Shutoukou Express and Kaido Runners vs Stomers 2nd Stage第7話
(くそっ、何で俺がこんな目に逢わなきゃならないんだ!!)
冷静な性格の仁史も、流石に今の状況では心の中で悪態をついてしまう程理不尽な状況に陥っていた。
S14で最寄りの警察署に向かい、証拠を持って来たと言う事であの録画した映像の入っている
タブレットを警察官達に見せた所までは予定通りだった。
しかし、そこで突き付けられた新たな情報に仁史は唖然とする。
(俺のS14のナンバープレートが国際ナンバーじゃ無い。そしてあの現場から逃げた4台の車も
アメリカナンバーじゃ無かったから怪しいだと? しかも動画を持って来たのは、この一部始終を撮影していた
人間からこれを奪い取り、その上で自分に疑いがかけられない様に証拠として届けにやって来たからだと?)
まるで無茶苦茶な机上の空論を突きつけられ、詳しい話はじっくりと取調室で聞かせて貰うと警察官達に
凄まれた為に思わず仁史は逃げ出してしまった。
そしてこうして今、また逃走劇が始まってしまったのだ。
『とにかく何処かに身を隠すんだ、良いな!!』
真治からの指示でそう言われ、さっきの港湾区域のコンテナ倉庫に身を隠すべく来た道を戻り始める仁史。
そんな仁史が気配を感じてふとバックミラーを覗いてみると、青のスポーツタイプのクーペが
1台猛スピードで接近して来ているのが見えた。
(んん、俺よりも速いのか!?)
今の時間帯は交通量が比較的少ないが、一般車が居るこの状況ではなかなかスピードを出す事が出来ない。
一体どんな車が追いかけて来ているのかをバックミラー越しに観察しつつ、仁史は港湾区域方面に向かってS14を走らせる。
(あれは確か……ZN6のハチロクだな。でも左ハンドルだからサイオンのFRーSって奴か)
これだけのスピードで接近して来るのであれば地元の人間か余程の命知らずのどちらかなので、
仁史は少しペースを落として先に行かせようとする。
……が、その瞬間S14のリアバンパー目掛けてなかなか強めのバンパープッシュをそのFRーSはかまして来た!
「うあ!?」
いきなりの事に仁史は状況が飲み込めない。
何故いきなりのバンパープッシュをされなければならないのか?
(何なんだ、ただの愉快犯か!?)
クリーンなバトルを信条とする仁史は、こう言った激しいプッシングやサイドアタック、ブロック等をされるとバトルを投げる場合があるのだ。
しかも今はバトルをする余裕すら無いし、いきなりバンパープッシュをして来る様なこんな危ない奴に付き合う気は毛頭無かった。
それに加えて次の瞬間、仁史がこのFRーSから逃げる理由がもう1つ出来た。
逃げ切ろうとするものの、周りの交通状況のせいで上手く加速出来ない仁史のS14の左横に並んで来たFRーSの中を
仁史が覗いてみると、そこには茶色に近い黒のドレッドヘアーの男がハンドガンを準備しているのが見えた。
(な……!?)
まさか撃って来るつもりなのかと考え、仁史は咄嗟にフルブレーキ。
そこからサイドブレーキに手を伸ばし、対向車線に180度ターンを成功させて何とか逃走を成功させるべく再び走り出した。
「くそっ、あいつUターンしやがったぞ!」
「逃がさねーよ!」
ギャングの一味と思わしき、海外製ナンバープレートのS14シルビア。
武装していたらまずいと考え、ゴードンが自前のハンドガンを準備しているのが目に入ったのだろうか?
そのS14は素早く逆方向に逃げ始めた。
当然、ソールとゴードンも逃がす訳にはいかないので同じくUターンして追いかけ始める。
だが、ここで交通量が比較的緩やかになった為に遠くに見えているS14のテールが段々遠ざかり始めた。
「おい、引き離されるぞ!」
「分かってるけど……あいつ、速いぜ……!」
一旦ペースに乗ると速いタイプなのだろうか?
途中でトラックが脇道から飛び出して来た事も手伝って、完全にS14のテールがソールとゴードンの視界から消え去ってしまうのに
時間はかからなかった。
「くそっ、逃げ足の速い奴だぜ!!」
「だけどこれで、4台の内の2台はどう言う車なのかが分かったな。後は警察にも手伝って貰って聞き込み調査だ」
ソールが悔しがる一方で、ゴードンがこれから先の予定を立てる。
するとその時、ゴードンの携帯電話が鳴り響いた。
「はい、スパイクホーク・ストーマー事務所」
『クララです。こちらの依頼が先程終わりましたので、私達もお手伝い出来そうです』
「あ、そうなの? 助かるよ。それじゃあ早速頼みたいんだけど……」
ゴードンはクララを通して、ハートマンの探偵事務所と警察関係に自分達が取り逃がしてしまった
あのS14の情報を伝える。
『分かりました。それでは私も先輩と一緒にその車を探してみますね』
「頼んだよ」
これでハートマンとクララの協力も仰ぐ事が出来たので、じきに警察も動き始めるだろう。
その横ではソールがアゴに手を当てて何かを考え込んでいた。
「あの車のナンバープレート……なーんか、どっかで見た記憶があるんだよなぁ」
「えっ? さっきの車か?」
「ああ。だけど肝心のその時の記憶が思い出せねーんだ」
そう言われてみれば、自分も何処かで同じ様なナンバープレートを見た覚えがゴードンにもあった。
「そういや、俺も見た様な見てない様な……。でもあれだけの走りをするし、何よりあの色は目立つからな。
この辺りの人間にどっち方面に行ったか聞き込みしてみようぜ」
「そうだな、それじゃ行くぞ」
ゴードンの提案にソールも乗っかる形で、再びFR−SがあのS14を探し始めるのだった。
Shutoukou Express and Kaido Runners vs Stomers 2nd Stage第8話へ