Crisis of Empire第8話


バァン、と音を派手に立てて開かれた扉に、中に居た人影……青髪の

騎士であるカノレルはギョッとした顔つきになった。

「ど、どうしたんですか将軍……それからテトティスさんにラシェン団長も」

「カノレル……てめぇ!!」

ラシェンがそのままカノレルに詰め寄って行き、右翼騎士団の

副騎士団長であり自分の副官でもある彼の胸倉を掴んで窓に叩きつけた。

「な、ななななちょっま待って何……」


だがそれを見たルザロが咄嗟に叫ぶ。

「窓から離れろ!!」

「えっ!?」

その怒声に咄嗟にラシェンとカノレルは同時に横っ飛びで窓から離れる。

するとそこに今度は入り口の扉がまた開かれ、1人の男が姿を現した。

「一体何の騒ぎですか!?」

「カルソン様! あ、ルザロ団長が……」


宰相であるカルソンもどうやらこの騒ぎを聞きつけてやって来たらしい。

「何があったんですか、ルザロ団長?」

しかしルザロは切羽詰った表情になっている。

「今は一刻を争います! 理由なら後で幾らでも話しますから、ひとまず俺の

指示通りに行動して下さいませんか」

「えっ、ええ……」

何が一体どうなっているのか分からないまま、とにかくルザロの指示通りに

その場に居るメンバーは行動を起こす事にした。


誰も居なくなり、ドアの外に見張りが居る状態で部屋で1人睡眠薬の助けを借りて

眠っているセヴィストの部屋の窓の外にあるバルコニーに、3つの黒い影が音も無く降り立つ。

その黒い影の連中は窓を小さく、音を立てない様に釘を使って小さく根気良く、だが

余り時間をかけない様にして穴を開け、窓にかかっているロックを外した。

そうして開いた大きな窓からするりとセヴィストの眠っているベッドに近付き、一気に大きな

ナイフを用いてセヴィストの身体を突き刺そうと試みた……次の瞬間!!

「動くな!」

ベッドから突然起き上がったセヴィスト……と同じ格好をしている、セヴィストと同じ金髪の

ラシェンが素早く双剣を暗殺者の首筋にこの視界の悪い中で寸分の狂い無く突きつけていた。


「少しでも動いたら首と胴体を切り離すぞ?」

その一方で、もう1人の暗殺者に片手斧を突きつけるカノレルともう1人の首筋に短剣を

突きつけるテトティスの姿があった。

「一体誰の指図で動いて来たのかしら? さぁ、早く答えないと喉を突き刺すわよ?」

本気とばかりに暗殺者の喉に短剣の刃を食い込ませるテトティス……だったが。

「伏せろ!!」

ラシェンの声が響き、テトティスとカノレルが伏せるとほぼ同時にラシェンが暗殺者を蹴り飛ばす。

するとその暗殺者の身体を矢が貫通した。


「くそっ、まだ伏兵が陛下を狙ってやがった!!」

毒づきながらもラシェンは、矢を心臓が丁度貫通して絶命した暗殺者を一瞥(いちべつ)して

伏せた事によって反撃に転じる2人の暗殺者の内1人を背後から串刺しにする。

もう1人の暗殺者はカノレルに斧を突きつけられていた暗殺者で、武器は

カノレルと同じく斧なのだがその斧はカノレルのよりも大きい物だった。

「ぐっ!?」

「はぁぁっ!!」

カノレルはパワーではかなわないので両手斧の隙を見つけて、そこから思いっ切り

暗殺者の脇腹にキックを叩き込む。


そこにラシェンとテトティスも加勢しようとするが、続けてまた矢が打ち込まれて来て

反撃を中断せざるを得なくなってしまった。

「ちっ!」

舌打ちをしつつ、その矢によって助かった暗殺者は矢を放って来たもう1人の暗殺者と

一緒に開いている窓から素早く逃げ出して行った。

「俺達は奴等を追う! テトティスは将軍とカルソン様と陛下を頼む!!」

「はい!」

元気に返事をしたテトティスに後は任せて、ラシェンとカノレルの2人は暗殺者達を

追いかけ始めるのであった。


しかし、ラシェンとカノレルは暗殺者を追いかけて行ったは良かった

物のどうやら暗闇の中での行動に関しては相手の方が1枚も2枚も

上手だった様で、バルコニーから飛び降りようとしている2人の暗殺者の

内の弓を持っている方の暗殺者が素早く矢を追いかけて来る

騎士団員の足元目掛けて放つ。

「くっ!?」

その矢が足元に刺さった事で思わず足を止めてしまったラシェンとカノレルに、

今度はもう1人の暗殺者が思いっ切り2人同時に両足を片方ずつ当てる

絶妙なドロップキックを披露。

そのドロップキックで後ろにスッ転んで悶絶する騎士団員の2人を尻目に、

素早い動きで暗闇の中へと暗殺者達は中庭を通って姿を消してしまったのであった。


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