Shutoukou Express and Kaido Runners vs Stomers 2nd Stage第9話


「な、何だ!?」

「やばいぞスティーブ!! 真治の言ってたC4に見つかった!!」

その通話は今まで立体駐車場に隠れていた渡辺の声だったのだが、

スティーブもスティーブで大変な事になっているので如何しようも無い。

「こっちも今、謎のレクサスに追われているんだ! 恐らくはあいつ等の仲間だと

思われる! 逃げている途中だからまた連絡する!!」

「え、あ、ちょ!?」

渡辺からの連絡を強引に終わらせ、スティーブは住宅街を抜けて市街地に入ろうとしていた。


どうやらスティーブの方もまずい状況になっていると思った渡辺は、とにかく後ろのC4を

振り切る事に専念し始める。

自分が隠れていた立体駐車場にひょっこりと現われたそのC4を見た渡辺は、明らかに自分の方に

迷い無く向かって来るその姿にばれてしまったと確信してコルベットを発進させる。

するとコルベットを追いかけてC4も後ろを走って来たので、これはもう間違い無いと判断。

立体駐車場を駆け下りて行くのだが、いかんせんこの重くて大きなコルベットは狭い駐車場を

軽快に走り抜けられそうな動力性能は持っていない。


そもそも渡辺は、首都高サーキットが開通した当時はC1環状線しかオープンしていなかったのでそこを

走っていた。だが、その後に首都高速全域がサーキットとして生まれ変わってからは高速ステージを拠点として

湾岸線をメインに走っていた為か、マシンのエンジンは完全な最高速仕様。

立ち上がりがやや重いが特に問題視はしていない。

だが、それは今の状況では無視出来ない問題点として渡辺のドライビングを邪魔する。

重い車体にトルクフルなV8エンジンで、パワーはあるが曲がらない止まらないと言われている。

C5のコルベットはそんな曲がらない、止まらないというポイントを解消しているのだが、渡辺のセッティングの方向性が

解消された筈の問題点を再び出して来てしまった。


ホイールスピンは気にせずに力強いドライビングで、ドカンとブレーキを踏んで一気に減速。

そこからサイドブレーキも使って一気に向きを変え、次のフロアの出口に向かってアクセル全開。

アメリカンマッスルカーの名にふさわしいパワー全開の走り方で渡辺はC4を振り切ろうとするのだが、

小回りの利くC4は楽勝で食らいついて来る。

しかもバンパープッシュまで繰り出してくるので非常に危険だった。

(仁史もバンパープッシュされたらしいが、俺もかよ!)

心の中でぼやきつつ、C4バンパープッシュを仕掛けようとしても急激なテールスライドで防ぐか、

当てられてもギリギリで渡辺はコルベットを立て直す。


ポルシェに乗っていた時から今まで伊達に20年以上首都高サーキットを走り続けて来ている訳では

無いので、マシンとコースの不利を今までその首都高サーキットを走って培ったテクニックで埋める。

(良し、市街地に入ればこっちのもんだぞ!!)

そんな小競り合いを続けてようやく立体駐車場から抜け、何とか市街地へと出る事に成功した渡辺は

今までの鬱憤を晴らすかの如くコルベットのV8パワーを活かしてC4を振り切るべくアクセルを踏み込んだ。

……のだが、そんな矢先に今度は真治から通話が入る。

「な、何だよっ!?」

「取り込み中済まない。だが、俺達の無実を証明出来るチャンスを見つけたぞ。全員郊外の

工事現場まで来てくれないか?」

「工事現場? 何でそんな所に……?」


渡辺の問いかけに、真治は思いもよらない事を言い出した。

「あの時の集団の仲間がまだ居たらしい。シーサイド方面に向かっている時に、黒のベンツや

BMWの集団を見かけた。そしてその集団を何の気無しに追いかけたんだが、工事現場に辿り着いてな。

そこで今、武器の取り引きを始めているんだ!」

「何だって!? それは本当か!?」

一緒に通話に参加しているスティーブも、IS Fに追いかけられながら驚きの声を上げる。

だったらそこまで渡辺もスティーブも一緒に向かい、警察に一網打尽にして貰えば良いだろうとの事で

真治に警察への通報を頼む事にする。


しかし、仁史だけはすぐに向かえそうに無かった。

「俺はちょっと無理そうだ……」

「何でだよ?」

「FR−Sを振り切って港の倉庫街までやって来たんだけど……俺を追いかけていたそのFR−Sが

またやって来た! しかも銃を持ってる奴等に追い込まれてて、今は倉庫のコンテナの陰に身を隠しているんだ!」

「くそっ……」

仁史も助けて行くのは正直に言えばきついが、それが出来そうなのは……。

「分かった、俺が今からそっちに行くから待ってろ!!」

「本当か、恩に着る!」

渡辺がC4を引き離して、そのまま港に向かう事になった。


「パワーは向こうの方が上ね!!」

立体駐車場の中で何とかして食い止めたかったのだが、コルベットは市街地に出てしまったので作戦は

失敗に終わり仕方無く別の作戦を考え始めるホープとディアナ。

一旦C4をカーショップに預けたのだが、考えてみればまだ自走が可能だったしソールとゴードン、

ハートマンとクララだけでは人手が足りないと判断して一旦C4を引き取って来たのだった。

「警察に連絡してみるわ!」

「分かったわ、お願い!」

ディアナの申し出を受け入れて、自分はコルベットを追いかける事に集中するホープ。

ソールやゴードンと同じく、彼女達は市街地で色々と聞き込み調査を行ってあのコルベットの居る

立体駐車場まで辿り着いた。

コルベットのドライバーは相当なテクニックの持ち主らしいが、せっかく見つけた以上何としても

逃がす訳には行かないのだった。


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