Shutoukou Express and Kaido Runners vs Stomers 2nd Stage第8話
「え? 相手は銃を持ってる?」
「それはまずいな」
「とにかく今は港湾区域に居るんだろう?」
仁史からの報告を受けて、残りの3人は気分が沈む。
これはもはや只事では無くなって来た。さっさとこの街から出て行くしか無さそうである。
「でもどうする……警察に疑われ、ギャングに狙われているんだぜ!?」
「しかも俺達のナンバープレートが目印になっているって話だから、迂闊に外にも出られないな」
仁史からのその報告にプラスして、ラジオの放送から聞こえて来たニュースでは
警察が自分達のナンバープレートを頼りにして捜索活動に動いていると言う事だった。
こうなってしまえばもう八方ふさがりなのだが、ずっとこのままここでじっとしている訳にもいかない。
そして徒歩で警察に駆け込もうにも、仁史の警察署でのやり取りを考えると動画の証拠も
意味を成さなくなってしまった。
「どうすれば良い……どうすれば……」
まるでキリストの神への祈りの様に呟くスティーブだが、そんなスティーブのSW20が停まっているアップタウンの
駐車場に1台の車が入って来た。
「ん……!?」
その車に、前線で戦って来た軍人の勘が働くスティーブ。
灰色のレクサスIS F。スティーブの乗っているSW20と同じトヨタグループの車ではあるが、SW20とは
全く客層の違う高級ハイパフォーマンスセダンとして知られている車だ。
しかしそのIS Fを見た瞬間、スティーブの頭が激しく警鐘を鳴らし出した。
(何だか嫌な予感がするな。ここに何時までも居ると言うのも良く無さそうだから、もっと人気の無い場所を
探しに行くとしよう)
余り動き過ぎない様に、人気の無い場所を探す。
そしてこのキャロラインシティからの脱出を目指すと言うのを最終目標にして、スティーブは他の3人に
移動する事を伝えてからSW20をスタートさせた。
「せ、先輩! あの車……」
「あれは……間違い無いな、アメリカのナンバープレートじゃ無い」
色々な所を探し回っていたハートマンとクララだが、ようやくアップタウンの住宅街にある駐車場で
それらしき白のスポーツカー……トヨタのSW20MR2を発見した。
警戒しながらSW20の近くまで向かおうとした時、何とそのSW20が動き出して駐車場を
出て行こうとするでは無いか。
「ん? 気が付かれたか!?」
「先輩、追いましょうよ!!」
「勿論だ。それからストーマーのあいつ等にも連絡を入れておけ」
「了解!!」
クララの叫びにハートマンも同意し、スマートフォンを取り出して彼女が電話を始めるのを
横目で見ながらハートマンはSW20の後を追いかけ始める。
このアップタウンはその名前の通り高い場所に造られている住宅街。
必然的に市街地方面に向かうのであればダウンヒルになるのだが、住宅街ともあって狭い場所になっている。
今はこの街に住んでいる為、地元ともあってハートマンとクララはSW20に追い付くのは簡単だったが、
そこから止めるのはなかなか難しい事が追いかけて行く内に分かって来た。
「先輩、ストーマーの皆さんに連絡しました!」
「分かった。だが、こっちは苦戦しそうだ」
「え……何で?」
「あの車、かなりの改造を施しているらしい。しかもカーブを曲がった後に置いて行かれそうになるんだ」
ハートマンがそう呟くのも無理は無かった。
元々、SW20を始めとしたミッドシップの車はコーナーの立ち上がりを始めとしてトラクションが非常に掛かりやすい。
しかもスティーブの乗っているSW20は、多少の旋回性は思い切って犠牲にしつつ直進での安定性を
優先にしたセッティングをしているので尚更だった。
低中速域から快調に加速するエンジンであっと言う間に相手を引き離し、そのまま1度も抜かれずに勝つ
パターンが何よりも得意なスティーブは住宅街の狭さを利用して軽快に駆け抜ける。
その反面、ハートマンとクララの乗っているIS Fはほぼノーマル。
多少の軽量化とエンジンチューンはしているとは言え1650キロの車重がある。
スティーブの1155キロのSW20よりも495キロも重いので、直進安定性は良いのだがコーナーは大の苦手と言える。
それでも地元民の利を活かし、道を知らない挙動を見せる前のSW20を見失わない様にきっちりついて行く。
「なかなか良い腕をしているが、俺達から逃げられると思うなよ!!」
ブリッピングコントロールつきのパドルシフトで瞬時にシフトダウンし、きついコーナーの減速にも対応出来る
今時の車らしいシステムを搭載したIS FがSW20に迫る!!
(くそっ、振り切れない!!)
コーナーの突っ込みや立ち上がりは軽い自分の方が有利な事はスティーブにも分かっているのだが、
いかんせん道を知らない為になかなか後ろのIS Fを振り切れなかった。
このまま住宅街を抜けて市街地に入ったら、道幅が広くなりパワーを活かして追い抜かれてしまう危険性がある。
しかもスティーブは一気に引き離して勝つのが得意な為、こう言った競り合うタイプのバトルは苦手なのだ。
(後ろからのプレッシャーがどんどんきつくなって来るが、それでも今は我慢だ……)
チャンスは必ず巡って来る……と思ったのと、Skypeから声が聞こえて来たのはほぼ同時だった。
そしてその通話が、この先の展開を大きく変える事になる!!
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