焦る事では無いとも拓也は思えて来た。

(待て慌てるな……無理に振り切ろうとしないで、このまま病院までついて貰って来れば

良いんじゃねえか? そうすればこの怪我人にも車にも負担はかかりにくい!)

そう思っていた拓也だったが、ここで事態は意外な展開を見せる。


何と、すぐ先の交差点の横から見覚えのあるロードスターが飛び出して来た。

「んっ!?」

シルバーのNCECロードスター。間違いなく隼人のロードスターである。

何故隼人がここに居るのかは分からないが、隼人はロードスターをC4に猛接近させて

C4の行く手を阻み、パッシングで拓也のスターレットに先に行く様に促す。

それを見た拓也は窓から手を出して大きく振り、アクセル全開でスターレットを病院まで

走り切らせる事に成功したのであった。


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