Crisis of Empire第7話


そのやり取りを聞いていた、右翼騎士団の金髪の騎士団長のラシェンが何かを考え込んでいる。

「……うーん」

「どうした?」

そんな様子を見てシャラードが声をかけると、ゆっくりとラシェンが口を開いた。

「何の為に陛下を狙撃したのか、と言う事も重要ですよね。わざわざ陛下を

狙撃する事に何の意味があったのか……」

それを聞いていたシャラードもうんうんと頷いて腕を組む。

「そうだな、その理由は犯人を捕らえてじっくり聞き出すだけだ」


ラシェン・ルーザスは平民の出身で、27歳にして右翼騎士団長に

上り詰めていた。現在は33歳になった彼だが、熱血漢な性格で団長になった

今でも前線に立って進んで戦う事をしているので、部下からの信頼も厚い。

一緒にやって来たリアンとは騎士団に入団した時からの腐れ縁の関係であり、

15歳の時に入団してもう付き合いがかれこれ18年になる。

一般的に帝国騎士団においては一通りの武器の訓練を行い、

その後、自分に最も合っている武器を選んで普段の使用武器としている。


ラシェンがその中で選んだのは当初ロングソードだったが、少し小ぶりの

2本の剣を同時に扱う様にした所そっちの方がペースが掴み易い事に気がつき、

それ以来は腰の両側に1本ずつ剣を装備している。

双剣士としてその圧倒的なスピードで相手を畳み掛けて勝利を掴むのが

ラシェンのやり方であり、バーレン皇国と以前戦争があった時、

戦場に置いて魔法剣士隊の隊長であるロオンを破った経験も持っている。


私生活に置いては城の騎士団の寮に住んでおり、団長だけあって

広い部屋で暮らしているのを利用してたまに武器の素振りをしたり

腕立て伏せや腹筋等の基礎トレーニングに励んでいる他、部屋の外で

良くウロウロしている女の騎士団員と遊んだりもしている。

何故か女に良くモテるタイプであり、女が彼の執務室や寮の

部屋の外でウロウロしているのも彼目当ての事だからである。


更に城下町に出た時も酒場のウェイターの女の子から良く誘われたり、

町娘に声を掛けられる事もしょっちゅうだ。

そんなナンパなイメージが強いラシェンではあるが、戦争における活躍や

若くして騎士団長の1人に上り詰めた経緯から主君のセヴィストにも

信頼されている配下の1人として、ファルス帝国だけで無く国外においても

有名な人物として知られている。


「俺達も陛下があんな目に合わされて、このまま黙って見ている訳でも

ありませんからね。それに……せっかくドラゴンに関する遺跡が見つかったって

言うのに、こんな所で足止めを食らっている訳にも行かない。そうでしょう?」

「ああ、その通りだ」

そのラシェンの熱く力強い問い掛けにルザロの頭が上下する。

だが、この捜査を開始する前にどうやらセヴィストを狙撃した犯人が先手を

打って来たと知るのはその日の夜の事であった……。


その日の夜、これからの捜査の目処を立ててルザロは会議を終わらせて自室へと

向かっていた。しかしどうにもこうにも気分が高まっている。

やはりあんな事があったからだろうか? と自問自答しながら、それでも明日からの

捜査の為に早く寝なければいけないと決意して夜の廊下を進む。

夜のフールベリア城は水を打った様に静まり返っている。

だがその静けさが、彼にとって新たなる危機を察知させる事に成功させる。


(ん、何だあれは……?)

ふと窓の外を見てみると、夜の闇に紛れて動く人影を見つけた。

それも1つでは無く複数であり、明らかに隠密行動に徹していると分かる動きだった。

そんな動きを見ている内に、ルザロの脳裏に物凄く警鐘が大きく鳴り響いた。

(……まさか!?)

嫌な予感が当たらなければ良い、とルザロはその場から駆け出し始めた。


そうしてルザロが廊下をダッシュしてある場所へと向かっていると、丁度警備隊の

副総隊長であるテトティスと右翼騎士団長のラシェンに遭遇した。

「あれっ、ルザロ将軍?」

「テトティス、ラシェン……陛下が危ない!!」

「え……えっ?」

明らかに焦りが出ていて口と頬が引きつっているルザロの気迫に、テトティスと

ラシェンもそのルザロの後を追って駆け出し始める。


走りながらラシェンはルザロに理由を尋ねる。

「あ、危ないって何がどうしたんですか!?」

だがそれに対してルザロは答えている暇は無いとの答えを返す。

「話は後だ!! とにかく、今は俺に着いて来い!!」

「は、はい!」

血相を変えて3人はセヴィストが寝ている部屋へと飛び込む。

そこには……。


Crisis of Empire第8話へ

HPGサイドへ戻る