Shutoukou Express and Kaido Runners vs Stomers 2nd Stage第10話(最終話)


渡辺がC4に追われながらも仁史の居る港湾区域に向かっているのだが、助けを求めた仁史は絶体絶命の状況に陥っていた。

S14のすぐ横にあるコンテナの前に追い詰められていたのだ。

エンジンを切って息を潜めていた仁史は、FRーSに見つかってしまいハンドガンによる威嚇射撃をS14のそばに何発か撃ち込まれる。

そして逃げられない様に上手くFRーSで道を塞がれ、S14から降りる様に指示されて今に至る。

「さぁ、もう逃げられねぇぞ?」

「あんたの持っている物を渡して、そして俺達と一緒に来て貰おうか」

見た感じは自分より若いが、それでも中年と呼べるであろう容姿の革ジャンパーに左手のみ黒手袋をはめた金髪の男と、

S14の横に並んで来たFRーSの中でハンドガンを準備していたあの時の黒いドレッドヘアーの男に仁史は銃口を向けられていた。


どうやら自分の事をあの銅像前で見掛けたギャングの一員と勘違いしている様だが、仁史の考えは逆で

この2人こそギャングの手先では無いかと考えている。

あの時のラジオ放送を受信し、それを利用して警察の回し者に見せ掛けるこの2人の作戦と言う事も仁史には考えられた為、

素直に動画を渡す気には勿論なれない。

それに失礼ではあるが、仁史には2人の格好はどう考えても潜入捜査官や刑事の格好に見えなかった。

「断る。御前達の様な奴等に渡す気は無いし、俺の仲間にも被害が及ぶのは避けられないだろうからな」

仁史のそのセリフに、油断無く銃口を向けている2人は一瞬目配せをして頷き合う。

「だってよ。どうするソール?」

「どうするも何も、決まってるだろゴードン。俺達も最終手段に出るしか無いみてーだな」

両手でハンドガンを構えるドレッドヘアーの男がゴードンで、片手でハンドガンを構える金髪の男がソールと言う名前の様だ。


仁史は同じ警備会社に勤務している同僚の元傭兵の栗山祐二からCQCやクラヴマガ、システマと言った軍隊格闘術を

習っているのだが、あいにく素手の上に油断無く銃口を向けられている今の状況ではその習得した武術を発揮出来そうに無かった。

「俺をどうする気だ?」

時間を稼ぐ為に仁史がそう聞いてみたまさにその瞬間、遠くの方から野太い大きなエキゾーストノートが聞こえて来た。

(……この音は!)

ここで仁史は勝負に出る。

「残念だったな、御前達はもう終わりだぞ」

「何ぃ!?」

ソールが仁史のセリフに怒声で反応した瞬間、ベストタイミングでそのエキゾーストノートの持ち主が視界に姿を見せる。

それこそまさしく、首都高速サーキットでは「ZERO」の通り名で有名な渡辺の黒いコルベットだった。


アメリカンマッスルカーらしく派手にテールスライドしながら現れたコルベットは、仁史に銃口を向けるソールとゴードンに迷い無く突っ込む。

当然その2人は避ける為に地面を転がるが、その隙に仁史は身を翻してS14に飛び乗り、エンジンをかけてバックして脱出に成功。

「くそっ、仲間の奴か!」

「追うぞ!」

悔しがるソールにゴードンが指示を出し、S14の前を塞いでいた自分達のFRーSでコルベットとS14を追いかける。

「あいつ等を郊外まで誘導すれば良いんだな!?」

「ああそうだ。仁史も離れるなよ!」

更には今まで渡辺のコルベットを追いかけていたC4が市街地方面から、そして郊外方面に入る手前でスティーブのSW20と

それを追いかけるIS Fと合流し合計6台での壮絶なカーチェイスが始まる。


6台はハイウェイに入り、そこから一直線に郊外の工事現場に向かう。

ハイウェイは交通量が多いが、日本の首都高速サーキットで走って来た首都高ランナー達は特に問題無い。

しかし、後ろの3台もなかなか食らいついて来る。

「結構後ろの連中、良い走りするじゃんよ」

「そうだな。だけど俺達は立ち止まれない」

渡辺とスティーブがそう会話していた時、仁史のS14が並んで来たIS Fにサイドアタックされる。

「うお!?」

「スラロームして、的を絞らせない様にしろ!!」

渡辺の指示で、その渡辺を含めた3台は交通量の多さを逆に利用する作戦に出る。

一般車の間を縫う様に走り抜け、ピッタリくっ付かれない様にする戦法だ。


そんな走りをしていれば当然警察も来てしまうのだが、同じ様に交通量の多さを利用してそのまま

後ろの3台と一緒に誘導しながら郊外の工事現場まで何とか走り抜ける事に成功。

真治のスカイラインクーペを見つけて合流したと同時に残りのギャング達が警察に気がついて逃げ出そうとしたが、

そこはストーマー達と警察が許さず一斉検挙に持ち込む事に成功したのだった。

その結果、ギャング達の証言とあの撮影動画の見直しによって日本からやって来た4人がギャング達の仲間では

無い事をストーマー達が知ると同時に、日本の4人組もソールやホープ達が「ストーマー」と言う車を使った

賞金稼ぎの様な事をしている人間達である事を知った。

こうしてようやく、お互いが勘違いをした結果こうした大騒動になってしまったのだと双方が理解出来た結末で幕を閉じた。


だが、ストーマー達にとっては更にビックリする話が日本の4人を誘ったレストランでその4人から舞い込む。

「この前も、日本からやって来たって言う連中に色々街中引っ掻き回されてなぁ」

「へー、俺達と同じなのか。どんな連中だったんだ?」

ソールの話を聞いていた渡辺がそう聞くと、横からホープがタブレットの写真を見せて来た。

「写真があったわ。こんな人達よ」

そのホープから見せられたタブレットの画面に映し出されている写真を見て、日本の4人の顔色が一気に変わった。


「え?」

「あ、あれ、これって!?」

「こ、この3人は……」

「……この3人、俺達も良く知っている……と言うか、俺達と面識ある奴等だぞ!?」

寡黙でクールな真治ですらそう声を上げてしまう位の驚き様に、ストーマーの4人と探偵事務所の2人も

驚きを隠せなかった。

拓也、山本、そして隼人の3人とこの4人が知り合いだと言う事で更に話は弾み、キャロラインシティでのその後の

ストーマー達による観光案内も約束される。

そして車も修理され、観光を思い切り楽しんで日本からやって来た4人組は無事に日本へと帰って行ったのだった。




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